02h 野菜「葉菜類−葉」
◎トレビス
和名:トレビッツ,トレビーツ,赤芽チコリ,レッドチコリ キク科 原産地:ヨー
ロッパ,北アフリカ,中央アジア
プロフィール:トレビスの原種はフランスやイタリアに広く分布し,涼しい気候を好
み,夏は高地において栽培されます。分類上においてはチコリと同種で,エンダイブと
も近縁に当たります。
形状から結球タイプ,半結球タイプ,不結球タイプに大別されますが,現在わが国に
おいて利用されるものは,キャベツのように丸くなる結球タイプのみです。不結球タイ
プの長頭形のものはチコリに分類されて,ヴェローナと云う名前で出回っています。因
みにトレビスやヴェローナは,共に北イタリアの産地名です。ワインレッド色の葉に白
い葉脈の入るのが特徴で,全体が赤いのもと,葉先だけが赤くなるものがあります。外
見は紫キャベツに良く似ますが,全くの別科の野菜です。また,葉が緑色の品種もあり
ます。このように外見が異なっても,わが国においては細分化しいで一括してトレビス
と呼んでいます。
葉は肉厚で柔らかいが,歯触りはシャキシャキしています。鮮やかな色を活かして,オード
ブルなどの下敷きに用いられることが多い。ほろ苦さも持ち味で,加熱すると苦味が増
すため,生食に向いています。
トレビスはイタリア北部の特産野菜で,わが国には1980年代になって初めて輸入され,
国内栽培が始まったのはつい最近です。このため品種の特性や栽培法も未だ明らかにな
っていない部分が多く,今のところ輸入品の方に高品質なものが多いようです。
△食べ方と効能
トレビスの赤と白のコントラスト,葉の柔らかさがうけて,サラダの彩りによく使わ
れようになりました。少し苦味があるので,色だけでなく味のアクセントにもなります。
サラダにするときは,白い芯の部分が何処にも入るように,一枚ずつ剥がして縦に細
く切るようにします。チコリやエンダイブ,クレソンなど,同じような苦味のある野菜
と合わせると,大人好みの洒落シャレたサラダになります。ドレッシングはオリーブ油,ビ
ネガー,塩胡椒を合わせたシンプルなフレンチタイプが合います。
栄養的にはチコリに似ており,緑の部分がないだけに,ビタミンの含有量も低い。赤
い色はアントシアニンと云う色素で,栄養とは関係ありません。
◎クレソン
和名:オランダ辛子,水辛子ミズガラシ,西洋芹セイヨウゼリ アブラナ科 原産地:ヨーロ
ッパ,中央アジア
プロフィール:ヨーロッパにおいては,古くからクレソンの野生種を薬用として利用
してきました。ビタミンAやC,カルシウム,鉄分が豊富で,血液の酸化防止効果や強
壮効果,消化,解熱の作用もあります。貧血症や妊娠中の女性にも良いと云われていま
す。中世のフランスにおいてはクレソンの精油を発毛剤や養毛剤として用いたと云いま
すし,19世紀のイギリスにおいては壊血病の治療薬にしてと云う記録もあります。フラ
ンスにおいては14世紀,ドイツにおいては17世紀から栽培が始まりました。
明治時代の初めにわが国に入り,当初は軽井沢などにおいて外国人向けに栽培されて
いました。茎を水に浸けると直ぐ根が生える程繁殖力が強いためか,瞬く間に野生化し,
各地の水辺や湿地に群生するようになりました。
若い茎葉の鮮やかな緑色とピリッとした辛味を活かしたて,主にステーキやローストビ
ーフなどの肉料理の付け合わせに用いられます。わが国においても食生活の洋風化に伴
い,近年になって次第に需要が高まってきました。
湿った土壌を好む多年草で,暑さ寒さ共に強く,周年市場に出回っています。ただし,
ある程度まで気温が上がらないと生長が鈍るため,低温期にはハウス栽培されます。主
な産地は東京,神奈川,静岡,愛知で,特定の品種はなく,在来種を使って水田におい
て栽培されることが多い。
クレソンを小型にしたようなガーデンクレスは,アブラナ科コショウソウ属の別種で,
クレソンと同じく爽やかな辛味があり,若い茎葉はサラダに,種子は香辛料に用いられ
ます。
△食べ方と効能
クレソンは年中出回っているが,自生のクレソンが収穫できるのは初夏,8〜10p位
のものが風味があって歯触りも丁度良い。それより大きくて茎の太いものは葉が硬くて
苦味も強く,反対に小さ過ぎても風味が落ちます。葉の緑が深くて鮮やかなもの,黒く
くすんでいないものが新鮮です。茎に髭根の出ているものは避けて下さい。
ステーキの付け合わせとして登場したためでしょうか,パセリのように飾り野菜と思
って食べない人も多いが,特有の爽やかなほろ苦さが口中をさっぱりさせてくれますの
で,油っぽい料理の後にはピッタリです。また,血液が酸性に傾くのを防ぐ働きがあるた
め,肉料理を食べたときには,健康のためにも是非食べて下さい。
生のままサラダにするときは,茎の太くて硬い部分は除くことがポイントです。レモ
ンやマスタードを効かせたサッパリとした味のドレッシングが良く合います。また熱湯どさ
っと茹でて水気を絞り,和え物にしても美味しい。そのほか,天麩羅や煮浸しもお薦め
です。特有の苦味を活かして,茹でたクレソンを裏漉しし,ソースやドレッシングと合
わせて風味付けに利用するのも楽しいです。
栄養的にはカルシウム,リン,鉄分などのミネラルが多く含まれ,またビタミンA効
力,ビタミンCも多く,野菜の中では優れている食品と云えます。
◎ニラ 韮
和名:韮菜 ユリ科 原産地:東南アジア,中国南西部
プロフィール:ニラは中国においては3000年前から栽培され,わが国には9世紀に伝
わったとされます。『古事記』や『日本書紀』にも登場する程栽培の歴史は可成り古い。
わが国の古名は加美良カミラ,久君美良ククミラで,ニラと云う名は美味しいと云う意味の古語
「ミラ」から変化した言葉です。
生長が早く,花が咲くまで次々に葉芽が出るので,年数回の収穫が可能です。露地も
のの収穫期は4月〜10月,ハウス栽培ものは周年出回っています。主な産地は高知,千
葉,栃木です。
漢方薬としても有名で,葉は冷え性の予防や整腸に効果があり,根には下痢止めの効
果もあります。
葉ニラの品種は葉幅の広い大葉ニラ(グリーンベルト・ワイドグリーンなど)と,細葉の小葉ニラ
(在来種など)に分けられます。現在栽培されるのは,殆どが葉幅が広く柔らかさが特
徴のグリーンベルトです。在来種は家庭菜園に利用されることが多い。葉ニラの株に光
を当てずに育てて,新芽を黄色としたものが黄ニラ(ニラモヤシとも=中国野菜の項参
照)で,香りはやや弱いが,軟化栽培のために普通の葉ニラよりも甘くてアクが少なく,
歯触りも柔らかいのが特徴です。
花茎と蕾を食用とする花ニラは一年中花芽が出る種類で,酷コクと歯応えがあります(
中国野菜の項参照)。
△食べ方と効能
ニラは通年出荷されていますが,冬から春にかけて出回るものは,葉肉が薄くて柔ら
かです。夏に出回るものは肉厚でやや堅めなのが特徴です。葉先が折れていないもの,
柔らかなものが美味しい。一度萎れると水に浸けても戻りませんので,葉先が折れない
ようにラップにきちんと包み,冷蔵保管して下さい。
餃子ギョウザの具や炒め物,煮物やお浸しなど,どんな料理にも合います。特に肉やレ
バー,貝類,卵などの動物性食品と相性が良い。酷のある味付けやスパイシーな刺激の
ある味付けが合います。
江戸時代の農業書にも,栄養を助け身体を温める「陽気草」と書かれている程栄養価
が高い。ビタミンA効力,ビタミンB・C,カルシウムが豊富,特にビタミンA効力は
1800IUと緑黄色野菜の中でも充実しています。
特有の臭いは,硫化アリルと云う成分が含まれているためで,この成分は,消化液の
分泌を促し,内蔵の働きを活発にする働きがあります。また血行を良くするため,風邪
に効くとも云われています。そのほかビタミンB1の吸収を助ける働きもあるため,肉類
と合わせますと消化吸収が良くなります。ニラ雑炊,豚肉とニラの炒め物,レバニラ炒
めなどは栄養的にも根拠のある料理と云えます。
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