12 和菓子の用語
 
               和菓子の用語
 
                   参考:小学館発行「四季の和菓子」
                      平凡社発行「京都のおいしい和菓子」
 
〈和菓子の用語(○は京菓子にも用いられる)〉
 
[あ]
朝生アサナマ 朝生とはその日に売ることを目的として朝から作り始める菓子で,餅菓子や
 団子,葛菓子などです。練りきりや羊羹,求肥などの上生菓子に対する言葉です。比
 較的安値で,家庭で日常的に食べられるものが多い。
 
有平糖アルヘイトウ ○有平糖は,ポルトガル語のALFELOAアルフェロア(砂糖)が訛ったもので,南
 蛮菓子の一つです。"阿留平糖"などと当て字されています。江戸時代中期になって砂
 糖が広く出回るようになりますと,色や形に美しい意匠を凝らした四季の細工菓子と
 して,珍重されるようになります。
  生地作りは,砂糖と水,水飴の配合や煮詰める加減が難しく,気候や用途によって
 も変わるため,単純ながら細やかな気配りの要るお菓子です。茶席では噛 む音のせ
 ぬよう,糖化した有平糖が好まれ,店売りや工芸菓子の場合は,光沢のある方が求め
 られるとのことです。何れの場合もニチャついてダレたてしまえば商品価値はありま
 せん。細工をする場合の温め具合や生地を引く手加減も,仕上がりを左右します。
 
外郎ウイロウ ○外郎は元来,頭痛を取り口中を爽やかにする薬としての名前でした。中国
 の元の国が滅亡したとき,元の大医院礼部員外郎職にあった陳宗敬が博多に亡命し,
 外郎延祐と名乗ってこの薬を創製した,と伝えられています。歌舞伎十八番で知られ
 る「外郎売り」も,この薬売りのことです。これが大層苦いので,禁裏へ献上の際,
 口直しとして添えたのが,黒砂糖と米粉で作った菓子"ういろう"です。その後外郎氏
 は小田原に移り,薬と菓子双方を商って発展します。外郎菓子の製法は諸国に伝えら
 れ,今ではお菓子の名前のみが知られることとなりました。
  上用粉,糯粉に砂糖を加えて蒸した外郎は,あっさりと滑らかな持ち味で,春から
 夏の上菓子に多く使われるものです。
 
打物ウチモノ ○打物は寒梅粉又はみじん粉に砂糖を加えてしっとりとさせ,木型で型打ち
 した干菓子です。「落雁ラクガン」は打物の代表的なもので,江戸時代後期には鶴亀,
 鯛,海老,松竹梅に三番叟サンバンソウや猩々ショウジョウなど,大型で華麗な色使いの落雁が,
 慶事や仏事の引出物としてもて囃されました。現在は四季の景物を写す小さな干菓子
 として,茶席で喜ばれています。
  打物は打ち出し,押物は型押しと製法の僅かな違いで区別しますが,共に糯米を原
 料とする点,同一と見ることも出来ます。ともあれ穀類の風味がよく感じられ,上品
 な甘味と口溶けの良いこと,型崩れしないしっかりした成形が大切な点です。
 
押物オシモノ 押物は干菓子の一種で,糯米に砂糖,みじん粉を混ぜ,木型に押し固めたも
 のです。→ 打物
 
主菓子オモガシ 主菓子とは,茶の湯において主に供されるような上品な生菓子で,きんと
 んなど季節感漂う意匠のものが多い。
 
お題菓子オダイガシ ○お題菓子とは,その年の勅題(歌会始のお題)に因んだ意匠を考案
 して,各店において作られる正月の創作菓子です。お題の持つ詩的世界をお菓子に表
 現する感覚,姿や味の良さ,など伎倆の程が試される,年に一度の機会でもあります。
 
[か]
鹿の子カノコ 鹿の子とは求肥を小さく纏めて餡で包んでから,蜜に浸けた豆をまぶしたお
 菓子で,鹿の子絞りに似ているのが名前の由来です。
 
 
寒梅粉カンバイコ ○打物菓子や押物と呼ぶ京菓子の大半は,寒梅粉が主原料です。搗ツいた
 餅を極薄く延ばして鉄板で焼き,それを挽いて粉末にしたものがみじん粉です。寒梅
 粉は,みじん粉を更に篩フルイに掛けた上みじん粉を云います。舌触りの良さと香りを求
 めて新米が用いられますが,新米を粉に挽く時期が,寒中の梅の咲く頃なので,この
 名が付いたと云われます。
 
生砂糖キザトウ ○砂糖に寒梅粉を混ぜ,捏ね合わせた生地を着色し,型抜きで成形しま
 す。四季の干菓子の中心であり,華麗な工芸菓子の主材料として使われます。パリンと
 軽い薄さにも,ふっくらと弾力のあるしっとり感も,どちらも自在に作り出すことが
 出来,華やぎを添えるのに欠かせぬお菓子です。関東では雲平ウンペイと称されるもので
 す。
 
黄味餡キミアン 黄味餡は,白餡に硬茹での卵黄を裏漉し,又は生の卵黄を混ぜ,火に架け
 て練ったものです。
 
求肥ギュウヒ ○求肥は餅の一種で,白玉粉や糯粉を水で溶いて捏ね,蒸篭セイロで蒸した後,
 砂糖や水飴を入れて練った軟らかな生地です。唐から渡来し,牛のなめし皮のように
 滑らかなことから「牛皮」と書かれていましたが,その文字を忌み,わが国において
 は求肥と改められました。元来は中国において祭祀の際に用いた食物「牛脾」があり,
 それに似せて作られた餅菓子であったと云います。
 
きんとん ○きんとんは餡玉を芯にして,着色した餡を裏漉しにして栗の毬イガのように
 付けた生菓子です。中に砂糖や飴を入れた「こんとん」と呼ぶ菓子が原型であるとさ
 れています。栗きんとんは,栗と小豆を混合したそぼろ餡を付けたものを云い,栗を
 潰し砂糖を加えて茶巾絞りにした生菓子は,京都では「茶巾チャキン」と呼んで区別しま
 す。
 
葛粉クズコ 葛粉は葛の根から得られる澱粉で,各種澱粉の中でも良質とされ,上等な菓
 子の原料として用いられます。葛饅頭,葛粽チマキ,葛桜などが知られています。室町時
 代に南朝の官臣が,吉野のクズの根から最初に作ったとされる「吉野葛」が名高い。
 
氷餅コオリモチ(干餅) 氷餅は餅を一度凍結してから乾燥させたもので,フレーク状にした
 ものは飾りに使うほか,純白で氷のような質感があるので,冬の和菓子に多用されま
 す。
 
漉し餡コシアン 漉し餡は,小豆を茹でて潰し,皮を除いたものを漉してから,水気を絞り
 砂糖を加えて練り上げて作ります。
 
こなし ○"こなし"とは,漉し餡と小麦粉,又は薯蕷ジョウヨ粉を加えて強い蒸気で蒸し,
 砂糖を加えながら揉み込んだものです。その生地を薄蜜などで硬さを調整しながら着
 色し,包みものや巻上げ,型抜き,棹ものなど,様々な上菓子に作り上げます。応用
 範囲も広い,京菓子独自の素材です。
  "熟コナす"と云う言葉には「砕いて軟らかくする」の他に「思うままに扱う」という
 意味があり,このこなし菓子も「上手くこなせて一人前」と云われるように思うまま
 に形作るには,熟練を要するお菓子です。
 
琥珀羹コハクカン ○琥珀羹とは寒天に砂糖,飴を加えて煮詰め,流し箱に入れて冷やし固め
 た棹ものです。吉野葛や卵白,道明寺粉などを加えて変化を付けたものも多く見られ
 ます。喉越しよく涼やかで,夏菓子として欠かせません。
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