11 和三盆糖の研究
和三盆糖の研究
参考:旭屋出版発行「和菓子」
△砂糖の種類と特徴
和菓子や甘味メニューには不可欠な"砂糖",しかしながら"砂糖"と一口に云っても,
様々な種類があります。原料又は製造法で分類出来ます。
原料での分類では,甘蔗カンショから採る"甘蔗糖カンシャトウ"と,甜菜テンサイ(サトウダイコン
・ビートとも)から採る"甜菜糖"とがあります。
一方,製造法(下表)で分類しますと,主に"分蜜糖"と"含蜜糖"に分類出来ます。分
蜜糖は糖蜜を遠心分離機で振り分け,砂糖の結晶だけを取り出したもので,世界の大部
分の砂糖はこの分蜜糖に属しています。含蜜糖とは,糖蜜をそのまま煮固めたものです。
〈製造法による砂糖の分類〉
→耕地白糖 →白ざら糖
| →ざらめ糖→|→中ざら糖
→分蜜糖→| | →グラニュー糖
| →原料糖(粗糖)→精製糖→|
| | | | →上白糖
砂糖→| | | →くるま糖→|→中白糖
| | | →三温糖
| | |
→含蜜糖 | | →角砂糖
| | ―→加工糖―――→|→氷砂糖
| | |→粉砂糖
| | →顆粒状糖
| |
| ―――――――――――――――――→原料糖
|
――――――――――――――――――――――――→黒砂糖
和菓子や甘味メニューによく用いられるのは,主に分蜜糖の"上白糖","白ざら糖",
"グラニュー糖"と,含蜜糖の"黒砂糖"が多いようです。また,独特の風味を持つ"和三盆
糖"も珍重されます。これらの砂糖の特徴は次の通りです。
"上白糖"は,一番万能的な砂糖です。白色で柔らかい手触りと細かい結晶が特徴で,
わが国とアジアの一部でしか使いません。
"白ざら糖"は,粒が大きく,糖度が殆ど100%に近い高級な砂糖で,あっさりとした味
に仕上がります。
"グラニュー糖"は,白ざら糖よりも結晶は小さいが,品質的には白ざら糖と同じで,
癖クセのない淡泊な甘さがあります。値段は白ざら糖より安い。
"黒砂糖"は含蜜糖で,サトウキビの絞り汁をそのまま煮詰めた砂糖です。糖度はあま
り高くありませんが,甘さは濃厚で酷コクがあり,アクが強い。
和菓子や甘味メニューを作る上で,こうした砂糖の特徴を知り,使い分けることは大
切です。
△和菓子と砂糖の役割
砂糖は和菓子や甘味メニュー作りに欠かせませんが,和菓子に砂糖を用いる理由は,
甘味を付けるためだけではありません。その他にも,様々な重要な理由があるのです。
例えば,餅などに砂糖を加えることにより,柔らかい状態を保ち,長期間日持ちさせ
ることが出来ます。牛肥ギュウヒや羽二重餅などがその例です。餡を作る場合でも,砂糖の
分量が多い方が傷みにくいのです。これは砂糖の持つ保水性を利用したものです。
また,小麦粉や卵などと併せて加熱しますと,艶を出すことが出来,綺麗な焼き色に
仕上がります。更に,寒天の固まる作用を促したりもします。
このように,砂糖には様々なな働きがあります。和三盆糖が珍重されるのは,砂糖の
働きに加えて,どのような魅力があるのでしょうか。
△和三盆糖とは
"和三盆糖"は,伝統的な方法によって作られ,分蜜糖にも含蜜糖にも属さない,極め
て珍しい砂糖なのです。大変珍重されており,全国の銘菓にも多く用いられています。
何故この違いが生じるのでしょうか。それは,その製造方法にあります。白砂糖の場
合は糖蜜を完全に分離させますが,和三盆糖の場合は,幾らかの糖蜜分を含んだまま分
離させます。結局出来上がりの砂糖の糖蜜の含み加減が,和三盆糖の持つ独特な味や香
りを醸し出すのです。
白砂糖と和三盆糖との,実際の違いは何でしょうか。ずばり,それは「色」と「味」
と「香り」です。先ず色はクリーム色で,口に含んだ瞬間に,すっと溶けてしまうと云
う口溶けの良さです。そして上品に香り,どれを採っても他の砂糖には類を見ない程の
贅沢さを持ちます。
現在,徳島県と香川県で作られていますが,製造所の軒数がめっきり少なくなりまし
た。製造元が少ない上,手間のかかるものですので,必然的に価格も高くなります。し
かし,この和三盆糖の独特な風味と味を求めて,ファンが多い。
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