09 お茶のいただき方
 
              お茶のいただき方
 
                           参考:小学館発行「四季の和菓子」
 
△抹茶マッチャの場合
 気楽な席に相応しい薄茶ウスチャの戴き方をご紹介します。テーブルで戴く場合も茶席と
同じです。大切なのは形よりも,心からお茶を楽しみ,茶碗を大切に扱う気持ちなので
す。
 薄茶は一人分ずつ別々の茶碗で出されます。目の前にお茶を出されましたら,茶碗を
次客との間に置いて,次客に「お先に」と挨拶した後,お茶を自分の正面に置いて,亭
主(お茶を供してくれた人)に「頂戴致します」又は「戴きます」と挨拶します。
 
 正面を避ヨけて飲む
 茶碗の縁に右手の親指を,残りの4本の指を揃えて茶の底に添えて茶碗を持ち上げ,
左手の掌テノヒラの真ん中で茶碗を受けます。茲で,茶碗がぐらついたりしないように,し
っかりと受けることが,茶碗を大切にする気持ちを表します。
 両手で茶碗を受けましたら,肩の力を抜いて両腕は身体から卵1個分程離します。こ
うしますと茶碗の扱いが自由になります。
 茶碗の正面が自分の方に向いていますから,茶碗を回します。向きを変えて正面を避
けて口を付け,お茶を戴きます。このとき,茶碗は右回しに何回とか,角度は何度など
と云われますが,流派によっても違いますし,気楽な席ならあまりそのようなことは気
にしないで,正面を避けるだけで十分でしょう。
 茶碗を回すのは,正面の模様や金箔キンパクなどを傷めないようにする心遣いと,茶碗と
茶碗の作者への礼儀からでもありますので,心に留めて置きましょう。
 
 何口でも飲みやすい形で戴くのが良い
 お茶は口に含んで,ゆっくり味と香りを楽しみます。薄茶の場合は何口で飲まなけれ
ばならないと云うことはありませんから,お好きなように楽しんで下さい。
 飲み終わったら最後に,茶碗の底に残った抹茶を吸い音を立てて飲み干します。口を
付けた部分を親指と人差指で茶碗の縁を挟むようにして拭い,その指を懐紙で拭き取り
ます。その後,茶碗を先程とは逆の方向に回して元に戻してから置きます。
 そして,亭主に「結構なお手前でした」と挨拶します。云い難いようでしたら「美味
しく戴きました」でも良いでしょう。
 最後に茶碗を観賞するのも,お茶の楽しみには欠かせません。このときも,あまり知
識をひけらかすようなことをせず,「いい茶碗ですね」とか,「素敵な絵柄ですね」な
どと云って,亭主の話を伺うようにしましょう。
 菓銘を伺うなど,出された菓子についての話もこのときにします。
 
△煎茶センチャの場合
 抹茶の場合はお菓子を先に戴きますが,煎茶の場合,お菓子はお茶の後で戴きます。
 お茶を勧められましたら,「戴きます」と挨拶をします。もし,茶碗の位置が遠いよ
うなら,両手で茶托を持ち,自分の正面近くに寄せます。
 蓋付きの茶碗の場合は,左手を茶托に添え,右手で蓋を持ち上げます。このとき,蓋
の内側に水滴が沢山付いていたら茶碗の縁で受け,左手で蓋の縁を受けながら蓋の内側
を上にして茶碗の脇に置きます。本来,蓋は形のまま置くもので,盆に置かれた場合は
柄の付いている方を上にします。ただし,畳又はテーブルに置かれた場合は,濡らさな
いように配慮して上向きに置きます。
 次に,左手を茶托に添えて右手の親指を手前にして茶碗をしっかり挟んで取り上げま
す。そして,左手を茶碗の底に添えて口元に運び,音を立てないようにしてお茶を戴き
ます。
 戴いた後,飲み口を親指と人差指で挟むようにして拭い,指先を懐紙か塵紙で拭きま
す。
 
△お茶の種類と入れ方
 お茶は中国南西部が原産地で,紀元前2000年には漢方医学の祖「神農」が薬草として
の効果を認め,広めたと云う伝説があります。わが国にお茶を伝えたのは,平安時代以
降の遣唐使や留学僧で,当初は大変な貴重品で,薬として用いられたようです。
 貴族階級のものであったお茶を一般に広めるきっかけを作ったのが,臨済宗の開祖栄
西禅師でした。「茶は延命の妙術なり」と著し,宋ソウからお茶の樹と共に喫茶法キッサホウを
持ち帰ったとされています。わが国において茶道と云う文化が花開いたのは,これ以降
のことです。江戸期になりますと,煎茶が日常の飲み物として定着し,広く人々に親し
まれるようになりました。
 
@玉露ギョクロ
 日本茶の中で最も高級なお茶で,中でも八女ヤメや宇治ウジのものが有名です。新芽の出
てきた頃に覆いを被せ,日光が当たらないように大切に育てた風味の良いお茶です。極
小振りの急須に人肌程度に冷ました湯をゆっくりと入れ,舌の上で転がすようにして味
わいます。独特の甘味と酷コクが特徴です。
 
A抹茶マッチャ
 玉露と同様に直射日光が当たらないように育てられた葉を蒸し,熱を当てて乾燥させ
た後,石臼で碾ヒいて粉状にしたもので,お茶の葉の成分の全てを味わえます。茶杓チャ
シャク2杯程の抹茶を,温めた茶碗で茶筅チャセンを使って点タてます。表面の泡が細かい方が
滑らかな口当たりです。
 
B煎茶センチャ
 一般的に広く飲まれており,摘んだ茶葉を蒸して揉み,乾燥させたものです。約70℃
位の湯で入れますと甘味が生き,90℃位の湯で入れますと渋味が全面に出ます。最後の
一滴まで絞り切りますと,二煎目以降も美味しく戴けます。
 
C芽茶メチャ
 玉露や煎茶を作る過程で出てくる,クルクルと丸まった茶葉を集めたもので,香りが高く,
濃厚な味のお茶です。
 
D茎茶クキチャ
 玉露や煎茶を作る過程で出来る茎の部分ばかりを集めたもので,鮮やかな色をしてい
ます。入れたお茶は色が薄いものの,香り高いものになります。玉露の茎茶を「雁ケ音
カリガネ」と云います。
 
E番茶
 二番茶以降の並茶のことで,煎茶に比べますと甘味は少ないのですが,すっきりした
味わいがあります。
 
F焙じ茶ホウジチャ
 大きめの茶葉を焙じた香ばしいお茶で,さっぱりとしています。
 
G玄米茶
 こんがりと香ばしく炒った玄米と番茶を合わせたお茶で,香りを生かすために熱いお
湯を注ぎます。
                 (指導:裏千家泉の会主宰 本田宗節氏による)
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