08 和菓子の上手ないただき方
 
△お菓子の戴き方 − 桜餅,葛桜,柏餅など
 お菓子を包んでいる葉は,お菓子を美しく見せる役目のほかに,切り分けるときの下
敷きにする用途もあります。
 桜餅や柏餅のように葉で包クルんであるものは,上側の葉を手前から向こう側へと開き,
葉の上で黒文字を使って食べやすく切り分けてから,一口ずつ黒文字で口へ運びます。
 戴き終わったら葉を丸めて小さく纏め,懐紙などに包んで持ち帰ります。
 残した葉は葉先からクルクルと巻き,爪の先で切り目を入れて葉柄差し込んで小さく纏め
ます。
 
△お菓子の戴き方 − 羊羹,水羊羹など
 羊羹は端から一口分だけ切り分け,黒文字を挿し入れて口へ運びます。
 水羊羹のように葉が菓子の手前と向こう側にある場合は,両側に開いて平らにし,黒
文字で切り分けます。
 小豆入りの琥珀コハク羹のようなものは,小豆を避けて切り分けますと崩れ難いもので
す。
 
△お菓子の戴き方 − 串団子,みたらし団子
 黒文字を添えてある場合は,黒文字を使って1個ずつ串から外し,大きいものは半分
に切ります。
 串を右手前にして盛られ,黒文字を添えてない場合は,「そのままお召し上がり下さ
い」と云う意味です。串を手に取り,そのまま戴いて良いのですが,懐紙などで口元を
覆うようにしますと,床しい感じがします。
 串を真横に持つ横串,縦に持つ縦串は見苦しいので,串は斜めに引くようにします。
 みたらし団子のようにタレの搦カラんだものは,団子にタレを搦め,成る可くタレを残
さないようにしましょう。
 
△お菓子の戴き方 − 鴬ウグイス餅,蕨ワラビ餅,きんとん
 粉をまぶしたお菓子を戴くときは,粉で皿の中や周囲を汚さないように戴きます。一
口分を切り分けましたら口に運びますが,このとき粉が畳やテーブルの上に落ちないよ
うに,懐紙又は左手を添えます。
 一口分を切り分けましたら,器の中に散った粉を寄せて切り口で押さえるようにしま
すと,器の汚れは最小限となります。
 きんとんのような極軟らかいお菓子は,一口で食べられるように二つ,又は四つ割り
にし,黒文字を斜め加減に深く挿し入れて口に運びます。浅いと崩れやすいので気を付
けましょう。
 戴き終わりましたら,黒文字や器を懐紙などで軽く拭いて置きます。
 
△お菓子の戴き方 − 竹流し羊羹
 竹の筒に流し入れた羊羹は,かつては「水屋の仕事」と云って,お出しする前に竹筒
から出して銘々に切って切り分けていましたが,近頃は一人分ずつ入っており,見た目
も涼しげで美しいので,そのままお出しすることが習わしとなりました。
 竹筒に入れた羊羹は筒の部分を左手前,蓋代わりの笹の葉を右側に盛られて来ますか
ら,左手を竹筒に添え,右手で笹を卷いている紐を外し,紐はクルクルと卷いて結び,皿の
端に置きます。
 口を包んでいる笹を右手で開き,皿に載せます。
 次に黒文字を竹筒の内側に深く挿し入れ,竹筒の内側に沿って羊羹の周囲をグルリと一
回しします。竹筒と羊羹の間に隙間を入れ,竹筒を縦加減にして上下を軽く振りますと,
羊羹がスルリと抜け出ますから,それを先の笹葉に受け,一口分ずつ切り分けて口に運びま
す。
 竹流し羊羹の戴き方の他にもありますが,これが最も美しい方法です。
 残った笹の葉は,先に外した紐で纏め,竹の筒と共に持ち帰ります。
 
△お菓子の戴き方 − 粽チマキ
 粽の底の部分を左手にして両手で粽を持ちます。右手で藺草イグサの結び目を解ホドき,
藺草を手の中に巻き込みながらクルクルと解いて行き,粽を皿に載せ,藺草は軽く結んで皿
の端に寄せて置きます。
 粽を先と同じように手に取り,笹の葉先を延ばしてから1枚を残して後の笹を外し,
1枚残した笹の上に粽が来るように載せ,外した笹を重ねて粽の下に敷きます。
 残した1枚を広げて,粽を黒文字で切り分けながら口へ運び,食べ終わりましたら,
笹を三つ折りにして藺草で巻き,巻き終わりを結んで纏めて置くか,懐紙で包んで持ち
帰ります。
 
△お菓子の戴き方 − 大福,花びら餅など
 大福や花びら餅などの餅菓子は気楽な席で戴くことが多いので,体裁などあまり気に
せずに美味しく召し上がって下さい。少し気の張る場所なら,半分程懐紙に包んで手に
持ち,そのまま戴きますが,改まった席の場合は,黒文字では切り分け難いので,懐紙
を上手に使って戴きます。
 懐紙の手前の折り山を反対に返して餅に被せるようにして二つ折りにし,右側の端を
1〜2p程内側に折って懐紙を袋状にします。
 開いた方を上向きにして左手に持ち,内側の懐紙を手前に折ってずらしながら,中の
餅を戴きます。口元が向こう側の懐紙で都合よく隠れ,粉や餡が零コボれないので品よ
く,美しく戴くことが出来ます。使った懐紙は折り畳んで持ち帰ります。
 
△お菓子の戴き方 − 打菓子,干菓子,最中
 一口で食べられるものは,手に持ってそのまま口に運びます。大きいものは,両側か
らお菓子に懐紙を被せ,半分又は食べやすい大きさに割って戴きます。
 最中の場合も同様に,懐紙を両側から被せて,その中で食べやすい大きさに割って戴
きます。
 
〈小道具の扱い〉
 
△懐紙カイシ
 懐紙は,お菓子を載せたり,口元を拭ったり,食べ残しを包んで持ち帰るのに使いま
す。現代では,お茶席に呼ばれたとき以外はあまり使いませんが,お茶に誘われたとき
や目上の方のお宅に伺うときなど,何かと重宝なので,バッグなどに入れておくとよい
でしょう。
 懐紙は懐フトコロに入れて置くことから起こったもので,白地の和紙のほか,縁を彩りし
たもの,透スカシの入ったものがあるようです。男性用には大振りのものを,女性用には小
振りのものと使い分けます。
 使うときは,二つ折りにした懐紙の外側から一枚ずつ外し,裏に返してザラザラの方
を表に二つ折りにします。折り山(輪)の方を手前に置いて使うとよいでしょう。
 
△黒文字クロモジ
 黒文字は,お菓子を戴くときに使う楊枝ヨウジのことです。長さは7pから18pのもの
までいろいろあります。
 黒文字はお菓子を戴くときに使うほか,2本を箸のようにして,取り箸代わりにする
こともあります。
 黒文字を手に持つときはまず右手で取り上げ,左手で下から受け,右手の親指の腹と
人差指,中指で黒文字を挟むようにして持ち,後の2本の指は添えるようにします。な
お小指は立てますと見苦しいので,気を付けて下さい。
 
                 (指導:裏千家泉の会主宰 本田宗節氏による)
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