08 和菓子の上手ないただき方
 
            和菓子の上手ないただき方
 
                           参考:小学館発行「四季の和菓子」
 
△お菓子の盛り方 − 人数分を一盛りにする場合
 奇数盛りを原則とする
 大きめの器に人数分を盛る場合,客が偶数なら一つ余計にして三つ,又は五つと云う
ように奇数盛りにします。古来から奇数を縁起の良い数とする風習があるためです。
 
 鉢に盛る場合
 口が広く,深さのあまりない場合は,お菓子を平らに並べて盛ります。このとき,お
菓子は取り分けやすいように,少し距離を空けます。3個なら手前に2個,向こう側に
1個を盛って山形にし,5個の場合は手前に3個,向こう側に2個を盛ります。日本食
の世界においては,手前にある食べ物を跨マタいで向こう側のものを箸に取ることは禁忌
となっていますので,手前から順に美しく取り分けることが出来るようにします。
 口があまり広くなく,深さのある器にはお菓子を重ねて山高ヤマタカに盛りますが,重ね
てもお菓子が凹んだり,お菓子同士がくっ付いたりしないことが大切です。
 
 盆や皿に盛る場合
 干菓子は盆か平らな器に盛りますが,右向こう側と左手前に置くのが約束事で,こう
しますと手前のものを跨いで向こう側のものを取ることがありません。この場合も3個,
5個,7個と奇数盛りにします。
 なお,例えば5個のお菓子を重ねる場合は,下に4個を均等に並べ1個を上に載せま
す。また,取り箸はお菓子の手前の器の縁に差し渡して置きますが,取り箸が短いとき
は,箸先を器の内側に落とします。
 
△お菓子の盛り方 − 銘々皿に盛る
 お菓子に合った器を選ぶ
 お菓子には華やかなもの,素朴なものと云うように,それぞれに持ち味があります。
華やかな上生菓子は塗りの器や磁器,素朴なお菓子は素朴な陶器や木の器に,涼しげな
お菓子はガラス器や磁器など涼しさを感じさせる器に盛りますと,持ち味が生きます。
 
 器の真ん中に盛る
 基本は器に真ん中で,お菓子の正面が召し上がる人の方に向くように盛るのが基本で
す。桜餅や柏餅のように葉で包んであるものは,葉を開きやすいように葉先を上にして,
手前に向くように盛ります。
 
 懐紙を使う場合は
 懐紙を二つ折り,又は四つ折りにし,手前に折り目がくるようにして器の真ん中より
やや手前に載せます。器の中心部に懐紙の中心を合わせ,此処にお菓子を盛ります。懐
紙の折り目は,常に器に対して真っ直ぐになるように置くと美しいものです。
 
 召し上がる人に都合の良いように
 串団子は手に取りやすいように,串を右手前に斜めに置きます。粽チマキは左手に取り,
右手で笹を剥きますので,細い方を左手の向こう側に置きます。どのように盛ったら良
いかを迷うような場合は,召し上がる人にとって都合の良いように,考えましょう。
 
 お菓子の盛り方については,これが正しいと云った決まり事がある訳ではありません
から,見た目に美しく,戴きやすくを旨とします。
 
△お菓子の取り分け方 − もてなす側が取り分ける場合
 蓋フタ付きのお重や食篭ジキロウ,鉢などに人数分のお菓子を盛り,客の前で銘々皿に取り
分けて差し上げる場合,客の目の前ですので,美しく,無駄のない所作ショサをするよう心
掛けたいものです。
 鴬ウグイス餅や蕨ワラビ餅など,粉をまぶしたお菓子のように,慣れていないと取り分ける
のが難しいお菓子の場合は,もてなす側が取り分けて差し上げるのが望ましいでしょう。
 
 器と黒文字クロモジの用意
 蓋付きの器の場合は,蓋の上に黒文字2本を取りやすいように右手前の方向斜めに置
き,残りはその下に交差するようにして重ねて載せます。蓋のない容器の場合は,黒文
字を同様に銘々皿の上に置き,盆に載せて主人の前に運びます。
 
 銘々皿に取り分ける
 お菓子を入れた容器を主人の正面奧に,銘々皿はその左手の手前に置きます。
 銘々皿の1枚を正面手前に置き,懐紙を畳んで載せます。黒文字2本,又は取り箸バシ
を使ってお菓子を取り上げて左手をお菓子に添えます。これは,お菓子を取り落としそ
うになったときの用心のためと,粉や砂糖などを落とさないようにするためです。お菓
子は正面を手前に向けて銘々皿の真ん中に置きます。
 お菓子を載せましたら,客の取りやすい位置に黒文字を添え,召し上がる人の方にお
菓子の正面が向くよう,向きを変えてお勧めします。
 
△お菓子の取り分け方 − 戴く側が取り分ける場合
 人数分のお菓子を盛った器から,各自で取り分ける場合で,懐紙が予め用意されてい
るときは,1枚ずつ畳んで銘々皿に載せ,器が回って来るのを待ちます。
 器が回って来ましたら,次の方に軽く,「お先に」の意味の会釈をしてから鉢又はお
重を正面奧に,銘々皿を正面手前に置きます。
 黒文字,又は取り箸を使い,盛られたお菓子の右手前から順にお菓子を取って行きま
す。手前にあるものを越えて向こう側にあるものを取るのは,美しく見えないので気を
付けて下さい。
 お菓子を取り上げましたら左手を添えて,注意深く菓子を自分の銘々皿に移します。
このとき,お菓子が挟み難いようでしたら,黒文字をお菓子に挿し入れても構いません。
干菓子や饅頭などは手で直ジカに取り上げても良いことになっています。
 移し終わりましたら,用意された黒文字を手前に置きます。
 取り箸が粉や餡で汚れましたら,懐紙の右手向こう側を手前に折り,箸を入れて上か
ら左手で懐紙を押さえ,箸の汚れを拭き取り,箸を元の位置に戻して次の方の右側に盛
り鉢を移します。
 
△お菓子の戴イタダき方 − 基本になる姿勢
 銘々皿の受け方
 銘々皿の成る可く底に近い部分に両手を差し入れて掬スクい上げるようにし,身体の正
面,胸の高さまで持ち上げ,左手の掌テノヒラで皿の真下を支えます。お菓子を切り分ける
ときに,皿がぐらついたりしないように左手でしっかり支えます。テーブルで戴くとき
は銘々皿はテーブルに載せて戴きますが,このときも左手を銘々皿に添えますと美しく
見えます。
 
 黒文字の持ち方
 親指の腹と人差指,中指で黒文字を挟むようにして持ち,後の2本の指は添えるよう
にします。小指を立てますと見苦しいので気を付けましょう。
 お菓子を切り分ける場合は,黒文字の平らな面を横に向けて使いますが,持ち方は基
本と変わりません。
 
 食べ終わったら
 お菓子が懐紙に載せられていた場合は,懐紙の端で黒文字を拭き取り,散らした粉な
どを纏め,食べ残しやお菓子を包んでいた葉や笹などを懐紙に包んで持ち帰ります。
 懐紙を使わなかった場合は,皿の汚れを塵紙などで拭き取り,黒文字の汚れを拭って
葉などと共に畳み,これも持ち帰ります。
 懐紙や塵紙などで皿の汚れを拭き取る場合は,擦ったりしないで軽く押さえる程度に
し,後で洗うのですから,徹底的に綺麗にする必要はなく,気持ちを表すだけで十分で
す。
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