05 チップとスモークウッド
 
                  参考:成美堂出版発行「おいしい薫製づくり」
 
 チップやスモークウッドとは、燻製の香りと色合いを作り出す燻煙材です。醸し出さ
れる香りや色が、チップやスモークウッドの種類によって微妙に異なるのを楽しんで欲
しいと思います。
 
 本来燻製は保存を目的に発展して来ましたが、現代では保存より寧ろ燻煙による独特
の香りや色合いを楽しむ、と云う目的が大きい。燻煙の香りの主体となっているのは主
にフェノール系化合物ですが、ほかにカルボナル、有機酸、エステル、アルコール、ケ
トン、ラクトンなど約200種類もの有機化合物が加わることで、よくも悪くも、より複雑
な薫香が生まれるのです。
 日本人の薫香の好みについては興味深い話があります。一般に東海地方から中国地方
では軽い薫香が好まれ、関東地方以北及び九州では強い薫香が好まれると言うのです。
これは、かつての日常生活で暖房用に木炭を使っていたか、木材を使っていたか、の名
残りなのだと。現代では既に失われた習慣が、今なお嗜好に影響している訳で、人間の
味覚・臭覚とは不思議なものです。
 
 燻煙を発生させるのが燻煙材ですが、現在は木材そのものではなく、木材をチップ或
いはスモークウッドの形に加工したものを用いるのが一般的です。チップは木材を細か
い木片にしたものです(粉末状にしたものもありますが、通常は木片タイプのチップを
使うことが多い)。スモークウッドは、粉末状にした燻煙材を棒状に固めたものです。
スモークウッドは、置き方次第で燻煙量や燻煙時間を簡単に調節でき、スモーキング初
心者にはお薦めの燻煙材です。
 
△チップ
 チップは、燻煙材として最もポピュラーに使われます。原材料である木材の種類によ
って変化する香りや色合いを堪能しましょう。
 
 チップは木材を細かい木片にしたもので、ナラ、ブナ、サクラ、カシ、ヒッコリーな
ど数多くの種類があります。粉末状のものもあり、これは主に熱源としてアルコールラ
ンプや固形燃料を使用する小型のスモーカーに利用されます。
 粉末タイプは、煙の出が早く、短時間に仕上げたいときには有利ですが、一般には木
片タイプを使うことが多い。
 
 チップを用いるときに注意したいのが、詰め方です。チップの詰め方と、燻煙時間・
燻煙量には密接な関係があり、同じ量のチップでも、空気の量が多いと早く燃えるため
燻煙時間・燻煙量は少なくなります。逆に空気が少なければ燃えるのに時間がかかるた
め、燻煙時間・燻煙量とも多くなります。レシピ通りの分量のチップでうまく行かなか
った場合は、チップの詰め方に注意して見て下さい。また、チップの燃え方の違いはス
モーカーによっても現れますので、いろいろな詰め方を試して見て、燻煙時間・燻煙量
をきちんと保つことが大切です。
 
 使われる木材の種類によっては、チップから生じる香り・味・色合いは異なります。
例えば、リンゴのチップは果樹特有の甘味のある香り、サクラは強い独特の香り、ブナ
やナラのチップは色付きが早いなどなどです。
 それぞれの銘柄の特徴を押さえ、素材に適したチップを使用するとともに、自分好み
の香り・色合いを見付けて見ましょう。このことは燻製作りの醍醐味とも云える楽しみ
なのです。
 
▲ナラ
 ナラはわが国全土に見られる落葉高木で、タンニンが多く含まれ、着色が早い。その
ため短時間で燻煙する熱燻法に便利、魚や貝類向き。
▲ブナ
 ブナはナラ同様タンニンが多く含まれ着色が早い。やや渋味があるがすっきりした香
りを持つ。魚や貝類向き。
▲サクラ
 馴染み深いソメイヨシノよりもヤマザクラの方が良い香りを持つ。特有の強い香りが
あり、豚や羊、魚に多用される。
▲クルミ
 サワグルミでなくオニグルミが使われる。木質が堅く香りが良い。他の燻煙材とのミ
ックスにも適している。肉、魚、貝などオールマイティに。
▲リンゴ
 リンゴはバラ科の落葉樹で、果樹特有の甘い香りを持ち、マイルドに仕上げに向く。
鳥や白身魚など淡泊な素材に適している。
▲ヒッコリー
 ヒッコリーはクルミ科の木で欧米では最も一般的に使用される。良い香りを持ち肉、
魚全般に使われるほか、特にハムやベーコンにも向く。
 
△スモークウッド
 燻煙材の粉末を棒状に固めたものがスモークウッドです。スモークウッドは連続的に
安定して煙を出すことが出来、しかも温度を上げないので冷燻にも向きます。
 
 スモークウッドとは近年開発された燻煙材で、サクラやナラなどの原材料を粉末にし
てから棒状に固めたものです。従来、燻煙の過程プロセスにおいて長時間一定量の煙を発生
させることは非常に困難であり、熟練を要する作業でした。燻煙作りの中で最も厄介で
あったと云っても過言ではありません。チップも木材そのものに比べれば、格段に使い
やすい燻煙材ですが、木を燃やすと云う点において本質的には木材と同じです。詰め方
次第で同じ量のチップでも燃え方は異なって来ますし、チップを燃やすことで温度が上
昇する点も考慮しなければなりません。しかし、スモークウッドは違います。
 
 スモークウッドはその片方の端に着火することで、熱源が無くても、1本で3時間半
〜4時間連続的に煙を出し続けます。温度を上げることなく煙を出すので、特に家庭で
難しいとされていた冷燻法に使うと大変有効です。複数本を使う場合は、並べ方を変え
ることで燻煙量・燻煙時間を自由かつ容易に調節出来ます。燻製作りにおける燻煙作業
は、スモークウッドの登場によって画期的に楽になったと云えるでしょう。
 
 スモークウッドの種類にはリンゴ、サクラ、ヒッコリー、クルミ、ナラなどがありま
す。木材の樹皮や腐朽物などを取り除いたものを微粉にし、人体に無害な粘着性のある
植物を使って固形にしてありますので、衛生上も安心して使用出来ます。
 
▲サクラ
 馴染み深いソメイヨシノよりもヤマザクラの方が良い香りを持つ。特有の強い香りが
あり、豚や羊、魚に多用される。
▲ヒッコリー
 ヒッコリーはクルミ科の木で欧米では最も一般的に使用される。良い香りを持ち肉、
魚全般に使われるほか、特にハムやベーコンにも向く。
▲クルミ
 サワグルミでなくオニグルミが使われる。木質が堅く香りが良い。他の燻煙材とのミ
ックスにも適している。肉、魚、貝などオールマイティに。
▲リンゴ
 リンゴはバラ科の落葉樹で、果樹特有の甘い香りを持ち、マイルドに仕上げに向く。
鳥や白身魚など淡泊な素材に適している。
▲ナラ
 ナラはわが国全土に見られる落葉高木で、タンニンが多く含まれ、着色が早い。その
ため短時間で燻煙する熱燻法に便利、魚や貝類向き。

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