06 スパイス・ハーブ・香味野菜
 
                  参考:成美堂出版発行「おいしい薫製づくり」
 
△スパイス
 スパイスは本来、肉や魚の保存のために珍重されて来ました。保存食として始まった
燻製には、スパイスの刺激ある香りと味は不可欠のものです。うまく利用して見て下さ
い。
 
 冷凍技術や交通手段の発達していなかった極ゴク最近まで、食材・食品を長期間保存す
るために、人間は多様な工夫を凝らして来ました。その一つが香辛料です。歴史を紐解
きますとお分かりのように、香辛料は大航海時代を生み出す重大な原動力になった程、
人々に渇望されました。そして非常に貴重な保存料として、かつては世界中で珍重され
ました。
 同じく燻製も抑もは保存を第一の目的として生まれたものであり、両者は切っても切
れない関係と云えましょう。
 一般に香辛料全体を指してスパイスと云うことが多いが、ここでは植物の種子や果実
などをスパイス、葉や茎をハーブ、日常生活で普通野菜として扱われるものを香味野菜
と呼ぶことにします。
 
 保存期間を長くすること以外にスパイスの効用として最も大きいのは、刺激力のある
味付け、香り付けが出来ること、素材の持ち味を一層引き立てたり、或いは素材の表情
に様々な変化を付けてくれます。殆どのスパイスは辛味又はほろ苦い味を持ちます。こ
れによって食べ物に好みの辛味を付けることが出来る(味付け作用)訳ですが、効果と
しては味だけではありません。鼻や舌が刺激されることで、胃腸の新陳代謝が活発にな
り、食欲が増進すると云う面も持つのです。また、そのほかに臭みを消す矯臭作用、香
りを付ける賦香作用、色を付ける着色作用などがスパイスの効用として挙げられます。
 
▲ブラックペッパー
 ブラックペッパーはペッパーコーンの未熟な緑色の実を乾燥させ、黒くしたもの。ブ
ラックの方が辛味・香りともにホワイトより強い。主に赤身の肉と相性がいい。
▲ホワイトペッパー
 ホワイトペッパーは、ペッパーコーンの完熟の実の皮を剥いたもの。辛味・香りはブ
ラックよりマイルドで上品。主に鶏肉や魚と相性がいい。
▲オールスパイス
 オールスパイスは、クローブ、シナモン、ナツメグの三つの香りを持つためにこの名
が付いた。爽やかな甘味とほろ苦さがあり香り付けに効果的。肉、魚など全般に。
▲クローブ
 クローブは丁字の蕾ツボミを乾燥させたもの。辛味とバニラ風の香り・味を併せ持つ。
矯臭作用に優れ、肉、特に豚肉やハムには欠かせない。
▲カルダモン
 カルダモンは、ジンジャーの仲間のグリーンカルダモンの種子。種子は莢の中に入っ
ており、樟脳ショウノウに似た強い香り。肉、カジキやクジラ、大豆蛋白質と。
▲バジル
 バジルはシソ科の植物で、イタリア語ではバジリコ。鶏肉、鶏卵と相性がいい。
 
△ハーブ
 香り付けを楽しむなら、ハーブをうまく使用することです。ハーフは近年わが国でも、
フレッシュなものが入手しやすくなっています。
 
 元来、草や草木全般を指していた「ハーブ」ですが、現在では狭義の「香草」と云う
意味で用いられるのが一般的です。香りのする植物の葉や茎、枝などであり、生或いは
乾燥した状態で用いられます。わが国の伝統的食文化では馴染みのなかった外来のハー
ブも、最近ではフレッシュな状態でスーパーマーケットなどで普通に見かけるほか、園
芸店などで様々な種類のハーブの種子が販売されるようになりました。ハーブはプラン
ターや鉢植えで簡単に栽培出来るものが多い。興味のある人は栽培して見ますと、燻製
作りに欠かせない新鮮なフレッシュハーブを常時入手することが出来るでしょう。ハー
ブは燻製ばかりでなく、肉料理や魚料理、スープやサラダ、イワシの生姜煮のように生
臭みを消したい和風料理などにまで、応用範囲はかなり広い。自家製のハーブから作っ
たハーブティーも洒落ています。ハーブを自宅で栽培しますと、手間がかからない割に
は非常に便利です。
 
 ハーブの効用として大きなものは、何と云っても香りです。爽やかな香りの賦香作用
で食欲増進の効果があるほか、強い香りで肉や魚の特有の生臭さを消す矯臭作用もあり
ます。ハーブのみならずスパイス、香味野菜にも言えますが、組み合わせ次第で好みの
オリジナルの味・香りが生まれますので、楽しんで見て下さい。ただし気を付けたいの
は、初めはオーソドックスなものから使って見ること、一度に沢山入れないことです。
 
▲月桂樹の葉
 月桂樹はベイリーブス、ローリエとも。生、乾燥させたもの両方使うが、燻製には湯
通しして干したものが向く。矯臭に優れ豚、羊、鶏、鶏卵、魚などに。
▲タイム
 タイムは生、乾燥させたもの両方使う。プランターなどでの栽培も容易。矯臭作用に
優れ肉類全般に使われるが、取り分け羊、鶏、魚と相性がいい。
▲セージ
 セージは生で使う。銀色の葉と紫の花を持つガーデンセージが一般的。香りが強く矯
臭作用に優れる。豚、羊、鶏、鶏卵、魚などに合う。
▲コリアンダー
 コリアンダーは生で使う。刺激的な香りを持ち、矯臭作用に優れる。燻製に使うと個
性的な風味になり牛、豚、鶏、魚などに合う。
▲ローズマリー
 ローズマリーは乾燥したものは香りが強すぎるので生の枝を使うのが良い。多年生の
低木で、素材の腹の中に入れると香り付けのほか、煙や風の通りをよくする。鶏や川魚
に。
▲オレガノ
 オレガノは生を使う。トマトに合うのでイタリア料理には欠かせない。矯臭作用に優
れ、燻製の場合は肉全般や鶏卵などと相性がいい。
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