03 燻製作りの手順
参考:成美堂出版発行「おいしい薫製づくり」
1 原料
旨い燻製を作るのに大切なのは、素材選びです。先ず、どんな素材も新鮮であること
が一番の条件です。
目安として、肉は肉質のきめが細かいもの、淡紅色で光沢があるもの、脂肪がしっか
り締まって濁りのない白色のものです。冷凍肉は解凍の際、風味や旨味が流れ出してし
まうためなるべく避けたいが、用いるときは密閉出来るジプロックなどを使って解凍す
るとよいでしょう。電子レンジで解凍するのは絶対避けて下さい。
魚は、旬のものが良い。艶があり目や鰓エラ、鱗が濁っていないもの、身に弾力性があ
り腹に張りのあるもの、表面の斑点がくっきりしているものが新鮮です。冷凍魚の場合、
購入したら直ぐ用いて下さい。冷蔵庫で保存しても日毎に鮮度は落ちて行くので注意し
て下さい。
貝類は必ず殻付きのものを用います。
2 調理(下処理)
肉や魚を捌サバき、汚れや内蔵、血合いを取り除いて形を整えます。魚は内蔵を取って
頭を取ったり卸したりします。肉は脂肪分や筋スジを取り、場合によっては血抜きもしま
す。下処理を怠らずにきちんと行うことが、完成の際の出来を左右します。
魚の処理の仕方は次の通りです。丸ごと頭まで残すなら、@包丁を背鰭セビレの方から
入れ腹部の中心をカマ付近まで切り開きます。A内蔵を取り出し、背部の下にある血合
いも丁寧に掻き落とします。B鰓を手又は包丁で取ります。C流水でよく洗います。
頭を落とすなら、@包丁を背鰭に横から入れ中骨まで切り落とします。裏返して同様
に包丁を入れ、頭を切り落とします。A尻鰭からカマに向かって腹を切り開きます。B
内蔵、血合いを取り、流水でよく洗います。
三枚に下ろす場合、@丸ごとの場合と同様、腹を開き内蔵、血合いを取り除きます。
A骨と身の間に包丁を入れ、中骨に沿って切ります。B同様に尾鰭の方から頭へと切り
開きます。C骨を包丁で持ち上げるように、中骨に沿って上身を切り離します。D下身
の背と身との間に包丁を入れ、尾から頭に向かって切り開きます。E向きを変え、頭か
ら尾鰭に切り開きます。F再度向きを変え、中骨を逆手に持って骨と身を切り離します。
3 塩漬け
塩漬けとは、素材を塩漬けすることで味を付け、腐敗を防いで保存性を高めるために
することです。塩分を素材に均一に浸透させることは、燻製の仕上がりを左右する重要
なポイントですので、塩の加減は素材の好み、目的とする保存期間などによって微妙に
異なりますので、いろいろ試して見て下さい。
塩漬けの方法には、素材の表面に直接塩を振ったり擦り込んだりする「振り塩法」、
素材を10〜15%の塩水に漬け込む「ソミュール法」、ピックル液と云う塩漬け液に素材
を浸して冷蔵庫で熟成させる「ピックル法」の三種類があります(次稿参照)。素材目
的に応じて上手く使い分けて下さい。
4 塩抜き・水洗い
素材内部に浸透する塩分は内側と外側とで可成り異なります。過剰な塩分を落とし、
程良い味に調えると同時に、素材に含まれる生臭さや腐敗を促す可溶性物質を洗い流す
ため、塩抜き・水洗いをします。塩漬けの段階から、薄い塩分で漬け込めば良いと考え
がちですが、そうしますと内部に浸透する塩分が少なくなり、保存・風味などの面で問
題があるのです。二度手間のように思いがちですが、しっかり塩漬けをしてから塩抜き
・水洗いをすることは外せない重要な工程プロセスなのです。
塩抜き・水洗いを、流水でする方法と、溜め水でする方法とがあります。流水では、
裏面をよく洗い流してから容器に水を溜めて素材を入れ、水道水をチョロチョロ出しな
がら1〜2時間置きます。溜め水では、表面を洗い流した後、容器に水を溜めて素材を
入れて置きますが、30分に一度位の割合で容器の水を取り替えるのが望ましい。また、
呼び塩として、一摘みの塩を水の中に入れることで塩分を早く抜く場合もあります。
塩抜きが出来たかどうかの判断は、素材を少し切って食べて見るのが良い。後の工程
で素材を乾燥させますので、この時点ではやや塩抜き過ぎたかなと思える位が、丁度良
い塩抜き加減です。最後によく水洗いし、ペーパータオル又はタオルなどでよく水気を
拭き取って置きます。
5 水切り風乾
水切り風乾とは、塩抜きした素材を風に当てて乾燥させることです。素材に水分が多
いと、燻煙が素材の内部に沁み込まず、表面の水分だけが熱を吸収して煮立ってしまい、
旨味が逃げてしまうからです。また水分には雑菌が多く、乾燥させることで防腐性・保
存性を高める効果もあります。
直射日光を避け、砂や埃ホコリ、虫などが付かない風通しの良い場所で、自然に乾燥させ
ます。鳥や猫にも注意しましょう。専用の風乾ネットを使えばベランダなどでも風乾出
来ます。時間的には小型の素材で1〜2時間、大型のもので2時間〜1晩位が目安です。
素材表面の水分が無くなれば十分です。
ここまでが、燻煙に入るまでの三つの燻煙法に共通の工程です。
6 燻室入れ
いよいよ燻室の工程に入ります。素材に適したスモーカーを選び、それに合わせてチ
ップの容器や火種などを選びます。素材は網の上に並べたり、フックで吊るすなどして
スモーカーにセットします。
7 燻煙
燻煙とは、素材に煙を掛けて仕上げることです。燻煙を掛けることで素材に燻味が付
くと共に、熟成された旨味が引き出されます。更に煙に含まれる有機化合物が、腐敗を
防ぎ保存性を高める作用をします。燻煙の方法には冷燻法、温燻法、熱燻法(以上前掲
)があり、素材や目的に合った方法を選んで下さい。何れの方法においても、低い温度
で始め、徐々に温度を上げて行くのが基本です。また、素材に応じてチップの種類も異
なります。
8 燻室出し・仕上げ風乾
燻煙の終わった燻製をスモーカーから取り出し、直射日光の当たらない風通しの良い
場所で風乾します。これにより煙のえぐみが取り除かれ、香りがマイルドになります。
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