03 薬膳粥その2
 
              薬膳粥その2
 
               参考:JA沢田薬王園発行「カラダのための薬膳粥」
 
 
【中華粥】
 
 元気エキスが詰まっている,鶏殻トリガラスープがベースの中華粥です。
 
 鶏殻をじっくり煮込み,旨味の出た澄んだスープは,それだけで食欲を唆ソソります。
目に美味しいだけでなく,鶏殻スープに溶け出したゼラチン質には,肌に潤いを与える
コンドロイチン硫酸が豊富です。身体を内側から元気にしてくれるエキスが詰まってい
ます。またこのエキスは味に深みを持たせ,あらゆる素材の美味しさを引き立てる名脇
役なのです。日本人に不足勝ちなカルシウムを素材に加えたり,様々な薬膳素材を調和
させて,譬えお粥一品でも,理想的な栄養バランスの執れた食事を実現します。
 鶏殻スープ材料:4〜5人分/鶏殻300g,長葱60g,玉葱半分,人参半分,生姜ショウガ
  20g,大蒜ニンニク大1片,月桂樹の葉大1枚,水10l(10000ml)
 粥材料:4〜5人分/白米180g,鶏殻スープ1400ml,清酒30ml,塩8g
 作り方:@まず沸騰した湯に鶏殻をさっと通し,直ぐに水に浸ける。
  A水の中において鶏殻の余分な血合いや脂肪を丁寧に取り除くと,澄んだスープに
   仕上がる。
  B綺麗にした鶏殻を香味野菜と共に沸騰した湯に入れる。
  C一度煮立たせ,よくアクを取り除く。
  Dアクを取りながら中火で4時間煮る。
  E出来たスープを布で漉し,5lのスープを採る。これはラーメンスープなどにも利
   用出来るので,フリーザーパックに入れて保存して置く(なお,ラーメンスープ
   などに用いるときは,更に半量の2.5lになるまで煮込む)。
  F中華粥には,この鶏殻スープ1400mlに分量の白米・清酒・塩を加えて炊き上げる。
 
[大国オオクニ粥]
 糖尿病の初期には空腹感が強く,ついつい食べ過ぎて仕舞勝ちです。糖尿病食にお薦
めしたいのが,野菜をたっぷり入れた,食べ応えのある大国粥です。
 冬瓜トウガンはカロリーが低く,口の渇きを止める作用があり,枸杞子クコシにも血糖値を
下げる働きや強壮作用があります。
 漬け物などでお馴染みの冬瓜ですが,『正倉院文書』には奈良時代に市販されていた
とあり,日本人の食卓に古くから用いられていた食材です。
 材料:4人分/白米180g,冬瓜100g,牛蒡60g,枸杞子10g,鶏殻スープ800ml,鰹出汁
  600ml,清酒30ml,塩8g,酢少々
 作り方:@鶏殻スープに白米・鰹出汁・清酒・塩を加えて中華粥に炊き上げる。
  A笹がきにした牛蒡を水に晒した後,酢を少々入れた熱湯でさっと茹がく。
  B冬瓜は種と皮を除き,茹でてから笹がき牛蒡と一緒に,沸騰した中華粥に加える。
  C枸杞子は一晩水に浸けて戻して置き,食べる直前に散らす。
 メモ:淡泊な味の野菜を炊き込んだお粥です。冬瓜は大型の野菜ですので核家族では
  敬遠され勝ちですが,熟したものは半年間も貯蔵出来ると云われています。また冬
  瓜はインドにおいてはカレーにも入れるそうですので,味噌汁や煮物,糠漬けなど
  にもお使い下さい。
 
[福寿フクジュ粥]
 緑豆リョクトウは,わが国においては豆モヤシや春雨としてお馴染みの食材です。チョロギ
は,紫蘇や梅酢で赤く色付けしたものを正月や祝儀の際の料理にあしらうことが多いで
すが,これらを丸のまま煮込んで,スタミナ強化の高エネルギー食として,栄養価の高
い中華粥にしてみました。
 シソ科植物のチョロギ(塊茎)は,糖質15%及びスタキオースを含み,中国において
は風邪や咳止めに利用されています。松の実は海松子カイショウシと呼ばれ,仙人の食べ物と
云われて珍重されて来ました。胃腸や肺の働きを助け,良質の蛋白質やビタミンB2・E
や鉄を多く含みますので,滋養強壮作用があり,美肌や貧血に有効です。近年において
は老人性気管支炎にも良いとされています。
 材料:4人分/鶏殻スープ800ml,鰹出汁600ml,白米180g,松の実10g,緑豆15g,チ
  ョロギ20g,生椎茸12g,乾燥菊花6g,柚子少々,薄口醤油30ml,味醂10ml,清酒45
  ml,塩少々
 作り方:@分量の鶏殻スープに鰹出汁を入れ,白米・緑豆・チョロギ・薄口醤油・味
   醂・清酒・塩を加えて炊き込む。
  A生椎茸はさっと焼いてから千切りにし,沸騰する前のお粥に加える。
  B松の実はよく炒ってから,食べる直前に載せる。
  C戻した菊花と刻んだ柚子を飾る。
 メモ:@生のチョロギが入手出来ないときは,水煮のものを代用して下さい。
  A椎茸は乾燥品でもよいが,生のものを軽く焼きますと風味が増します。
 
[豆マメ粥]
 農耕文化の国であるわが国においては,特別の日のご馳走に小豆(例えば赤飯や小豆
粥),節分の厄払いには大豆と,私共の生活に豆は深く結び付いて来ました。
 『土佐日記』にも出てくる小豆粥は,やがて七草粥として日本人の食生活に定着して
行きます。
 これに普段は豆モヤシとして戴くことの多い緑豆リョクトウを加え,蛋白質,ミネラル,ビ
タミンを豊富に含む三種の豆をお粥に炊き込みました。「畑の肉」の絶妙な栄養バラン
スと彩りをお楽しみ下さい。
 小豆には利尿作用があり,皮は便秘に良いと云われています。緑豆は熱を取り,渇き
を止めるのに有効と云われています。前の晩から材料を全て混ぜ合わせて置き,翌朝そ
のまま火に掛ければ,炊き立ての朝粥を戴けます。
 材料:4人分/鶏殻スープ800ml,鰹出汁600ml,白米180g,鳩麦20g,大豆12g,小豆
  12g,緑豆12g,舞茸20g,薄口醤油30ml,味醂10ml,清酒45ml,塩少々
 作り方:@鳩麦・大豆・小豆・緑豆は一晩水に浸けて置く。
  A分量の鶏殻スープに鰹出汁を入れ,白米・舞茸・薄口醤油・味醂・清酒・塩に,
   浸け置きした鳩麦・大豆・小豆・緑豆を加えて,お粥に炊き上げる。
 メモ:舞茸はフライパンなどで空炒りしてから入れますと,アクがあまり出ません。
 
[蓮ハスの実粥]
 インドにおいては,蓮の葉が水を弾く性質に基づき,世俗にまみれない無執着の心を
表すとされております。
 薬膳素材としての蓮は,花から根茎(蓮根)まで全て薬用とされ,それぞれに生薬と
しての名前が付けられている程です。
 蓮の実は蓮子レンシと云って,滋養強壮・鎮静・健胃効果があります。これに栄養価の高
い鶏卵を加え,虚弱体質や病後の栄養補給として,吸収の良いお粥に仕立てました。
 材料:4人分/鶏殻スープ800ml,鰹出汁600ml,白米100g,黒米20g,蓮の実15g,鶏
  卵2個,三つ葉2g,薄口醤油30ml,味醂15ml,清酒30ml,塩少々
 作り方:@分量の鶏殻スープに鰹出汁を入れ,白米・黒米・蓮の実・薄口醤油・味醂
   ・清酒・塩を加え,お粥に炊き上げる。
  A鶏卵は炊き上がる直前に入れ,半熟状態で火を止め,仕上げに三つ葉を散らす。
 メモ:籾モミの黒い黒米は,わが国においては神饌米として赤米や香米と共に祭礼に用
  いられたそうです。白米と黒米を5対1の割合で混ぜた,エスニックな雰囲気の中
  国粥です。
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