03a 薬膳粥その2
【中華粥】
[神農シンノウ粥]
龍眼リュウガンとは茘枝レイシに似た果実です。中国の伝説には,福建興化の桂元と云う若者
が悪い龍を退治し,その墓に龍の両目を一緒に葬ったところ,二本の大木が生え,実を
成らせたました。この実が龍眼,桂元,桂円などと呼ばれるようになりました。
龍眼はムクロジ科の常緑高木で,果実は乳白色,葡萄より堅く,コリッとした感覚と特有
の風味があります。この果皮(仮種皮カシュヒ)を干したものが龍眼肉と呼ばれる生薬で,
強壮剤・鎮静剤として知られ,物忘れや不眠症に効くと云われています。これにナス科
の枸杞子クコシを加えました。
百草を嘗めて医薬をを作ったと云われる中国の医薬の祖神農の名前を戴いた果実パワ
ーの元気回復食です。ストレスを感じたときなどに召し上がって下さい。
材料:4人分/鶏殻スープ800ml,鰹出汁600ml,白米100g,百合根10g,龍眼肉15g,
枸杞子8g,薄口醤油30ml,味醂10ml,清酒45ml,塩少々
作り方:@龍眼肉は水に浸けて戻して置く。
A分量の鶏殻スープと鰹出汁に薄口醤油・味醂・清酒・塩を入れ,白米・百合根・
戻した龍眼肉を加え,お粥に炊き上げる。
B食べる直前に,水又は清酒に浸けて戻した枸杞子を散らす。
メモ:龍眼は,レーズンのようにホットケーキや蒸しパンに入れても美味しく戴けま
す。粉200gに対して龍眼肉15g(100mlのブランデーに30分浸けたもの),ナッツな
ども入れますと手軽な薬膳お八つになります。
[茸キノコ粥]
岡山や長崎,鹿児島など幾つかの神社においては,今でも神社付属の神饌田において
赤米が栽培されています。お祝いのときにお赤飯を食べるのは,元々日本人が赤米を食
べていた名残であるとされています。
これにカルシウムの豊富な白子シラス干しと,カルシウムを身体に吸収しやすくするビタ
ミンDとミネラルを含んだ茸を組み合わせた,野趣豊かな薬膳粥です。古代食の味わい
として,またダイエット食として召し上がって下さい。
材料:4人分/鶏殻スープ800ml,鰹出汁600ml,白米90g,赤米30g,滑子ナメコ10g,椎
茸8g,占地シメジ15g,白子干し20g,薄口醤油30ml,味醂10ml,清酒45ml,塩少々
作り方:@分量の鶏殻スープと鰹出汁に,白子干し以外の全ての材料を入れて,お粥
に炊き上げる。
A仕上げに白子干しを散らす。
メモ:鰯類やイカナゴなどの稚魚をよく乾燥したものを縮緬ジャコと云います。関西
西方面においてはジャコ,関東方面においては生干しの白子が好まれるようです。
[薬王ヤクオウ粥]
薬膳素材を贅沢に用いた一品です。高麗人参は別名オタネニンジンとか,朝鮮人参と
云います。徳川八代将軍吉宗が栽培を奨励し,幕府から種子(おたね)が払い下げられ
たことと,根の形が屡々シバシバ「人」と云う字に似ていたことから「お種の人参」と呼
ばれ,やがてオタネニンジンと呼ばれるようなったと云います。
オタネニンジンは,胃の衰弱による新陳代謝機能の低下を防ぎます。病弱な方の胃凭
れモタレ,消化不良,嘔吐オウト,腹痛,弛緩性シカンセイ下痢,食欲不振などに効果があります。
また免疫機能増強作用もあります。
大棗タイソウは棗ナツメの果実を乾燥させたもので,胃酸を中和し,血液に吸収されますと細
胞の働きを良くし,筋力を増強させます。また肝臓を保護する作用もあります。黄精オウ
セイはナルコユリの根茎で,滋養強壮薬として用いられています。
胃の弱い方には,獣肉蛋白質を消化の良い鶏肉から摂ることをお薦めします。
材料:4人分/鶏殻スープ800ml,鰹出汁600ml,白米180g,高麗人参15g,黄精5g,大
棗4ケ,松の実8g,鶏肉20g,薄口醤油30ml,味醂10ml,清酒45ml,塩少々
作り方:@分量の鶏殻スープと鰹出汁に,松の実以外の全ての材料を入れて,お粥に
炊き上げる。
A空炒りした松の実を,食べる直前に散らす。
メモ:大棗の甘味に黄精,高麗人参の風味は,薬膳粥ならではの味わいです。
[鳩麦ハトムギ粥]
インド・マレー地方原産の鳩麦の種子の種皮を除いたものが,生薬意(草冠+意)苡
仁ヨクイニンです。その優れた薬効のために,「キリストの涙」とか「モーゼの涙」などとも
呼ばれます。
鳩麦には利尿作用があり,心臓病・肝臓病の浮腫ムクミによく効きます。消炎・鎮痛作用
もありますので,筋肉痛・リウマチ・神経痛などには,鳩麦を2〜3時間煮出した汁を
用いた鳩麦風呂が良いようです。ビタミン・ミネラルに富み,新陳代謝作用に優れてい
ますので,滑らかな美肌作りに愛用される方も多い。
滋養強壮効果のある高麗人参と,解熱・鎮痛薬としても用いられている菊花をあしら
った,あっさり風味の麦ご飯のお粥です。
材料:4人分/鶏殻スープ800ml,鰹出汁600ml,白米80g,鳩麦40g,高麗人参15g,乾
燥菊花4g,薄口醤油30ml,味醂10ml,清酒45ml,塩少々
作り方:@分量の鶏殻スープと鰹出汁に,菊花以外の全ての材料を入れて,お粥に炊
き上げる。
A仕上げに水で戻した菊花を飾る。
メモ:高麗人参が乾燥品のときは,ミキサーなどで粉末にしてから混ぜて下さい。こ
の場合,4人分のお粥には8g程度とし,多く入れ過ぎないように注意して下さい。
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