06 竹文化〈竹庭〉
 
              竹文化〈竹庭〉
 
〈竹庭の魅惑〉
 竹や笹は安価で嵩カサがありますので,庭造りにはてっとり早いです。僅かな肥料と水
分で鮮やかな緑をたたえて生長します。
 竹林を訪れてその雰囲気に浸りますと,竹の心がじかに伝わって,邪念は消え,疲れ
は去り,明日への活力が心身にみなぎって,ひとしお幸福感が湧いてきます。
 
〈竹庭づくりのコツ〉
 △見せるコツ
 竹の美しい姿は自然の姿です。モウソウチク,クロチク,ハチク,盆栽用竹類は剪定,
整枝をしないほうがよいです。筍は間引いて,竹林が林立しないようにして下さい。竹
が小さいときは,施肥をして翌年に大きいものを仕立てます。
 竹の枝は水平に広がりますので,この水平さが人の心を落ちつかせます。盆栽もそう
です。ヒメハチク,ハチク,モウソウチクが優れています。
 クロチク,ナリヒラタケ,シャコタンチクなどは,稈にさび(渋味)がありますので
落ちついた感じがします。
 △植え付け上のコツ
 深耕して堆肥などを施して下さい。移植時の根回しの大きさは,竹の直径の4倍とし
ます。竹林は密度に比例して静けさがでますので,密植して下さい。苗の根回しは,春
よりも秋彼岸前後がよいでしょう。
 モウソウチクなどの竹林は広さを感じさせるところに,直射日光を受けない半日陰,
肥料気の多い多湿でないところとします。
 △剪定のコツ
 斑など葉の美しいものは,葉が大きくなるように株元から伐採更新します。
 リュウキュウチクやヒメシマダケなどは,古稈から出た葉が細くてその立葉性が美し
いので,1年生の葉は除去して出し直しをさせます。
 トウチク,ナリヒラタケ,ヤシャダケは,7月頃新竹の枝先から7〜10pのところで
剪定します。
 モウソウチクは移植時に剪定します。
 △潅水のコツ
 植え込み用土壌には砂を混ぜて排水をよくして下さい。乾燥しているときは,水圧を
強めて全部の葉や稈を洗い清めるように潅水して下さい。
 △施肥のコツ
 竹園は1uに窒素5g,燐酸2g,加里3g,珪酸3gを3月と7月に分けて施します。
珪酸はホウライチクやダイサンチクなど南方系のバンブーに必要です。
 筍林や盆栽など何回も出し直しをさせるものについては,施肥と潅水を十分にして下
さい。
 
〈美しく見せる演出〉
 △脚線美を出す工夫
 竹園は足元から観賞されるものです。
 竹の基部と中程とは太さはほとんど変わりませんので,地面に接する部分の株張りを
しっかり作ることは,竹を美しく見せるばかりでなく,安定感を増すためにも必要なこ
とです。しかしどうしても地表付近が殺風景になりますので,必ず地表植物を植えて下
さい。
 地表植物は日陰でもよく育って,1年中緑の美しいものとします。イノモトソウ,ク
マワラビ,ヤブソテツなどのシダ類,オロシマチク,コチクなどの矮竹類,ジャノヒゲ
類,フッキソウ,キチジョウソウ類などですが,シダ,クマザサ,フッキソウなどは大
きすぎて足元を隠してしまいますので注意して下さい。
 一番よく似合うものとして,ジャノヒゲの矮正品のヒメジャノヒゲとアオイゴケをお
薦めします。
△数多く密に植え込む工夫
 モウソウチクなどの巨竹は直径40p前後の根鉢をつけて移植しますので,このままで
すとまばら過ぎて物足りなさを感じます。そこで2層に重ね植えなどしてできるだけ密
植します。この場合,多少斜めに植えられることもあります。
△緑の演出
 四季を通じて,色を変えない竹の緑を出すことに工夫して下さい。そのための隠し電
灯が効果的です。
 一方から眺めます竹園は,高さの違う偽竹を立てて,局所的,かつ立体的に照らしま
す。四方から眺められる竹園は,小型の水銀灯か,スポットライトで立体的に照らしま
す。
△適所に適種を
 ・自動車道の沿った庭には,ナリヒラダケ,トウチク,ヤシャダケ,アオナリヒラな
どがよく,ハチク,モウソウチク,特にマダケは公害に弱いです。
 ・広大な庭や,20m以上の高い建築物に沿った庭には,稈が太く背の高い,そして葉
が小さいモウソウチク,そしてハチクがよいでしょう。
 ・幅1m内外の狭い庭には,トウチク,ナリヒラダケ,アオナリヒラ,ヤシャダケ,
カンチク,シホウチク,ホウライチクが適しています。
 ・幅30〜40pのような狭いところにはホウオウチク,コマチダケがよいでしょう。
 ・石付き用の笹は,稈が短くて葉が大きく,冬のグリーンが美しく,落ちつきのでる
ものがよいでしょう。クマザサ,コスズモドキ,レイコシノ,コチクなどがあります。
 ・庭は狭くても他方が広場や道路などで開けているところは,遠目にグリーンの美し
いダイサンチクなどが似合います。
 ・屋敷が狭く,低い家によく似合いますのがトウチク,ナリヒラダケ,ヤシャダケで
す。
 ・節が高く芸術的な姿のヒメハチク,マダケ,ハチクは日当たりのよいところによく
あいます。
 ・玄関など身も心も落ちつきを必要とするようなところには,葉のグリーンの美しい,
先端の下垂するシホウチクが適します。
 
〈ビルの谷間の竹〉
 △ビル間の竹の効用
 日陰でも育ち,丈が高く,上から下まで緑葉をつけるもので,さらに室内への採光に
よいように葉が小さく,梢端から枝先や枝元まで平均して茂るものがいいです。モウソ
ウチク,続いてダイサンチクをお薦めします。
 なお,ビルの目隠しにはモウソウチクがよいでしょう。
 
〈ビルの屋上の竹林〉
 大型のものではヤダケ,小型のものではオカメザサをお薦めします。スズダケは乾燥
と風を嫌いますので不向きです。
 ・北と西側に2m位のコンクリート壁が必要です。また台風襲来のときは稈と葉をしっ
かりとくくって下さい。
 ・土壌の厚さは25〜30pとし,粘土やピード(腐植質)を入れ,朝夕2回地面と葉に
たっぷりと潅水します。
 ・筍どきには,朝昼夕の3回潅水して下さい。
 ・新稈が生長してほぼ固まった7月下旬に,2年生の古稈を伐採して1年生の直稈と
交代させます。
 ・施肥は3月と7月に行います。
 ・7月下旬に新稈についた灰白色の竹の皮を剥ぎますと,数日後に目の醒めるような
真っ青になります。
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