05a 竹文化〈竹文化〉
 
〈文化遺産として〉
 △馬連バレン
 馬連は,木版に紙を載せ,紙にまんべんなく墨がつくように紙の上(紙の裏地)をこ
する道具です。
 馬連は,はじめバレンの細根を用いて刷毛としたといわれていますが,その後改良さ
れて竹の皮を裂いて細い縄としてこれを渦状に巻き,円い板を添えて竹の皮で包んだも
のです。竹の皮はカシロダケ(皮白竹)といってマダケの竹の皮の黒斑のないものがい
いとされています。これは柔軟性が最も大きく,強靭だからです。
 
 △篠懸スズカケ
 篠懸は,奈良県大台が原大峰山オオミネヤマの山伏が登山修行のとき,雨霧を防ぎ,2〜3
mにも及ぶスズタケの硬い葉で手足の傷つくことを防ぐために着たものです。
 
 △竹簡
 竹簡は,中国で105年に紙が発見される以前に用いられた書写材の一つです。竹簡は,
バンブーの節を切り落とし,長さ20〜50p,幅数pに揃えて切って札をつくり,これに
一行書きします。札の上端,又は両端に穴をあけて革紐などを通して点綴テンサツしたもの
を策とか冊といいます。
 わが国では木簡は見つかっていますが,竹簡は発見されていません。
 
 △エジソンと日本の竹
 明治12年,エジソンが白熱電球の実験中,その発光体として使用した炭素は,塵捨て
場で焼け残った炭化した日本産のマダケの団扇の骨でした。
 
 △鯉のぼり竿
 竿の長さは,鯉のぼりの長さの1.5倍程度です。マダケやモウソウチクの青竹がよく,
枯れると弾力がなくなって折れやすいです。
 
 △継ぎ竿
 継ぎ竿の産地としては,埼玉県川口市や和歌山県橋本市などが有名です。     
 継ぎ竿は5〜6本を継ぎますが,細い先端はマダケを細く削ったヒゴか,ノホテイを
用います。2〜3番目はスズダケ(高野竹),4番目以下は次第に太くなりますのでヤ
ダケ,ときに5番目にメダケを使うときもあります。
                                            
 △桂離宮の竹の利用度
 桂離宮の,正面入口に立ちますと,竹垣は左右に延々と伸び,縦に巨竹を,横にモウ
ソウチクの小枝をあしらって力強い簡素な美しさを表現しています。桂川の流れに沿っ
た左岸には,マダケを生きたまま曲げて作った生垣,この生垣はマダケの枝条が美しく
おおらかな曲線をつくり,盛り上がったじゅうたんのように逞しい生命力を内蔵してい
ます。その美しさにまず圧倒されます。
 一方,屋敷内に入りますと,簡素ながら美しい御幸門ミユキモンで,この屋根裏の繊細な
押さえ竹,屋根には強く,どっかり乗った太い飾り垂れなど,太さが部位に応じて変わ
っています。ここの門をくぐりますと,書院の姿が見えますが,檜皮ヒカワ葺の竹釘,廊
下の天井の桁と竹釘,竹の窓,それに竹桶が見事な建築の美しさを醸し出しています。
続いて新御殿の前に立ちますと,床下の背高の竹格子を使った清潔さに溢れる美しさが
あります。御幸門の仕切り塀を飾った竹の押さえの利いた土塀,竹天井の押さえの利い
た山上のまんじゅう亭など,竹の巧妙な使い方は,ただ感動の一語に尽きる日本建築の
美しさです。
 松葉亭を覗きますと,すすけた竹の蓮子窓,下地窓など,侘びで囲まれた小座敷から,
突き上げの月光窓には,縦横に古びた竹の幾組かが乱雑に混じっているのに,静寂と明
るさが漂っています。
 蛍池の路地を歩きますと,敷石に沿って割竹を曲げて作った弱々しいたけ垣の繊細さ
が,美しさをいやが上にも引き立てています。
 また,峠の茶屋の賞花亭の高さ3mにあまる大きく丸出しにした壁骨を開いた窓の趣
向も,明るくて面白いです。さびた竹,苔むした水鉢の環境など,一層の風情を添えて
います。
 月波楼へ入りますと竹の桶,濡れ縁の丸竹の四角な竹の窓,天井の細い竹でススキの
茎を押さえた軽快な美しさは,草屋根の陰気さがなく明るいです。いま,濡れ縁の前に
立って,敷き詰めた竹を眺めていますと,ほぼ等しい竹が芽のある側を横にして並び,
節の位置の違いは,一見乱雑なようですが,節の一つ一つが集まってとても美しいです。
縦と横のアンバランスがかえって全体としての豊かな調和を生み出しています。
 桂離宮全体を見学していえますことは,竹の桶が多く,とかく陰気になりやすい萱葺
きの室内を,明るく静寂にするために,いろいろな形式の竹窓が多く,桶とともに,実
用的な必要を満たしていると同時に,見事な建築の形式をなしていることです。
 
〈竹の伝承〉
 △白と黒
 白と黒の違いです。
 
         白               黒
 
高知の竹材業者 白とはハチク材         黒とはマダケ材
竹材の油抜き  ハチクは真っ白に乾き上がる   マダケは黒味が残る     
 
京都の竹材商  硬い良材を白といい       軟材をアオコという           
 
筍の味     ハチクは皮が薄紫色で美味しい  マダケは皮に大きい黒斑ができ苦
                        みがある
 
        白い丸々とした紡績形で,中央部  黒味で株元が太く味のえぐいもの
        の著しく太いものをシロコという をクロコという                
 
        土中のものは黄白色       砂質土壌や,地表に出て日が当た
                        ると黒味がかる
                        黒味とえぐ味のホモゲンチジン酸
                        とは平行して表れる
 
        京都産のものをシロコという    東京辺りの火山灰産の黒いものを
                        熊という
                        熊はアクが強く肉がしまって男性
                        的で水分が少なく,しなびること
                        が少ないので遠方へ輸送しても味
                        が変わりません
 
                          参考 「竹」法政大学出版局

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