04 竹文化〈竹の味〉
竹文化〈竹の味〉
〈筍の味〉
△デミョウコサンカラモソ
鹿児島地方は竹の産地ですので,春の台所はいろいろ賑やかです。この地方の諺に「
デミョウコサンカラモソ」というのがあります。デミョウとはダイミョウチクの転でカ
ンザンチクの方言,コサンはコサンチクのことでホテイチクの古名,カラはカラダケの
ことでハチクの方言,モソとはモウソウチクのことです。これは筍の美味しい順に言っ
たものです。
このデミョウよりも,東北地方などのネマガリダケの筍の方が,優るとも劣らない美
味しい味ともいわれています。
△メンマ
ラーメンなどに入れるメンマ(支那竹)はマチク(麻竹)は,まず筍を剥皮,切断,
続いて蒸し,さらに塩漬けにしてから1ケ月間密封して発酵させます。発酵によって豊
かな香りと味が滲み出してきます。それを晴天の日に取り出して手で裂き,天日乾燥し
て保存します。マチクはバンブーの一種で台湾が原産地です。ホテイチクの代用品もあ
ります。
△缶詰のカビ
筍の缶詰にできるカビ状の白い小塊物は,アミノ酸の一種チロシンです。これは缶内
の温度が低いためにチロシンが水に溶けずに固まったものです。筍の味はチロシンで,
缶詰にして味が落ちるのは,このチロシンが溶出してしまうからです。
〈笹葉の香り〉
△笹葉のお国自慢
・笹団子:越後新潟など裏日本ではチマキザサの葉に包んで笹団子を作ります。笹葉
に包みますと数日間は軟らかく食べられます。
・高田の笹飴:越後などでは,夏の終わりの笹葉を採取して乾燥させ,翌早春に,釜
で煮て柔らかくした水飴をその笹葉に垂らして二つに折って笹飴とします。
・アズキを煮る:秋田ではアズキを煮るとき,その鍋に竹の皮又は笹葉を入れます。
これらを入れますと早く煮えて腐りが遅いといわれています。ことにチマキザサの生葉
が一層効果があります。東北地方では,おめでたいときは関西のように寿しなどはしな
いで,盛んに赤飯をつくります。
・このほか北海道ではタラコや塩サバの樽詰めにネマガリダケの葉を敷き,富山など
の鱒ずしはチマキザサの生葉で包んだり,また,ビクの中の川魚の臭みをクマザサ類の
葉で消したり,タクワン漬けにもチマキザサを入れます。チマキザサは強精剤として古
くから知られており,漢方薬として中風,高血圧,また笹茶や笹テンプラとしても食さ
れています。
チマキザサの葉にビタミン類,ことにKが多量に含まれていますので,ビタミンの抗
菌作用が殺菌を行い,食物の腐敗を防止しているほか,緑色が濃いですので高単位のク
ロロフィルを内臓するためです。
△笹団子(粽6470)
笹粽チマキは糯モチ米の団子をチマキザサの葉に包んで三角形にして蒸し,黄粉キナコなどを
つけて食べます。また,餡を入れたヨモギ団子を作り,笹葉に包み両端をイグサで捲い
て,たすきがけにして真中で結び,蒸し上げたものです。いずれも笹葉の香気が団子に
うつって風雅な味になります。ヨモギの代わりにヤマボクチの葉を入れる場合がありま
す。
このほか京都の祇園粽や鹿児島の灰汁アク粽などがあります。
△竹の皮と食品
・竹の皮巻き団子:モウソウチクの竹の皮に米,又は麦の粉を練って包み,せいろう
で蒸した端午の節句団子です。
・あめん皮:裏日本ではマダケの竹の皮に飴のほか,握飯,煮つけものなどを包みま
す。
・鬼の手こぼし:福岡県八女ヤメ郡では節句などの粽は,粳ウルチ米の粉を練って竹の皮
に包んでゆでます。この餅の大きさが鬼の手ほどもあり,醤油をつけて食べます。
・香味焼き:豚肉や生パン粉,香辛料などを炒めたものを竹の皮で包んで,焦げるま
で天日で焼きます。
・竹の皮焼き:ヒラメの縁側などを竹の皮に包んで網焼き風にします。
〈竹稈の味〉
△竹と酒
神代のはるか昔から竹筒で酒を仕込んだり,酒の防腐剤としてクマザサの葉を用いて
きました。
△竹酒―カッポ酒
竹筒に酒を入れて焚火で燗をしますと,新竹から竹の油,クロロフィル,ビタミンK
などが滲み出て,いわゆるこくのある酒となります。青竹は一年生のもので,ハチクが
優れ,続いてマダケ,モウソウチクがいいです。
△癌封じの竹酒
奈良の名刹大安寺の6月5日の竹酔日チクスイジツには,竹供養などの行事の一つとして
竹酒がいただけます。「無病息災から癌封じへ」として人気があります。
〈実の味〉
△竹の実の味
・竹の実:竹類はほとんど結実しませんが,笹類ではチマキザサ,チシマザサ(ネマ
ガリダケ),ミヤコザサ,スズダケなどのクマザサ類,メダケ,ネザサ,アズマネ
ザサ,カンザンチクなどのメダケ類等が結実します。
・採取法:完熟期に大きい笊を受けておいて,そこへ打ち落として集めます。
・実の味:淡泊といわれていますが,実ジツのところまずいです。
参考 「竹」法政大学出版局
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