31b 川魚料理の四季
 
ティラピア
 形態:最大全長25p。成熟した雄は体が黒ずんで背鰭の縁が赤くなるもの,黒ずんだ
  銀色に不明瞭な横縞があるものなどがあります。稚魚には背鰭軟条部に1黒斑があ
  ります。
 生態:アフリカ(ナイル川とその周辺)原産のため低温に弱く,日本での分布は小笠
  原,沖縄のほか,各地の温泉の用水路などに限られます。雑食性で,水草,小魚,
  ミミズ,小型甲殻類などのほか,腐った植物や水垢までも食べます。繁殖は水温が
  20度以上なら一年中可能で,雌は卵や仔魚を口内に入れて孵化,哺育する習性があ
  ります。
 近縁の魚:モザンビカ,ジリー,ニロチカの3種が移殖され,このうちモザンビカが
  最も野生化しています。最も養殖の盛んなものはニロチカで,チカダイ,イズミダ
  イなどの名で市場に出回っています。
 調理:身の性質も調理法もタイと同じです。揚げもの,蒸しもの,煮もの,焼きもの
  などにして食べます。
 
テナガエビ
 形態:体長10p。その名の通り雄の第2肢は体長の1.3〜2倍になり,雌はさほど長く
  はなりません。体色は普通淡褐色です。
 生態:本州以南の河川,湖沼に分布し,特に溜まり水や流れの緩やかな河口付近に多
  いです。夜行性で餌は主に底生小動物や小魚,6〜7月頃が産卵期です。
 近縁種:南日本にはミナミテナガエビ,沖縄にはコンジンテナガエビ,オニテナガエ
  ビ,ヒラテナガエビなどがいます。
 調理:から揚げとし,丸のままよく揚げ,揚がり際にパラパラと塩を振り掛けます。
  大きいものは鬼殻焼きにします。
 
ナマズ
 形態:最大全長50p。大きな口に小さな目,縦扁した頭部,長い臀鰭などその姿は有
  名で,成魚には長短2対,幼魚期には3対の口髭があります。
 生態:日本各地,朝鮮半島,台湾,アジア大陸東部の河川,湖に分布し,普通流れの
  緩やかなところや水草の茂ったところに棲みます。夜行性で昼間は水底に潜んでい
  ますが,夜になりますと餌となる魚やカエルなどを求めて動き回ります。5〜6月
  頃,ごく浅い水田や小川で産卵します。
   地方名は,ザシン(富山),チンコロ(東京)などです。
 近縁の魚:琵琶湖には本種以外に,日本産ナマズ属3種のうち,最も美味とされてい
  ますイワトコナマズ,最大全長1mを超えるビワコオオナマズなどがあります。
 調理:寄生虫の心配がありますので,刺身では食べません。水飴を用いたあめだき,
  天ぷら,蒲焼き,フライ,蒸し煮,マトロットなどがよいでしょう。
 
ニゴイ
 形態:最大全長45p。体は細長く,吻がや長く尖ります。背鰭第1鰭条は棘状となり
  ます。産卵期の雄には追星が現れ,体色は紫黒色,口髭は1対です。
 生態:北海道,四国太平洋岸,九州南部を除く日本各地の平野部の河川や湖に棲みま
  す。餌は主に底生小動物,4〜6月頃,河川中流域で産卵します。
   地方名は,キツネゴイ(大阪),キョウシラズ(琵琶湖),サイ(東京,琵琶湖,
  水戸,仙台),セイタ(東京)などです。
 近縁の魚:同属のズナガニゴイは体,背鰭,尾鰭に不規則な斑紋があり,吻がニゴイ
  よりも長く体形も細く,砂中に潜る性質があります。
 調理:春が旬で身の締まった魚です。淡水魚の泥臭さはありますが,刺身,洗い,天
  ぷらなど,コイと同じように食べます。
 
ニジマス
 形態:最大全長80p。体色に多数の小黒点があり,約15p以下の未成魚には8〜12個
  のパーマークが見られます。これは成長とともに消失し,代わりに鮮やかな赤紫色
  の太い縦帯が現れます。
 生態:北太平洋沿岸とその周辺の河川が原産地で,1877年に日本へ移殖され,北海道
  西別川,摩周湖など数カ所で定着しています。自然状態での餌は主に昆虫類,小魚,
  産卵期は12〜3月,死ぬまで数回産卵します。
   ニジマスの名は一生を淡水域で過ごす河川型に与えられた呼称で,これに対して
  サケのように海へ下る降海型をスチールヘッドと呼びます。
 近縁の魚:ブラウントラウトはヨーロッパ原産のニジマス属魚類で,カワマス卵に混
  入して日本へ移殖されました。虹色縦帯はなく,普通やや大きめの朱点が黒点に混
  じって体側に散在します。現在日光中禅寺湖,山梨県本栖湖,箱根芦ノ湖などで繁
  殖しています。
 調理:身はニシンに似た感じで,あまり強くありません。刺身はぬるっとして美味し
  くありませんが,塩焼き,天ぷら,フライ,ムニエル,グラタン,オーブン焼きな
  どいろいろ調理して食べられます。
 
ヒメマス
 ※ヒメマスはベニザケの陸封型のことであり,降海型であるベニザケにアジア,北ア
  メリカ両大陸の北太平洋全域に分布します。
 形態:最大全長48p。未成魚は銀白色ですが,産卵期を迎えた成魚は背面と各鰭が緑
  褐色,他の部分は紅色を呈します。
 生態:日本における天然分布は北海道阿寒湖及びチミケップ湖ですが,現在は阿寒湖
  から移殖されたものが支笏湖,十和田湖,中禅寺湖,芦ノ湖など日本各地の湖沼に
  生息しています。水温が低く深い湖が生活に適しており,季節に応じて深さの変わ
  る適温層を群れを為して回遊しています。
 調理:ニジマスと同じようないい魚です。
 
ブラックバス(オオクチバス)
 形態:最大全長50p。スズキによく似ており,科は異なりますが比較的近縁です。大
  きな口と体側中央に走る幅広い黒色縦帯が目立ちます。
 生態:原産地が北米で,1925年に日本へ移殖され,その後箱根芦ノ湖で繁殖が確認さ
  れ,現在各地の湖沼に放流され,定着しているところも多いです。
   他の小魚を食べ尽くすので,小規模な池では,無計画な放流は控えるべきでしょ
  う。
 調理:スズキそっくりの身をしていますが,寄生虫の心配がありますので刺身では食
  べません。塩焼き,煮つけ,ムニエル,オーブン焼き,茹で煮などにして食べます。
 
ブルーギル
 形態:最大全長25p。ブラックバスと同じサンフィッシュ科に属し,鰓蓋上部の1黒
  斑と体側にある7〜10本の暗色横帯が特徴です。ただし,縞は成魚では不明瞭なる
  ことがあります。
 生態:北米原産で,日本へは1960年伊豆半島の一碧湖などに移殖され,現在はほぼ日
  本全国に分布しています。ブラックバス同様,害魚のレッテルを貼られている地域
  も多いです。
 調理:ブラックバス同様,塩焼き,煮つけなどにして食べます。
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