31a 川魚料理の四季
 
ウナギ
 形態:最大全長は雄で70p,雌では1.3mに達します。体表は粘液で覆われ,皮下に微
  小な鱗を持ちます。頭長が背鰭と腎鰭の両起点間よりも大きいことが特徴です。
 生態:北海道南部以南,朝鮮半島,中国南部,台湾,ベトナム北部に分布し,北海道
  は北限にあたります。河川全域,湖沼及び内湾に棲み,夜行性のため昼間は岩の隙
  間や泥中に潜んでいますが,夜になりますと活発に動き回って小魚,甲殻類などを
  捕食します。産卵に関しては未だ謎が多いです。秋の増水時に沢山の親魚が降海し,
  南西太平洋付近の深海にあるとされる産卵場所へ向かいます。孵化した仔魚は,透
  明で柳の葉に似た形をしており,これをレプトセファルスと呼びます。10pを超え
  る頃,幼生は変態して針のように細く透明なシラスウナギとなり,10〜5月にかけ
  て群れをなして河口に押し寄せ川を上ります。
   アオ(東京),アオバイ(岡山),スベラ(長野)などの地方名があります。
 近縁の魚:全長1.5mを超えるオオウナギは,頭長が背鰭と腎鰭の両起点間よりも小さ
  いことでウナギとは区別できます。南日本,台湾,フィリピン,南太平洋,アフリ
  カ東部に分布します。
 調理:白焼き,蒲焼き,肝吸い,赤ワイン煮,うま煮にして食べます。
   うま煮は,ブツ切りにして網で焼いて骨を抜き,器にウナギと煮汁を八分目入れ,
  蒸し器で30分程蒸し,針生姜を天盛りにして食べます。
 
オイカワ
 形態:最大全長16p。雌よりも雄が大きくなります。未成魚と雌は銀白色一色ですが,
  雄は成熟しますと体側に緑色の不規則な縦帯が現れ,各鰭と腹部は赤味がかります。
  体色は産卵期になりますと更に濃さを増し,頭部,体側などに追星が現れ,臀鰭シリ
    ヒレの形も変化します。
 生態:日本では,主に本州中部以南,瀬戸内海側の四国,九州に分布します。浅くや
  や流れのある河川の中・下流域,池,湖などに棲みます。雑食性で,活発に泳ぎ回
  りながら昆虫類,付着藻類などを食べます。5〜8月,流れの緩やかな砂底,又は
  砂泥底で産卵します。
   地方名は,アカジ,オハナカゴ(長野),アカハラ(栃木),ハエ(関西),ヤ
  マベ(関東)などです。
 近縁の魚:同属のカワムツは,外形こそ似ていますが体色は地味で,雌雄ともに黄褐
  色の体に暗青色の1縦帯があり,産卵期には腹部が赤くなり追星が現れます。河川
  上・中流域の水が淀み,水生植物の繁ったところを好み,表層近くに殆ど静止した
  まま,流下昆虫を捕食します。中部以西から九州に分布しますが,護岸工事のため
  減少してきています。
 調理:ウグイと同じような魚ですが刺身は美味しくありません。フライ,天ぷらなど
  にします。
 
カジカ
 形態:最大全長11p。体色は普通褐色で,不規則な暗褐色斑があります。
 生態:北海道南部,本州,四国,九州の水の澄んだ河川の礫底に棲みます。餌は主に
  水生昆虫です。
   サンヤス(和歌山),ハウト(九州)などとも呼ばれます。
 近縁の魚:福井県九頭竜川の名物として有名なカマキリもこの仲間です。最大全長25
  p。鰓蓋に4本の棘があり,うち1本は強大で鉤形に曲がります。成熟した雄は産
  卵期になりますと口内が朱色になります。日本特産種で一部地域では天然記念物に
  指定されています。本州中部以南,四国,九州の河川に棲み,水生昆虫,小魚を食
  べます。霰に降る冬が旬のためアラレガコと呼んだり,鰓蓋の棘にアユを引っかけ
  て捕食するということからアユカケと呼ばれます。
   北海道に多いハナカジカは最大全長15p。形,生態ともに前2種に似ていますが,
  本種は食用にされません。
 調理:美味しい淡水魚です。すずめ焼きやカジカ酒は有名で,焼いたり煮たりして食
  べます。
 
コイ・マゴイ
 形態:最大全長1m。口髭は2対,体高が低く体幅の厚い野生種のほか,ヤマトゴイ,
  ドイツゴイなどの食用品種,錦鯉と呼ばれる観賞用品種があり,色,形とも異なっ
  た特徴を持ちます。
 生態:日本各地の河川,池,湖沼に分布しています。雑食性で,主な餌は底生小動物
  です。冬は水底の泥中に潜って冬眠し,水が温む4〜7月頃,水草に産卵します。
 調理:大抵のコイは泥臭いので,洗いながら湯洗いにしたり,味噌炊きにしたり,生
  姜やゴボウと一緒に煮たりします。
   コイは鱗を取らずに頭を落とし,また苦玉ニガタマ(胆嚢)を潰さないように内蔵を
  取り除きます。
   洗い,鯉コイこく,衣揚げ,カレーあんかけ,中華風揚げ煮などにして食べます。
   鯉こくは,鱗も内蔵もそのまま,苦玉だけを取り除いて,筒切りにし,味噌を入
  れて数時間煮ます。上がる1時間程前にささがきコボウを入れます。
 
ソウギョ
 形態:最大全長2m。やや細身で頭部が丸みを帯びており,口髭はありません。体は銀
  灰色です。
 生態:アジア大陸東部の原産で1877年に移殖されました。利根川水系,江戸川水系な
  どに定着,雑食性ですが,水生植物を好み,1日に自重の2倍食べます。
 近縁の魚:アオウオは吻がやや尖っている他は,色,生態ともにソウギョによく似て
  いるため,ソウギョの種苗に混じって輸入されたらしいです。
 調理:あまり美味しくなく,寄生虫がいることもありますので生では食べません。塩
  焼き,煮もの,蒸しもの,あんかけもの,中華風煮つけなどにして食べます。
 
タウナギ
 形態:最大全長80pでウナギに似ています。。鱗はなく,胸鰭,腹鰭も失われ,背鰭,
  臀鰭,尾鰭も表皮が弛んだような痕跡的な皮褶があるのみです。目も鰓も可成り退
  化しています。
 生態:南日本,朝鮮半島,中国,台湾,東南アジアの湖沼や水田に棲みます。餌は小
  魚や小型甲殻類で,低温に弱く,本州では冬の間泥中に潜り込んで越冬します。口
  先を水面に出して空気呼吸を行います。別名カワヘビともいいます。
 調理:ウナギに準じます。脂の強い魚です。
 
タナゴ
 形態:ヤリタナゴは最大全長10p。1対の口髭はやや長めで,体側の暗青色縦帯は細
  くて不明瞭であり,背鰭の鰭膜に紡錘形の黒斑が並んでいます。
   タイリクバラタナゴは最大全長10p。ニッポンバラタナゴの亜種とされており,
  非常によく似ていますが腹鰭前縁が白いので識別できます。
 生態:ヤリタナゴは,本州,四国,九州北部の平野部の河川,湖沼に分布し,日本の
  タナゴ類中,最も普通に見られる種類です。雑食性で主な餌は水生昆虫と付着藻類
  です。マツガサガイの鰓葉内に輸卵管を差し込んで産卵します。
   タイリクバラタナゴはアジア大陸東部の原産で,1942年にソウギョ種苗に混入し
  ていたのが発見されました。今日では日本各地に見られ,4〜10月にカラスガイ,
  タガイ,イシガイなどの鰓葉内に産卵します。
   関東ではヤリタナゴをマタナゴ,タイリクバラタナゴをオカメタナゴともいいま
  す。
 近縁の魚:この仲間には天然記念物としてよく話題に上るミヤコタナゴ,イタセンパ
  ラ,最大全長15pと大型になりますカネヒラなどがおり,どれも産卵期には美しい
  婚姻色を呈するため,多くの愛好家がいます。
 調理:スズメ焼きが有名で,串に刺して焼き,甘辛く佃煮風に煮ます。
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