31 川魚料理の四季
 
               川魚料理の四季
 
                    参考:中央公論社発行「暮しの設計NO.159」
 
                    釣ったり,釣られたりの川魚釣りですが,
                   もし運良く釣れましたら,鮮度を落とさない
                   ようにして持ち帰り,早速料理してみましょ
                   う。
                    夏が旬のものは,アユ,ヤマメ,イワナ,
                   ウナギ,コイなどです。
                    冬が旬のものは,ワカサギ,マブナなどで
                   す。               SYSOP
 
アマゴ
 ※この種には河川型,湖沼型,降海型の3タイプがあり,そのうちの河川型をアマゴ
  と呼びます。
 形態:最大全長30p。体側のパーマークと呼ばれる楕円斑と,鮮紅色の小斑点がが目
  立った特徴です。
 生態:日本特産種で,伊豆半島以西の本州太平洋岸,四国,九州東岸の河川に分布し
  ます。餌は主に昆虫類,産卵は9〜11月頃,浅く流れの緩やかな礫底で行われ,親
  魚は産卵後も死にません。
   湖沼型はビワマスと呼ばれ,稚魚期の模様はアマゴに似ていますが,成長します
  と銀白色になり,最大全長も60pと大型になります。天然分布は琵琶湖のみとされ
  ていますが,放流事業によって現在では他の湖でも見られるようになりました。産
  卵期は10〜11月,付近の流入河川に入って行われ,親魚は産卵後死にます。
 調理:ヤマメに準じます。
 
アユ
 形態:最大全長30p。ただし,琵琶湖などで見られる湖沼型のコアユは12p止まりで
  す。上顎先端に突起があり,成魚は川底の石に付着した藻類を削ぎ落として食べる
  ための特殊な構造をした上下両唇を持ちます。体色は黄褐色で,胸鰭上方に1〜2
  黄斑のあるものが多いです。産卵期になりますと,全身が黒ずんで雄の腹部には赤
  色縦帯が現れます。
 生態:北海道南部から九州,朝鮮半島,台湾,華北等の河川の上・中流域,一部の湖
  に分布します。9〜12月にかけて河川の中・下流域の砂礫底に産卵後,親魚は死に
  ます。孵化した幼魚は海に下って冬を越し,翌年の3〜5月に再び川へ戻って成熟,
  産卵します。本種のように一年で世代交代をする魚を年魚といいます。稚魚期は群
  れを作って主に小型の甲殻類,水生昆虫などを食べますが,夏が近付くにつれて川
  底の付着藻類が繁茂し始めますと,両唇は鑢ヤスリ状になり,縄張りを作ってこれを食
  べます。
   一般にアイというほか,アイオ(広島),アイナゴ(和歌山,石川),アイノウ
  オ(秋田),シロイオ(熊本)などとも呼ばれます。また,琵琶湖では本種の稚魚
  をヒウオと呼び,盛んに獲って全国の河川,湖沼に放流するための種苗としていま
  す。
 調理:アユは内蔵を食べる魚ですので,鮮度を保ち,焼くときはなるべく腹を落とさ
  ないようにしましょう。
   表面のぬめりは濡れ布巾で押さえるようにして取り,大きいものは包丁の先で鱗
  を取ります。焼きもののときは腸から肛門にかけて軽くしごきますと糞が出ます。
   一般的な調理法は塩焼きで,腹開きにし,酒塩で洗って生干しにします。洋風で
  はワイン蒸し,茹でて冷製,ムニエルなど,落ち鮎アユは白焼きにして干し,煮びた
  しや甘露煮にします。
   白焼きの煮びたし,子鮎のから揚げ,鮎寿し,白子・真子・内蔵のうるか(塩辛
  ),素焼きにして田楽,干し鮎の焼きもの,クールブイヨン煮などをお薦めします。
   煮びたしは,隠し腹に切って内蔵を取り除き,塩焼きにして1〜2日陰干し,押
  し蓋をして番茶で煮て,後番茶を捨てて煮汁・砂糖・味醂・酒・醤油を入れて煮ま
  す。
 
イワナ
 形態:最大全長40p。体色や斑紋は地理的変異が著しく,模様の違いによって,ナガ
  レモンイワナ,ムハンイワナなどと呼び分けられています。
 生態:本州と四国の一部に分布しており,日本産淡水魚類中最も海抜高度の高い地域
  に棲みます。餌は小魚,昆虫など,産卵は10〜11月頃,比較的流れの緩やかな礫底
  で行われます。
 近縁の魚:エゾイワナは河川型で最大全長30p,アメマスと呼ばれる降海型では60p
  に達します。河川型は体側に大きめの白色斑が散在し,降海型は銀白色をしていま
  す。本州北部,北海道,千島,カラフト,シベリア,沿海州,朝鮮半島東北部,カ
  ムチャッカ半島などに分布します。日本では北海道の河川でごく普通に見られます。
   オショロコマは河川型で最大全長25p,降海型で60p。河川型には体側に鮮紅色
  の小斑が散在します。北太平洋のアジア,アメリカ両大陸とその流入河川に分布し,
  日本では北海道のみに分布します。
   そのほか,本州中国地方の一部にのみ生息し,天然記念物にも指定されています
  ゴギ,北米原産で奥日光湯の湖,長野県明神池などに放流されていますカワマスな
  どがいます。
 調理:内蔵は不味いので食べませんので,取り除きます。軽く塩をして油で揚げ,南
  蛮酢に漬ける南蛮漬け,化粧塩をした塩焼き,陰干しして素焼きした骨酒などをお
  薦めします。
   南蛮漬けは,薄塩して1晩おき,小麦粉をまぶして180度で二度揚げし,赤唐辛子
  などの入った南蛮酢に2〜3日漬けます。
 
ウグイ
 形態:最大全長45p。色,形の地理的変異が著しいですが,産卵期になりますと親魚
  には3本の赤色縦帯と頭部,背面に追星を生じます。
 生態:北海道,本州,四国,九州の河川全域と沿岸に棲みます。雑食性で餌は主に昆
  虫類,付着藻類,産卵は3〜7月頃,河川の浅い礫底に集まり,1尾の雌を数尾の
  雄が取り巻くようにして行います。
   地方名はハヤ(関東),アイス(東京),アカウオ(長野),イダ(中国,四国,
  九州),オゴイ(石川),アカハラ(仙台,日光,弘前,北海道)などです。
 近縁の魚:マルタウグイはやや大型で最大全長55p。産卵期の親魚には1本の赤色縦
  帯と追星が生じます。ウグイと異なり北日本に多く,河川の上・中流域には入りま
  せん。
   エゾウグイは最大全長26pとやや小型で,東北,北海道に多いです。産卵期でも
  雄だけ鰓蓋と胸鰭基部が赤くなるだけです。追星も雄だけに現れます。
 調理:清流に棲むイダ(九州地方の呼び名)から,下ってきて中流のウグイ,アカハ
  ラ,河口へきますとマルタと呼ばれます。
   イダは身が締まって刺身にしますと美味です。ウグイ,アカハラになりますと,
  天ぷら,塩焼き,フライなどに向き,マルタはあまり美味しくありませんが塩焼き
  や煮ものがよいでしょう。
[次へ進んで下さい]