07a 陸水散歩〈汚水と生物〉
△自浄作用の経過
川に棄てられた無機物は通常希釈されて流下しますが,有機物は微生物に食べられ,
微生物が異常に発生します。このような異常な状態は,例えばイトミミズやユスリカの
幼虫は河底に沈澱した微小の物質を,原虫は細菌や藻類を,ワムシは藻類や原虫を食物
として,特定群集の異常な増殖が防がれてバランスの保たれた新しい生態系を生み出し
ます。
・酸化分解:酸素の存在のもとに,好気性微生物が有機質を安定な最終産物にまで分
解します。しかし酸化分解は緩やかな経過をたどりますので,排水流入地点よりもある
程度離れた下流にきて自浄作用は衰えて酸欠状態になります。さらにそれを過ぎますと
自浄作用によって酸素の量が次第に増えて,川はもとの状態に戻ります。
・嫌気分解:河底や汚水による酸欠状態のところでは,有機物は嫌忌性細菌による無
気分解を受けます。これによって生ずるガスの70%はメタンですので,この分解をメタ
ン発酵とも呼びます。
△生物指数と指標生物
・生物指数:無脊椎動物を有機汚濁に耐える種類(種類数A)と敏感な種類(B)に
分けて両者の種類数を調べ,生物指数=2A+Bの式にあてはめ,この値が大きければ
その水域はきれい,小さければ汚れているとするものです。
・指標生物:腐水系ではイトミミズやユスリカの幼虫が重要ですが,微生物が特に顕
著ですので汚水菌について説明します。
・・ミズワタ菌:ミズワタ菌と硫黄細菌は強度汚水の代表的な指標微生物です。川や
溝の底に白い,ときには灰色や赤褐色(水酸化鉄)に汚れたデリケートな糸の房が流れ
にゆらいでいます。増殖には多量の酸素を必要とします。糸の質はもろく切れやすく,
この切片は粘着性が強く,魚網につくとなかなか除去できませんので漁民泣かせです。
・・硫黄細菌:流れの緩やかな下水溝の,黒色のヘドロの表面が白いヴェールで覆わ
れ,ところどころに大小の孔があいている状況で見られることがあります。水中に硫化
水素が欠乏しますとなくなります。
・・硫酸還元菌:硫酸塩から嫌気的に硫化水素をつくり,水底や底泥の酸素の欠乏し
ているところに棲みます。硫化水素は海水の有機汚染と無酸素状態のよい指標になりま
す。
△BODとCOD
・BOD(生物化学的酸素消費量):水中の可溶性有機物が好気性微生物によって酸
化分解を受けるときに消費される酸素の量をppm(1lの水が消費する酸素のmg数)で表
した数字で,基礎は生物現象にあります。完全酸化には炭素と水素では7〜10日,さら
に窒素では数百日を要しますので,普通20℃で5日間の分解に消費される酸素の量を標
準値とします。
BOD値と河水のきれいさ(標準/英王立下水処理委員会による)
5日間20℃のBOD値 河水の状態
1 very cleen
2 cleen
3 fairly cleen
4 moderately cleen
5 doubtful
10以上 bad
・COD(化学的酸素消費量):過マンガン酸加里などの酸化剤を汚水に加えて加熱
し,水中の全還元性物質を酸化するときに消費される酸素量をもって表す方法です。測
定が1時間以内で済み,BODとある程度比例関係を保ちますので,よく使われていま
す。
・BODによる第二次汚染:平地湖では,流入水量が少なくて,流入窒素や燐酸が多
いと,BODの値がそれほど大きくなくても,プランクトンや水草が増殖繁茂し,湖水
をどぶ池化します。
△汚水の浄化処理
・酸化処理:普通次の3方法があります。
・・散水濾床法:小石その他の濾剤を1.5〜2mの高さに積んで,その上から有機物排
水を滴下します。
・・活性汚泥法:有機物排水を撹拌などしますと,褐色の小塊(フロック)ができま
す。これに微生物集団(ヅーグレア)を吸着させ(これを活性汚泥といいます)て分解
させます。
・・ラグーン法:ラグーンとは沼のことで,浅い池に排水を貯え,池に発生した好気
性微生物によって酸化させます。
・嫌気処理:有機物自身の持つを酸素とって行う還元分解です。これは途中の段階で
止まってしまうことになりますので,専ら汲取し尿処理に用いられ,その後は活性汚泥
法か散水濾床法で処理してから,川に放流します。
参考 「川と湖の生態」共立出版
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