06a 陸水散歩〈環境・生物・生態系〉
〈生物の側の反作用〉
生物は,逆に環境を変化させる作用を持っています。表層に繁殖したプランクトンに
よる水の透明度や光の透過の低下,水草やプランクトンの遺骸が沈澱してできた有機泥
や骸泥,イトミミズの摂食耕運による湖底の無酸素化などです。
〈生態系の中のからくり〉
△生態系とは
生物と,空気や水,土地のような無生物的な環境とは,互いに作用し合って,一つの
有機的なまとまった構造をみせます。このような生物的な部分と無生物的な部分とが,
溶け合って,営まれる自然が生態系です。
△食物連鎖とエネルギー
生産者とは,例えば無機物(炭酸ガスや水)と太陽光線による光合成によって有機物
をつくるもので,消費者は,自分の身体をつくるためにそれらの有機物を消費し,また
分解者はこれらの有機物を分解することによって生活エネルギーを得ます。
△個体数と現存量のピラミッド
生産者である植物プランクトンが最も多く,消費者に至っては大形の魚ほど数が減少
します。
魚
動物プランクトン
底 生 動 物
底 生 植 物
植物プランクトン
可 溶 態 有 機 物 質
△生産性
ピラミッド模式図あるは程度,生物の現存量又は生物量(バイオマス)にも当てはま
ります。湖や川の生産性は,この現存量や生物量を測って知ることができます。生態系
の生産量は,生物群集と環境との相互作用によって,生体物質をつくりあげることです
が,実際には測定は非常にやっかいです。
△生態系からの生物物質の除去
生産力は,生態系からの生物物質の除去にも影響されます。人間による捕獲,動物の
移動,底質への栄養塩の蓄積,また施肥による生産量の増加分などが除去されることに
なります。
△敵関係と競争関係
異種個体群との間,同一個体群の中での敵関係,競争などが考えられます。
食べられたくないためにわざと厳しい環境に棲んだり,毒素を生産したりします。
オイカワとアユは棲み分けをして,互いに干渉しません。またカワムツ,オイカワ,
ウグイなどの遊泳性のコイ科の魚類は,同じ棲み場所にアユが1uに0.3尾以下のとき
は底生の付着模類を食べていますが,2尾以上になりますと昆虫類を食べるようになり
ます。
△共生
共生とは,同じ種類又は違った種類の個体が多数集まって行う生活法です。
・群生:有機的な身体の連絡を保って合体(コロニー)をつくる例があります。産卵
のためにサケが群れをつくって川を上るのも一種の群れとみることができます。
群生はその魚が単独で棲んだものよりも,外界条件に対する抵抗力が強くなる傾向が
あります。
・相利共生:アリとアブラムシのような関係です。水鳥の糞を食べて増えるプランク
トンと,そのプランクトンを食べて増える魚類,その魚類を食べる水鳥をいいます。
・片利共生:クジラやサメの体表につくコバンイタダキは,これによって移動の便宜
を得,タナゴはカラス貝の鰓に卵を産みつけてそこで孵化させます。
水草と水中動物の関係も,通常の場合片利共生の関係にあります。例外としては,植
物が密生し過ぎると物理的に魚は生息できませんし,食虫植物のタヌキモは稚魚を捕ら
えて殺します。
・寄生:養殖魚は細菌,かび,原虫,いかり虫などの寄生により大きな被害を受けま
すが,寄生者は宿主を殺すことはありません。
参考 「川と湖の生態」共立出版
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