22 そのまた小さなコドモ達〈菌類の起源〉
 
         そのまた小さなコドモ達〈菌類の起源〉
 
〈菌類の起源〉
 菌類の化石には,菌類の起源について有力な証拠を提供してくれるような例は含まれ
ていません。あるとすれば真核細胞の出現した先カンブリア紀の水中生物の化石の中か
らのはずです。しかし,化石には証拠はなくても,最近のマーグリスの真核細胞共生説
は菌類の起源について極めて有力な考え方を示しています。この説に従うと,菌類は植
物よりも動物に類縁の近い生物ということになります。
 一方,近年急速に進んだ核酸の研究によりますと,RNAの塩基(アデニン,グアニ
ン,チトシン,ウラシルなど)の並び方の似ている割合からみれば,担子菌類は褐藻に
近く,子のう菌類は紅藻に近いという結果がでています。今までの有力な菌類の起源の
説に藻類起源説がありましたが,マーグリスの説を取り入れますと,これはむしろ逆で,
担子菌類との共通祖先から葉緑体を細胞内に取り込んだ褐藻が分化,子のう菌類との共
通祖先からやはり葉緑体を獲得した紅藻が分化した,と考える方が妥当のようです。こ
の考え方に従うと,子のう菌類と担子菌類は別の祖先から進化してきた別系統の菌類群
であることになります。
 ゴイマンという有名な菌類学者は子のうと担子器は有性胞子を細胞内につくるか,外
につくるかという違いがあるだけでも本質的に同じ細胞(相同器官)であると考え,多
くの菌学者がこの説を支持してきましたが,現在は菌類の起源,系統(類縁が近いどう
か)についての考え方も大きく変わり始めたといってもいいです。
 鞭毛菌類や接合菌類の起源もどうやら子のう(嚢)菌類や担子菌類と別の祖先に由来
する可能性もあり,そこで菌類が多系統であるとの新しい考え方を発表した学者もいま
す。この考え方は,先程のRNAの塩基組成の似ている程度に基づく生物の類縁の遠近
の考え方と多くの部分で一致しています。
 
           参考 「キノコ・カビの生態と観察」築地書館発行 THE END
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