18 そのまた小さなコドモ達〈菌類の種類/不完全菌類〉
 
       そのまた小さなコドモ達〈菌類の種類/不完全菌類〉
                                       
〈不完全菌類〉
 有性生殖器官(完全時代)の知られていない菌はすべてこの菌にまとめられるのが原
則です。顕花植物の栄養生殖法によく似た無性生殖を行う菌が多いですが,栄養体だけ
しか知られていない菌類もいくらかあります。栄養体にはコウボ型,カビ型,キノコ型
があります。外見ではハラタケ目のキノコに見えても,担子器がまったく見られないよ
うな種類が熱帯地方へ行くと見つかりますが,このような菌類も不完全菌類として扱わ
れています。しかしながら,鞭毛菌類や接合菌類の無性生殖器官でしょうと予想がつく
器官だけを持つ菌や,冬胞子時代が見つからないがサビ菌であると予想できる菌などは,
不完全菌類から除外して,それぞれ完全時代による分類の体系の中へ組み入れて取り扱
っています。
 不完全菌の分類は,コウボ型(不完全酵母類),カビ型(不完全糸状菌類),キノコ
型(分生子果ブンセイシカ不完全菌類)といいます。外形による区分が現今でも行われてい
ます。しかしながら,分生子をつくる菌については,分生子形成法が完全時代の特徴と
強い相関関係を示すことが明きらかになってきました。しまり,イモをつくる植物は多
くはサトイモ科やヒルガオ科に属するといった相関関係が菌類でもみられます。この性
質によって,より自然な分類が行える見通しが立ってきました。この分野での研究は,
椿啓介博士らによる日本での研究が世界をリードしています。
 不完全菌類には,アオカビ,コウジカビ,イネイモチ病菌(いずれも子のう菌として
も扱われます)などのほか,人体寄生菌も含んでいるカンジダ属のコウボ,ミズムシ菌
(トリコフィトン属,コウボとカビの中間のような性質を持ちます)などがあります。
 
〈地衣類について〉
 地衣類は,ラン藻や緑藻と菌類との共生体です。特定の藻類と特定の菌類とが共同体
としての地衣体をつくり,その共同体に一定の形態・組織構造・生理活性がみられます
ので,植物分類学の一般的な方法が共同体としての地衣類にも適用できます。そして,
他の生物と同じ意味内容で種といってよいかどうかは別問題として,特定の性質を持つ
それぞれの地衣に,特定の名前を付けることができます。共生藻類の種類は全地衣類を
通じてもそれ程多くはないそうです。一方,共生菌類の方は,現在認められている地衣
類の種の違いに平行して,共生菌類の種が異なるといいます。このことに原因するので
しょうか,地衣類の種の特徴は,共生菌類の種の違いに由来する部分が多いそうです。
以上のような事情なので,地衣類を菌類の分類体系に組み込むことも,さして不都合で
はありません。
 地衣類を構成する菌類は,大半が子のう菌亜門盤菌綱に属しますが,その他核菌綱,
二膜性子のう菌綱,担子菌亜門菌蕈綱ヒダナシタケ目の菌類や,さらには不完全菌類も
あります。
 
               参考 「キノコ・カビの生態と観察」築地書館発行

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