17 そのまた小さなコドモ達〈菌類の種類/担子菌綱〉
 
       そのまた小さなコドモ達〈菌類の種類/担子菌綱〉
 
〈担子菌亜門〉
 担子菌の特徴は,細胞の核の融合と減数分裂の行われる細胞としての担子器を持つこ
と,そして担子器から通常4個の担子胞子がつくられることです。菌糸には単相の一次
菌糸と,和合性の一次菌糸が接合して二つの核を持った状態の2核性の二次菌糸とがあ
ります。二次菌糸には,担子菌特有の嘴状シジョウ突起を持つ種類が多いです。しかし,
これを持たない種類もあります。サビ菌やクロボ菌のように子実体(単子器果)をつく
らないグループもありますが,多くの種類はキクラゲ状,シイタケ状,ホウキタケ状,
コウヤクタケ状,サルノコシカケ状,ショウロ状などの子実体をつくります。
 単子器には,多室のものと単室のものがあります。多室単子器と,丈夫で肥大した小
柄を持つ単室単子器を併せて異単子器と呼び,それ以外の単室の単子器を同単子器と呼
んでいます。子実体をつくる菌群については,子実層(子実体の単子器を生じる部分)
が最初から裸出している種類(裸実ラジツという,ヒダナシタケ目及びハラタケ目の大半
),最初は裸出していないが,担子胞子の成熟以前に裸出する種類(半被実という,ハ
ラタケ目のハラタケ属やテングタケ属),及び担子胞子の成熟以前に子実層が裸出する
ことのない種類(被実という,腹菌綱)が区別されます。担子菌亜門の分類は,これら
の性質に基づいて行われます。
 △半担子菌綱
 この綱の菌は子実体(担子器果)をつくりません。担子器は,細胞の核の融合を行う
場所としての前ゼン担子器と,減数分裂を行う場所としての後コウ担子器に区別できる場
合がありますが,この綱では,前担子器は厚膜の休眠胞子です。この綱にはサビ菌目と
クロボ菌目が入れられています。サビ菌目では,前担子器は厚膜で冬胞子と呼ばれます。
 冬胞子世代に続いて小生子ショウセイシ,柄子ヘイシ,銹胞子,夏胞子などの胞子世代がてき
て生活環をつくっています。
 クロボ菌目では,前胞子器は厚膜のマクロボ胞子です。これら二つの目の菌類は,い
ずれも植物に寄生してサビ病やクロボ病を起こします。サビ菌では,異種寄生性が知ら
れています。培地上で生育させることは極めて難しいです。最近ある研究者がサビ菌の
1種の培養に成功したと伝えられています。
 △菌蕈綱キンジンコウ
 多くの種類は子実体を持ちます。しかし,培地の上では子実体はできないのに,担子
器だけはできる種類もあるといいます。この例のように,本来は子実体を持つ菌類が,
生育条件によっては子実体をつくらない場合は,子実体をつくる菌類として扱ってよい
です。担子器は裸実か半被実で,前担子器は厚膜の胞子にはなりません。
 この綱は,担子器が多室か単室かによって,多室担子菌亜綱,単室担子菌亜綱の二つ
にまず分けられます。
 多室担子菌亜綱でよく知られていますキノコにキクラゲがあります。この亜綱の多く
の種類は植物に腐生しますが,ほかの菌類に寄生するシロキクラゲ目の小型の種類や,
カイガラムシに寄生するモンパ菌(モンパ菌目,モンパ菌科)などがあります。
 単室担子菌亜綱には,子実体を持たない菌類と子実体を持つ菌類があります。子実体
を持たない菌類は,子実体状の菌えいをつくるモチ病菌目だけです。ツツジの葉が白っ
ぽく多肉質になる病気は,ツツジモチ病菌が起こします。
 子実体をつくるグループには,サルノコシカケの仲間(ヒダナシタケ目)や,シイタ
ケ,マツタケ,シメジなとを含むハラタケ目(マツタケ目とも呼ばれます)があります。
多くの種類は植物に腐生しますが,マツタケのような菌根菌や,ナラタケ病を起こして
多くの樹木を枯死させたり,木材を腐朽したりするナラタケのような寄生菌もいくらか
あります。
 △腹菌綱
 担子器は同担子器です。子実体は被実ですが,ハラタケ目のテングタケやフウセンタ
ケと類縁が極めて近いと考えられる種類もあります。
 この綱には,主に春の松林の地面に生える食菌のショウロ(ヒメノガスタ目,ヒメノ
ガスタ科),直径50pに達するオニフスベ(ホコリタケ目,ホコリタケ科)や,美しい
レースのマントのような付属物を持つキヌガサタケ(スッポンタケ目,スッポンタケ科
)などがあります。
 
               参考 「キノコ・カビの生態と観察」築地書館発行

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