15 そのまた小さなコドモ達〈菌類の種類/藻菌綱〉
そのまた小さなコドモ達〈菌類の種類/藻菌綱〉
〈菌類の種類〉
菌類は,次の藻菌ソウキン綱,子のう(嚢)菌綱,担子菌綱,不完全菌類の4グループに
分類されてきていす。
なお,従来の分類では,古生菌コセイキン綱という分類群が出てくることがあります。こ
れは,藻菌類の一部であるツボカビ綱及び現今では変形菌として扱われますネコブカビ
目を合わせて設けられていた綱です。
〈藻菌ソウキン綱〉
△鞭毛菌亜門
無性生殖は,遊走子嚢ユウソウシノウの中につくられた,鞭毛を持つ遊走子によって行われ
ます。有性生殖のときにも動配偶子を生じたものがあります。この亜門には,単に遊走
細胞を生じるというだけの共通点を持った菌類をまとめてあるというのが実状です。亜
門に入れられている3綱の類縁関係はよく分かっていません。
この亜門の菌類の多くは水生菌(ミズカビ)で,陸上で生活するものは大半が植物寄生
菌です。
鞭毛菌亜門は,遊走子の鞭毛の性質によって,次の3綱に分けられます。
遊走細胞の後端に1本の尾型鞭毛がある・・・・・・ツボカビ綱
遊走細胞の前端に1本の羽型鞭毛がある・・・・・・サカゲカビ綱
遊走細胞には1本の尾型鞭毛と1本の羽型鞭毛がある・・・・・・卵菌綱
この亜門の菌類でよくみる種類に,フナやキンギョにつくミズカビがあります。フナ
やキンギョの生きた体に白い斑点ができ,それが広がって魚が死んでしまう病気です。
顕微鏡で見るときは,白い斑点の部分のカビを掻き取って見ます。このカビは,卵菌綱
ミズカビ目ミズカビ科に属します。また,キュウリを腐らせ,さらにキュウリの根や茎
や葉も侵すキュウリ疫病がありますが,これは,卵菌綱ツユカビ目フハイカビ科のエキ
ビョウキン属の菌によります。
同じくツユカビ目のブドウのベト病菌や,ツキミソウに寄生するツキミソウ菌はこの
亜門の菌です。ツキミソウ菌は複雑な生活環境を持ち,わが国の菌学の草分け時代の一
人である草野俊助博士による生活環の研究の材料になったことでよく知られています。
この菌は,ツボカビ綱ツボカビ目サビフクロカビ科サビフクロカビ属(シンキトリウム
)に分類されます。
△接合菌亜門
この亜門には,有性生殖の結果,接合胞子をつくる菌類がまとめられています。生活
史を通して鞭毛を持つ遊走細胞をつくることはありません。この亜門には,接合菌綱と,
トリコミセテス綱の2綱が入れられています。
接合菌類には,トリコミセテス綱以外の接合胞子をつくる菌をまとめてあります。こ
の綱の多くは陸上で植物に腐生します。そのほか,アメーバや線虫に寄生するものが知
られています。ケカビ,クモノスカビなどは,土壌や糞から沢山分離できます。また,
白いカビに取り囲まれて植物の葉にくっついたまま死んでいるハエをよく見かけます。
このハエについたカビは接合菌類ハエカビ目ハエカビ科の菌です。
トリコミセテス綱の菌の有性生殖法や接合胞子はまだほとんど見つかっていません。
しかし,明らかに接合胞子をつくる種が見つかったので,この綱全体を接合菌亜門に入
れています。この菌群の栄養体は簡単な糸状体で,節足動物(主に植物を食べる昆虫や
多足類)の消化管内壁に付着して生活します。
なお,接合菌類は,一般にカビと呼んでいる形態ですが,キノコと呼べるような組織
をつくる種類もないわけではありません。接合菌類ケカビ目アツギケカビ科の菌で,普
通は数ミリの球状の菌糸組織をつくります。この菌は,注意して探していた研究者たち
がいたにもかかわらず,わが国では最近まで採集されたことがありませんでした。とこ
ろが,外国のこの菌の専門家が先頃来日したとき,たちまち数十種を採集したといいま
す。今では,採集のし方と実物がどんなものかが分からなかったため,採集できなかっ
たということらしいです。
参考 「キノコ・カビの生態と観察」築地書館発行
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