16 土復活〈自然環境の保全〉
 
            土復活〈自然環境の保全〉
                                        
                    人類をはじめ地表で生活する生物のふるさ
                   とは,「土」です。
                    本稿は,共立出版発行の「土と生態」を一
                   部抜粋し参考にさせていただきました。なお
                   本書籍中,「土とはなにか」,「土の反応」,
                   「生物のはたらき」,「土地の保全」などに
                   つきましては,前掲の「森林の土を掌に」等
                   と重複するものもありますで割愛させていた
                   だきました。           SYSOP
                                        
〈土中病原菌の特性〉
 △病原菌の生態
 土の微生物を有用菌とか有害菌とかに区分するのは,便宜的なものにすぎません。伝
染性病原菌など,病原性微生物の生物的コントロールは土中の生態系,特に土中に生息
している微生物相互の関係によって決まってきます。
 糸状菌は腐生菌から共生菌までの広い生活範囲を占めています。土中の微生物フロラ
のなかで,長い年月の競合によって生き続けてきたもので,一度感染と発病に必要な生
存量に達しますと,作物に寄生して猛威を奮います。土中に生息しています病原菌が植
物の地下部や地上部に感染を起こして病害を引き起こすものを称して土の伝染病といっ
ています。
 一般の病原菌の性質は次のようにまとめてみることができます。すなわち,@植物遺
体での競争的腐生力が弱く,A植物の表皮を貫いて侵入するか,あるいは気孔から侵入
して,細胞間隙で増殖します。傷口から侵入したり,昆虫によって媒介され侵入するこ
ともあります。B植物細胞や組織内部で宿主の抵抗に耐えて生存できますし,C宿主に
病気を生じさせます。D自動的にも伝播し,E特定の宿主を持っていることもその特性
として挙げることができましょう。
 病原菌のなかで腐生力の強いものは,一般に組織内部での生残力は弱いです。しかし
毒性は強くて,宿主の範囲も広いものが多いです。腐生力が弱くなるに従って植物細胞
又は組織内部での生残力が強くなります。しかしながら,毒性は弱まり,宿主の範囲も
狭く限定される傾向がします。
 病原菌は特定の植物分類単位に対して,特異的に寄生あるいは病原の特性を持ってい
ます。植物の抵抗性,病原菌の病原性はそれぞれ独立した性質ではなく,両者が対をな
して成立するものと考えられています。
 病原菌の特性は,病原菌の毒物生産と宿主の解毒作用によって成立しています。宿主
と寄生者,つまり病原菌とが共生する場所で,共通の代謝を行うことによって成立する
ともいわれています。
 土中に生息する病原菌の特徴は植物病原菌と異なっています。胞子による自動的伝播
が低いですので,大面積にわたる流行をみません。また,土中では休眠状態で長期間保
存されます。
 連作は病原菌の増殖を助長します。特に弱腐生菌に対しては生存のための不可欠条件
です。コムギ立枯病菌はコムギを一作中止すれば実用的には防除できます。
 △未分解有機物の応用
 フザリウムなどの強腐生菌は,未分解有機物を土へ施与しますと増殖してきます。こ
のことを利用して,ワタ根腐病菌や,コムギ立枯病菌を競争的あるいは抗生的に抑圧,
死滅させるなどのコントロールできます。
 抵抗現象は単純ではなく,抗生・寄生・競争など実験的には証明されていますが,抗
生物質を土に施与して病原菌を防除することはなかなか難しいことです。
 
〈農薬と微生物〉
 △多いことは良いことか
 毒性の強い,持続性あるいは残留性のある化学薬物,特に有機塩素系薬剤の影響は,
@農薬残基による土あるいは広い意味での環境汚染,Aヒトを含む動物体内への有機塩
素系殺虫剤の蓄積,B有用昆虫の死滅と捕食動物や寄生昆虫,魚類その他野生生物への
有毒作用,C病害虫の耐性変異種の出現,D農作物への有毒作用その結果としての雑草
の成長促進などがあります。
 有機塩素系殺虫剤の残基の植物体内への吸収と蓄積は,トウモロコシ,大豆,落花生
などに顕著です。
 △農薬の多量投下
 稲の除草剤には,土中の微生物の活動をコントロールするものもあります。このよう
に除草剤,殺虫・殺菌剤などは農作物に吸収されるばかりでなく,土中に流入して,土
・水・生物などの生態系に長期間にわたり複雑な作用を及ぼすことが予測されます。
 △農薬の働き
 土中の微生物は,自然環境の変化に対してかなり適応性を示します。一時的あるいは
部分的な土の環境変化に対しては,程度の差異はありますが,農薬の効果は長時間にわ
たっては持続しないで,復元する現象が普通にみられます。
 土は生態系としては解放的ですので,農薬を局所的に多量投下して,その部分の微生
物が消滅しても,一定日時が経過しますと風雨によって再接種され,いつの日にか復元
されるわけです。
 @殺菌剤と燻蒸剤
 殺菌剤は直接植物の地上部に散布するものと,土の伝染性病害防除のためのものとの
2種類に大別されます。
 燻蒸剤は土中でガスとなって拡販し,主に病害虫の予防・防除に使用されます。特に
植物寄生性の線虫防除剤として効果があります。これらの農薬は,作付前に散布されま
す。拡販性が大きく,毒性もかなり強いので微生物に対する作用は大きいです。燻蒸剤
は作物に薬害を引き起こしますが,耕耘など土の撹乱によってコントロールできます。
 A除草剤
 除草剤は裸地と作付地とでは薬害を考慮する必要があります。裸地では,半乾燥地の
場合には雑草から水分の蒸散を防止して,水分保持を目的とします。作付地では圃場や
播種直前にはかなり投下量を制限する必要があります。
 B殺虫剤
 塩素系のものは慣用濃度では土の微生物作用に対する影響はないものと考えられてい
ます。有機リン剤の毒性は極めて強いですが,残留性は小さく,土中では微生物によっ
ても分解されます。
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