11b 森林の土を掌に〈土壌の理学的性質〉
 
〈森林土壌の水湿状態〉
 △各土壌型の水湿状態(水分環境)
 同じ土壌の含水量は降雨があれば増大し,晴天の日が続けば減少します。長期的には
季節的な降水量,降雨頻度,気温などの影響による変動もみられます。土壌型の区分の
基準として用いられる水分環境は,各土壌の水湿状態の1年を周期として経常的に繰り
返されている変化を総合した乾湿の区分です。
 
 △野外調査における土壌の水湿状態とPF価との関係
 野外における土壌の断面調査における水湿状態の区分とPF価との関係は次のとおり
です。
 
  野外調査の水湿状態  乾    潤    湿    多湿  過湿
 
  PF価        3.0以上 2.5〜3.0 2.0〜2.5 1.0〜2.0 1.0以下
 
〈森林土壌の吸水性〉
 外界の乾湿の状況に対応して脱水ないし吸湿する場合の土壌の水分の変化の過程は,
同じ土壌であっても異なります。同じ外界の状況に対応して平衡に達した場合の土壌の
含水比の変化を比べてみると脱水過程より吸湿過程の方が小さいです。すなわち土壌は
一度乾燥しますとなかなか吸湿し難くなる性質を有します。このような性質は履歴効果
と呼ばれています。
 外生菌根を形成している菌糸束やその遺体はしばしば網状,層状あるいは粉状となっ
て土粒をとりまいていますが,これらはワックス状の物質を含み,水をはじく性質が強
く,そのために湿り難い性質の原因をなしていると考えられます。
 
〈透水性〉
 森林土壌では透水性は土壌の理学性の良否を示す有力な指標の一つとされています。
 降雨による土壌水は重力作用によって,山腹斜面では一部は土層の内部を中間流とし
て斜面下部へ,一部は垂直に地下へ流下します。緩斜〜平坦面では,透水性の不良な土
層や固結層(不透水層)があると停滞水になりやすく,林木は根腐れを生じたり,生育
阻害や枯損などが生じやすくなります。
 
    土壌の透水性と構造,堅密度及び堆積様式の関係
 
  透水性   構造       堅密度     堆積様式
 
  不透水   マツシブ,細粒状 固結      ―
  極めて不良  〃       すこぶる堅   水積
  不良    堅果状      堅       残積
  中庸    粒状       軟       匍行ホコウ
  良好    団粒状      しょう     崩壊
  極めて良好  〃       すこぶるしょう 〃
 
〈土壌の空気(気相)〉
 土壌の空気の組成は大気とは著しい相違がみられ,二酸化炭素の濃度が高く,酸素の
濃度が低いです。これは植物の根や土壌動物の呼吸作用,土壌微生物の有機物の分解作
用などによって二酸化炭素が生成され,同時に酸素が消費されるためです。これらは土
壌呼吸と呼ばれています。
 
   畑土壌空気及び大気の組成(%)
 
        窒素  酸素   二酸化炭素
  土壌の空気 79.2  20.6   0.25
  大気        79.0  20.97   0.03
 
 二酸化炭素の濃度は土壌条件,採取位置(深さ),季節(温度,乾湿),その他の環
境諸条件によって著しく違います。このような違いは土壌呼吸の強さと,土壌の空気と
大気の交換の良否によってもたらされます。
 
             参考 「森林土壌の調べ方とその性質」林野弘済会発行

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