08a 森林の土を掌に〈土壌と植生〉
 
〈植生と環境条件〉
 △群落の調べ方
 ・調査区の選定と調査面積:地域の植生の概要,つまり林冠の優占度や相観によって
どのような群落が区分できるか,その分布は標高,方位,地形,風衝など土地条件との
関連でどのような特徴を示すかなど,また試孔により土壌との結びつきの概要をおさえ
ておく必要があります。
 調査区の選定は,群落の外観やその植物相はもちろん.地形など土地条件も均質な箇
所を選びます。
 湿原や高山植物群落:1u
 ハイマツ林やハギの散生した草原:25u
 天然林:100〜400u
 地衣や蘚苔の着生群落:900平方p
(正方形又は必要により等高線に沿った長方形)
 ・調査区の記載:環境条件として海抜高,方位,傾斜角,地形,地質,母材,風衝の
有無,また隣接群落との位置関係のほか,調査年月日,天候,調査場所,調査区の形状,
大きさなどを記載します。
 群落を階層区分して高さの平均,範囲,植被率など,森林の階層区分は高木階,低木
階,草本階,コケ層を基本とします。
 出現植物の種類(種類ごとの平均高,高さの範囲),樹形や葉色などの発育状態,開
花,結実,紅葉,落葉などの生活現象を観察します。
 出現した全ての種についての優占度,群度などを記載します。
 
 △組成表のつくり方と群落の区分
 常在度表とは,群落全体に強く結びついている種群か,まれにしか出現しない種の配
列です。
 部分表では,調査区相互の比較をして群落区分をし,種の出現傾向,優占度合い,生
育状況などを立地条件と関連させながら十分に比較検討します。
 
 △林床型と土壌,地位との関係
 林床型と地形,土壌型,地位の対応関係は極めて密接です。例えば押出し地形のとこ
ろは,土壌型がBE〜BDでスギの成長がよく,尾根筋のところはBD(d)〜BAでスギの
成長があまりよくないということです。
                                                                            
〈いろいろな森林の林床型と立地条件〉
 △亜高山帯針葉樹林
 ・表日本・中間帯,亜高山帯シラベ・アオモリトドマツ林及びコメツガ林(の林床型)
  シャクナゲ型:ハクサンシャクナゲ,シャクナゲ,イワカガミ,ヒメイワカガミ,
   ウラジロハナヒリノキ,コケモモなど
  コケ型:タチハイゴケ,イワダレゴケ,シッポゴケ類など
  カニコウモリ − コケ型:カニコウモリ,シラネワラビ,ミヤマタニタデなど
  カニコウモリ − シラネワラビ型:カニコウモリ,シラネワラビ,フジノマンネン
   グサ,シノブゴケ,ミヤマタニタデ,オサバグサなど
  ササ型:ミヤコザサなど
  セリバシオガマ型:セリバシオガマなど
  各林床型に共通する種:ナナカマド,オガラバナ,ヒロハツリバナ,タケシマラン,
   ミヤマワラビ,コバノイチャクソウ,ゴゼンタチバナなど
 ・裏日本亜高山帯アオモリトドマツ林の林床型
  ツツジ型:コヨウラクツツジ,オオバスノキ,ハクサンシャクナゲ,ムラサキヤシ
   オツツジ,アオジクスノキ,サラサドウダン,アカミノイヌツゲなど
  ヤマソテツ − コケ型:ヤマソテツ,タチハイゴケ,チシマコケなど
  ハリブキ − コシラネワラビ型:ハリブキ,シラネワラビ,ゴヨウイチゴ,タニギ
   キョウなど
  ササ型:チマキザサ,チシマザサなど
  各林床型に共通する種:ナナカマド,オガラバナ,コシアブラ,ツレリンドウ,ツ
   タウルシ,チマキザサ,チシマザサなど
 
 △裏日本温帯のブナ林(の林床型)
  オオバスノキ − アクシバ型:オオバスノキ,アクシバ,ムラサキヤシオツツジ,
   ホツツジ,コヨウラクツツジ,ハナヒリノキ,リョウブ,イワウチワ,オオイワ
   カガミなど
  エゾユズリハ型:エゾユズリハ,ツルシキミ,リョウブ,ハナヒリノキなど
  オオバクロモジ − ハイイヌガヤ型:オオバクロモジ,ハイイヌガヤ,ヒメアオキ
   など
  ジュウモンジシダ − リョウメンシダ型:ジュウモンジシダ,リョウメンシダ,シ
   ラネワラビ,オシダ,ホウチャクソウ,ミヤマベニシダ,オクヤマシダ,エゾア
   ジサイ,タニギキョウなど
  ササ型:チマキザサ,チシマザサなど
  シャクナゲ型:シャクナゲなど
  クサソテツ型:クサソテツなど
  各林床型に共通する種:ムシカリ,ヒメモチ,タムシバ,ウリハダカエデ,ハウチ
   ワカエデ,ヤマウルシ,ツルアリドオシ,ツタウルシ,イワガラミ,ツルアジサ
   イなど
 
 △温帯南部のイスノキ林(の林床型)
 大隅半島のイスノキ,タブノキ,スダジイ,モミの森林には,カツモウイノデ型,カ
ツモウイノデ − コバノカナワラビ型,コバノカナワラビ型,クロバイ − クロキ型が
あります。
 
 △スギ人工林(の林床型)
 暖帯南(下)部では,カツモウイノデ型,カツモウイノデ − コバノカナワラビ型,
コバノカナワラビ型,クロバイ − シャシャンボ型があります。
 暖帯中部では,アオキ フエイチゴ型,イズセンリョウ − コバノカナワラビ型,ヒ
サカキ − ホソバカナワラビ型,クロバイ − シャシャンボ型があります。
 暖帯北(上)部から温帯南(下)部では,サワアジサイ − アカソ型,キイチゴ − 
チヂミザサ型,クロモジ − チゴユリ型,アサビ − チチブドウダン型があります。
 温帯(表日本側)では,サワアジサイ − アカソ型,キイチゴ − チヂミザサ型,ク
ロモジ − チゴユリ型,アセビ − チチブドウダン型
 温帯(裏日本側)では,クサソテツ − ジュウモンジシダ型,オクノカンスゲ − ヤ
マソテツ型,ヒメアオキ − ツルアリドオシ型,タムシバ − オオバスノキ型がありま
す。
 
             参考 「森林土壌の調べ方とその性質」林野弘済会発行

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