06b 森林の土を掌に〈土壌分類〉
 
 △赤・黄色土群RY
 赤色土及び黄色土は本来は熱帯ないし亜熱帯地方の高温多雨の偏湿気候下に生成され
る熱帯性の土壌とされています。この土壌の中で本州以南の赤色土亜群は,古期の温暖
期,すなわち洪積世の間氷期に極めて温暖な気候下に,ラテライト化作用によって生成
されて現在まで保存されているのです。
 ・赤色土亜群R:内地では低山地の丘陵頂部の緩斜地や高位段丘,盆地の周辺部など
の特定の地形面に出現します。沖縄では主として高位段丘面に広く分布します。本州で
は西南及び東海地方などに広く出現するほか,北海道に至る全国各地に出現します。
 ・黄色土亜群Y:黄色土亜群には,赤色土亜群と同様に古期の温暖期(洪積世の間氷
期)に生成されたものと,現在の生物 ー 気候の条件下に生成されたものとがあります。
わが国の本土に出現する黄色土は前者に属します。沖縄の高位段丘面に見られる赤色土
の上に厚く堆積している黄色土も同じ時代の生成と考えられています。この両者はいず
れも分布はわずかです。一方,沖縄の山地帯に広く出現する黄色土は後者に属し,赤色
土亜群や古期の黄色土亜群のように母材は特定のものに制限されず,山腹斜面上の分布
は褐色森林土亜群の場合と同様ですが,一般に腐植の含有率は低いです。
 ・表層グライ系赤・黄色土亜群gRY:沖縄の赤色土及び黄色土亜群の分布域のなか
で,丘陵頂部の平坦ないし緩斜面,台地の平坦面,谷頭緩斜面などに出現します。
 
 △黒色土群Bl
 わが国では褐色森林土に次いで広く分布します。黒色の分布は原野に多く,原野造林
の場合には森林の影響が長く続くと表層が退色して褐色味が強くなってくる場合が多く,
また,天然生林ではほとんど出現しません。
 ・黒色土亜群Bl:火山山麓や準平原の緩斜地形に分布することが多く,火山放出物
を母材とすることが多いです。
 ・淡黒色土亜群lBl:主として常総台地,武蔵野台地,阿武隈高地,北上高地などに
分布します。一般に火山灰を母材とします。
 
 △暗赤色土群DR
 石灰岩,蛇紋岩,超塩基性岩などを母材とする地域では,しばしば下層が暗赤色を呈
する土壌が分布します。このような土壌は一般に置換性塩基の飽和度が高く,しかも下
層ほど高くなる傾向が見られます。その他火山活動に伴う熱水作用によって生成された
土壌や,塩基性岩に由来し,置換性塩基の飽和度が余り高くない土壌のなかにも,同様
に下層が暗赤色を呈する土壌が出現することがあります。
 ・塩基系暗赤色土亜群eDR:この亜群のなかで石灰岩に由来するものは沖縄のサン
ゴ礁に由来する石灰岩段丘上に広く分布します。内地の場合は石灰岩に由来するものの
分布は少なく,蛇紋岩やはんれい岩などに由来するものが多いです。
 ・非塩基系暗褐色土亜群dDR:B層の置換性塩基飽和度(Ca+Mg)がおおむね50%
以下のものです。この土壌亜群では,BF型土壌に対応する土壌型の出現はまだ認めら
れていません。
 ・火山系暗赤色土亜群vDR:火山活動に基づく熱水風化を受けた赤色の母材から生
成しれた土壌です。この土壌亜群では,BF型土壌に対応する土壌型の出現はまだ見い
だされていません。
 
 △グライ土壌群G
 比較的浅いところにグライ化作用によって生成された灰白色のグライ層を有する土壌
です。
 ・グライ亜群G:深さ1m以内に地下水によるグライ層を有する土壌です。湖沼の周
辺,地下水位の高い台地や平坦地,斜面の下端に沿った平坦地などに出現します。
 ・疑似グライ層psG:深さ1m以内に季節的な停滞水によるグライ層を有する土壌で,
前述の表層グライ化作用を受けた土壌よりもグライ化作用の程度が強く,また下層まで
及んでいます。
 ・グライポドゾル亜群PG:ポドゾル化による溶脱層又は溶脱を有する土壌です。
 
 △泥炭土群Pt
 沼沢地などの常に滞水するところで植物遺体の分解が進まず,これが堆積して生成し
た有機質の土壌です。
 ・泥炭土亜群Pt:土層の上部に厚さ30p以上の泥炭層が発達する土壌です。
 ・黒泥土亜群Mc:土層上部に厚さ30p以上の黒泥層を有する土壌です。表層に約30
p以上の泥炭層を有するものは泥炭土とします。黒泥土の下層は還元的で,泥炭地の周
辺に分布します。
 ・泥炭ポドゾル亜群Pp:高位泥炭起源の腐植土層を比較的厚く堆積し,その直下に
薄い溶脱層を有することもありますが,一般に明瞭な溶脱層は認め難く,腐植土層全体
が弱度の溶脱層状態を呈します。また鉱質土層の上部に明瞭な集積を有します。腐植土
層には泥炭質のものから黒泥質のものまで包含されます。
 この土壌は亜高山帯上部の湿原周辺に見られ,ハイマツや歪曲生のアオモリトドマツ
などが群生し,林床には比較的低型のチシマザサが密生します。泥炭ポドゾルは高位泥
炭と地形的に連続して出現します。八甲田山や八幡平などの火山の森林限界付近に典型
的なものが分布します。
 
 △未熟土群Im
 ・未熟土Im:母材の堆積が比較的新しく,層位の分化がまだ不明瞭,又は微弱なも
ので,比較的新しい火山放出物,氾濫,土石流,泥流などによる堆積物,砂丘未熟土な
どが含まれます。
 ・受蝕土Er:受蝕によって土層の欠除したものです。
 
             参考 「森林土壌の調べ方とその性質」林野弘済会発行

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