49 資源植物〈資源植物学研究方法への誘い1〉
資源植物〈資源植物学研究方法への誘い1〉
本稿は講談社サイエンティフィク編集の「
資源植物学(小山鐵夫氏著)」を参考にさせ
ていただきました。 主としてアジア地域に
おいてみられますように,エネルギー源を森
や林に求めていくとしたら,森林は後退し,
その結果土壌は破壊され,いわゆるこのよう
な砂漠化は,徐々に進行していくであろうと
思われます。このことは,この地域の農業の
生産性を低下させるだけでなく,太古から伝
えられた植物の原種を,いいかえますと,今
後の人類の営みの上で限りない可能性をもつ
植物資源の,いわば貴重な種火を地球上から
永遠に消し去ってしまうことになります。と
いうことができます。 SYSOP
〈植物資源〉
△資源植物
資源植物とは短絡的にいえば,「資源植物とは穀物,野菜,果樹,枕木や紙パルプ,
ゴムなどを目的とした植林樹種,ワタのような繊維植物等の栽培栽植植物である」です
が,本当の意味での資源植物とは,現在用いている栽培植物その他の有用植物のみなら
ず,栽培植物を生みだしたその野生原種やそれらに近縁の植物まで広く包含した植物群
を指します。
栽培植物とその原種との関係において,栽培植物の発生については,人類が狩猟生活
をしていたころは,自然植生の中から果実や食用野草を採取して食べていたので,人間
の存在は生物生態系における野生動物と同じ方式でした。人間が定着して必要な植物を
植えはじめたのが農業のはじまりであって,そのときには植物の中から栽植するに都合
のよい性質をもった個体を選び出して植えていったとの考えられます。野生植物の中か
ら選ばれた個体の中には種内変異の中の個体や突然変異によって生じたもの,さらに自
然に交雑してできた自然雑種として生えていたものも選ばれたのでしょう。
例えばアジア,アメリカ,ヨーロッパなどで広く栽培されています穀物のイネはアジ
アイネですが,このアジアイネは野生していません。アジアイネは,インドから熱帯地
方に広く分布するオリザ・ペレンニスという野生イネを栽培化し育種改良してできた作
物です。
パンコムギもコムギ属の原植物,サトウキビもススキ属など複数の野生植物などが深
く関わっています。
このように,なぜ作物の原種が資源植物として重要か,という点ですが,一口にいえ
ば野生原種がなければ栽培植物は作れないからです。
資源植物学では,薬用植物など野生有用植物から直接に消費財を採る場合の野生有用
植物を未開発経済植物といい,原料資源植物として栽培されている植物は開発経済植物
といいます。
熱帯野菜として将来性が注目されているヨウサイ(アサガオナ)や,根菜類のオオグ
ログワイなどは開発中経済植物です。
資源植物は次のように要約できます。
@経済植物:消費財の直接の原料植物です。
a 開発経済植物:育種の進んだ栽培植物で,野生原種とはっきり区別できるもの
b 開発中経済植物:栽培品種として1ないし少数で,オオクログワイ,ヨウサイ,
パンノキ,ヒユ,ココヤシ,バンレイシ,アワ,ヒエ,モロコシ類,キャッサバ,
グアユールなど
c 未開発経済植物:原則として野生植物を利用し,又は有用植物であるが現在未利
用のもので,マンゴスチン,パーム・キャベツをとるヤシ科植物,籐をとるヤシ
科植物,グッタペルカノキ,アマモ(果実をグレーンに利用),クズ,有用海藻
類の大半,チョウセンニンジン,オオレンなどの薬用植物,その他
A栽培植物の原種:栽培植物の直接,間接の祖先種,栽培植物が交雑種のときはその
両親にあたる植物で,上記のほか,トウモロコシに対するテオシント,クリカボチ
ャの原種など
B栽培植物及びその原種の近縁関連植物で,
a イネに対してイネ属の野生種からサヤヌカグサ属,ヒルムシロヒバ,マコモ属,
ツクシガヤ属などの野生種
b コムギに対してコムギ属やエギロプス属の野生種
c ダイズに対してダイズ属やクズ属その他の野生種
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