48 逸出帰化植物
 
              逸出帰化植物
                      参考 「グリーン・パワー」1994.7
 
 帰化植物は海外からわが国に侵入した植物です。その数はおよそ八百種といわれてい
ます。大半は明治以降,海外との交流が盛んになるに伴ってわが国にやってきました。
 しかし,なかにはいつの時代に渡来したのかは,はっきりしない植物もあります。そ
れらのうち,有史以前に忍び込んだと思われる種類を史前帰化植物と呼びます。スベリ
ヒユ,ナズナ,カタバミ,コアカザ,イヌタデ,イヌビエなど畑や水田の雑草が多いで
す。
 大陸や朝鮮半島から農耕技術を持った集団が渡ってきた折,これらの種子が農機具の
泥や農作物の種子に混じって入ってきたと推定されています。いわば無意識の偶然がも
たらしたインベーダー(侵入者)です。そして,これらの帰化植物に共通するのは,森
林や山地にはまず見られず,多くは人くさいところに限られている点です。従って,分
布が人里中心の植物は一応帰化植物と疑ってみる必要があります。
 史前帰化植物とされたなかに特殊な一群があります。代表的な種はシャガ,ヒガンバ
ナで,いずれも種子ができません。理由は染色体の異常です。シャガもヒガンバナも中
国には二倍体が存在しますが,日本産は三倍体です。
 帰化植物は一般に種子が小さく,種子が小さいからこそ,付着したり紛れ込んだりし
てやって来れたのです。一方,シャガやヒガンバナの三倍体は種子ができませんので,
繁殖には根茎や球根が必要で,人の手で運ばなければ海を渡れません。ヒガンバナは殺
虫剤や殺鼠剤,シャガは観賞用としての利用目的があり,わが国にもたらされのでしょ
う。
 ほかにもユキノシタ,オノマンネングサ,ツルドクダミなどは薬用として,中国から
栄養体が導入されたに違いありません。
 オノマンネングサは葉が多肉質で三輪生します。石垣や人家近くの岩場に生えていま
す。これに似て茎が30p以上も伸びるツルマンネングサも中国では肝臓の薬にされます
が,韓国では野菜として食用します。いずれにせよ有用植物としてもたらされ,分布が
限られることからオノマンネングサよりその歴史は浅いと思われます。両者とも普通,
種子ができません。
 わが国にみられ葉が輪生するマンネングサには,もう一種あります。これはメキシコ
マンネングサで,葉は4〜5輪生し,種子でも殖えます。わが国では昭和四十年代から
目につき始めました。このメキシコマンネングサも観賞用から逃げ出した逸出帰化植物
です。
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