45 植物の環境を再現する/環境分析
 
           植物の環境を再現する/環境分析
 
                  参考:世界文化社発行「世界文化生物大図鑑」
 
 △環境とは
 植物がある一定のところにおいて生活する場合,その生活に影響する全ての外界要因
を総合して環境といいます。
 これら外界の要因は,植物の生育にとって,必ずしも好ましい状態のものばかりとは
限りません。例えば,夏に水の不足する地中海地方や,極端に乾燥する砂漠地方,又は
海岸の砂丘地方といった,水要因の厳しい環境のところでは,水不足な耐える体制を備
えた植物しか生育できないことになります。
 このように,全ての植物は,それぞれの地域の気候や風土に適合して生活しています。
 植物を取り巻く環境には大きく分けますと,光,水,温度,空気などの気候的な要因,
地温,土壌の水や養分,物理特性といった土壌要因,更に植物相互の競り合い,人間や
動物による刈り取り,菜食又は寄生・共生生物,土壌微生物などの生物的要因がありま
す。このほか,山地の標高や斜面の方向といった地形的な要因などもあります。植物の
生活には,これらの要因が複雑に関係しながら働きかけています。つまり,植物は,様
々な環境に適応しながら生活しますが,その一方では,周囲の環境をも変化させる働き
を持ち,相互に密接な関係を持ちながら生育することになります。
 
 △気候的環境要因
 〈光の要因〉
 緑色植物は,光のエネルギーを得て生命を維持しています。また一方では,体内に含
まれるファイトクロームという光受容体色素の働きで光を受け止め,移り行く季節の中
において無事に子孫を残しています。
 植物が光合成に必要とする光の強さは,植物の種類によって違っています。日当たり
の良いところで元気に育つマツやシラカバは,日陰のところでは生育が衰えます。反対
にコケやシダ,アオキ,ヤツデなどは木の下などでよく育ちます。これらの中には,直
射日光の当たるところでは葉が焼けたり,生育不能となるものもあります。このように,
植物が生育するためにはその種類に合った適当な光が必要となります。
 強い光を必要とする植物を陽生ヨウセイ植物,弱い光を好み,ある光の強さ以上では生育
できなくなる植物を陰生インセイ植物といいます。
 陽生植物が,これ以下の弱い光では生育できなくなるという点を最少受光量,逆に陰
生植物がこれ異常の強い光では生育できなくなる点を最大受光量といいます。伐採など
よる急激な環境の変化によって,その場から姿を消す植物の多くは,最大受光量を越え
たためです。山野草の栽培において鉢を日当たりの良いところに置いたり,日陰に移す
などするのも受光量の違いによって決めることになります。
 〈温度要因〉
 温度は,植物の分布,生長に深く関係します。温度が上がるにつれ,光合成と呼吸作
用は盛んとなります。ところが,温度が一定以上になりますと光合成の速度は逆に低下
し,呼吸作用による消耗の方が光合成による生産量を上回るようになります。こうした
状態が長く続きますと植物は次第に衰え,終いには枯死することになります。特に夜間
の高温は消耗だけを多くし,衰弱に追い打ちをかけます。
 涼しい気候に適応した高地性の植物が,平地で熱帯夜の続くような温度環境下で栽培
されたとき,次第に生気を失うのも,日中の高温はもとより,夜間の高温がその大きな
原因の一つとなります。高地性植物の夏越しでは,この点が問題となります。植物の多
くは,低温に対しては幅広く適応する傾向があります。熱帯原生の植物でも,潅水を控
え,昼夜の温度較差を少なくしますと,凍らない程度の低温でも冬越しできるものがあ
ります。
 植物の生理的反応は温度に依存します。従って,生命活動は温度によって大きく支配
されることになります。多くの植物がそれぞれに最も適した温度を要求し,適応できる
範囲で生育が可能となるのもそのためです。
 山は1,000m登る毎に5.5℃ずつ気温が下がります。一方,緯度も1度高くなるにつれて
1℃ずつ低下します。このように,高くなる程,また北に行く程気温は低下します。
 人間の登山なら,寒くなったら下がればよいですが,移動のできない植物では事情が
違います。自生の植物では,その場所毎に適応できる植物だけが定着します。そして,
高いところや北地のものほど,耐寒性の強い植物となります。耐寒性のあるものは,反
面では耐暑性が弱いです。
 〈水要因〉
 水の多少はところによって違い,植物の生育に大きく影響します。ノキシノブのよう
なものを除いて,水は根から吸収されます。従って,植物の生育に関わる環境要因とし
ての水は,土の中の水ということになります。
 水の多少によって,砂漠,草原,森林などの群落が成立します。
 土の乾燥するところに生える植物は,茎や葉に水を蓄え,地上部の割に根を発達させ,
またクチクラ層を発達させ,蒸散を押さえるなどして水不足に耐えています。高山植物,
砂漠植物などはその例です。また夏に乾燥する地中海地方の木本性植物なども葉から水
分の発散を防ぎます。そのほか多くの球根類が休眠して夏を越し,水の補給される秋に
生育を開始します。これも水不足を乗り切る一つの適応です。一方,水の多い池や湿原
に生育する植物は,葉から根に酸素を送る組織を発達させるなど,特別に適応した草本
植物で群落を形成します。そこには生育可能な樹木はあまりありません。
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