44a 野生植物とは
 
 △育成の基本的事項
 われわれの身の回りで栽培されています植物は,山野に自生するものから高度に改良
された園芸植物に至るまで,その種類は非常に多いです。これらに共通した育成上の基
本的次項は次にようになります。
 〈生態的特性を知る〉
 植物の特性をよく理解するためには,その植物がどのようなところで最もよく生長し
ているかを,自分の目で確かめることが望ましいです。春に開花する地生ランであって
も,エビネは落ち葉が厚く堆積した軟らかい土で,湿り気のある山腹から沢にかけて自
生します。他方,シュンランは比較的乾燥した尾根筋などに多いです。こうした自生地
の実態を把握することで,日当たり,土の選択,潅水の程度などの調節や管理が栽培の
上に生かされることになります。
 栽培植物の殆どは外国生まれです。そのためできれば原生地の気候を知ることも必要
です。園芸植物の中には原生地と原産地の両方を持つものがあります。チューリップは
地中海沿岸生まれ(原生地)で,秋から冬にかけて水を好む性質を持ってオランダに渡
りました。オランダにおいて長年に亘り改良され(原産地)ましたが,秋に水を好む性
質は捨てることなく,オランダの気候に馴染んで涼しい夏を好む性質を新たに付け加え
ました。日本では,冬は暖かく水気の多い日本海側の雪の下が,最も彼らの要求を満た
すことになります。これらの園芸植物を栽培しようとするときは,原生・原産の両方の
気候を知っていますと大変役に立ちます。
 〈環境の調整〉
 気候的には,温室,ビニールハウス,フレームなどでの冬越しの管理や,よしず,寒
冷紗による遮光の調節,土壌的には客土,潅水,排水,培養土の作成など,生物的には
適期の薬剤防除があります。これらは,何れも栽培地の立地条件に合わせて調節します。
 〈技術に通達する〉
 経験の積み重ねに拠って体得する以外にありません。原理に裏打ちされた,自分なり
の技術の確立が必要です。
 〈絶えず目を通す〉
 物言わない植物の立場に立って,見守るようにします。植物自体が持つ,伸びようと
する力が十分に発揮できるように仕向けたいものです。

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