25b 蜻蛉の生活
 
△産卵
 交尾を終えた♀は♂と連結したまま,又は単独で産卵行動に移ります。トンボの産卵
方式にはいろいろなタイプがありますが,枝(1964,1976)によりますと次のように分
類,整理できます。
 (1) 植物組織内産卵
 静止して植物組織内に産卵する方法で,水面や水中の浅いところの植物組織内に産卵
するのが普通ですが,体全体が水中に没するように深いところに産卵する(潜水産卵と
いう)ものや,水上の植物に産卵するものもあります。均翅亜目の全ての種とムカシト
ンボ,ヤンマ科の大部分の種がこのタイプです。このタイプで産卵する♀は全て産卵管
を持っています。
 (2) 接泥静止産卵
 静止して泥や蘚苔の中に産卵する方法です。産卵の対象が違うだけで(1)と似た産卵方
式です。ムカシヤンマとヤンマ科の一部の種がこのタイプです。♀は産卵管を持ってい
ます。普通は植物組織内産卵をするヤンマ科の一部の種でもこのタイプで産卵するもの
があります。
 (3) 接水静止産卵
 岸に静止して腹部末端に水を着けて産卵する方法です。サナエトンボ科のヒメクロサ
ナエがこのタイプで産卵します。♀は生殖弁を持っています。
 (4) 遊離性静止産卵
 水辺の草や樹木の葉などに止まって,卵を空中から落果させる方法です。サナエトン
ボ科のモイワサナエがこのタイプです。♀は生殖弁を持っています。
 (5) 接泥飛翔産卵
 飛翔しながら泥や砂の中に産卵する方法です。オニヤンマがこのタイプで長大な産卵
管を挿し込んで産卵します(この方法を特に挿泥飛翔産卵といいます)。サナエトンボ
科のキイロサナエやエゾトンボ科のエゾトンボの亜種オオエゾトンボ,ハネビロエゾト
ンボ,トンボ科のアカトンボ属の数種もこのタイプで,泥を叩タタいて産卵します(この
方法を打泥産卵といいます)。打泥産卵を行うこれらの種の♀は生殖弁を持っています。
中には打水産卵の方法と両方行うものもあります。
 (6) 打水産卵
 飛翔しながら腹端フクタンで水面を叩くようにして産卵する方法です。植物組織内産卵と
ともに最も普通な産卵方法です。サナエトンボ科の大部分,オニヤンマ科のミナミヤン
マ属,ヤマトンボ科,エゾトンボ科,トンボ科のそれぞれ大部分の種がこのタイプです。
♀は生殖弁を持っています。産卵方法によって連続打水産卵,間歇打水産卵,単一打水
産卵の三つのタイプに細別されます。
 (7) 空中産卵
 飛翔しながら空中から卵を落下させる方法です。サナエトンボ科のダビドサナエ属の
種やオナガサナエ,トンボ科のアカトンボ属の数種がこのタイプです。♀は生殖弁を持
っています。このタイプは更に,停止飛翔産卵と打空産卵の二つのタイプに細別されま
す。
 
△出現期
 トンボ目は各属種によって成虫の出現期がほぼ一定しているものが多いです。大まか
に春先に出現して夏の初め頃まで見られる春〜夏型(又は春期型)と,夏に出現して秋
まで見られる夏〜秋型(又は夏秋型)と,春から秋まで長期間見られる春〜秋型とを考
えることができます。南西諸島南部では年間を通して成虫がみられる通年型のものもあ
ります。イトトンボ科のホソミイトトンボとアオイトトンボ科のオツネントンボ,ホソ
ミオツネントンボの3種のように夏期に羽化して,そのまま成虫で越冬,翌春産卵して
一生を終える成虫越冬型のものもあります。
 
△分布
 日本列島は地理的によくまとまっておりながら,その生物相は可成り複雑な構成を持
っています。
 
鹿角物語[52だんぶり長者伝説]
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