51_3 鳥を詠める和歌
[鶏ニハトリ・ニハツトリ・木綿付鳥ユフツケトリ・カケ・八声ヤコエの鶏]
逢坂の夕付鳥にあらばこそ 君が行来をなくなくもみめ(袖中抄 二十)
をとめの なすやいたどを おそぶらひ わがたゝせれば(中略)にはつとり かけは
なく うれたくも なくなるとりか このとりも うちやめこせね(下略)
(古事記 上)
にはとりは かけろとなきぬなり おきよおきよ わがひとよづま 人もこそ見れ 人
もこそ見れ(神楽歌)
たがみそぎゆふつけどりか唐衣 たつたの山にをりはへてなく
(古今和歌集 十八雑 よみ人しらず)
さしぐしのあかつきがたになりぬとや 八声の鳥もおどろかすらん
(堀河院御時百首和歌 雑 前斎院肥後)
思ひかねこゆる関路に夜をふかみ 八声の鳥に音をぞそへつる
(千載和歌集 十五恋 前中納言雅頼)
よみつどりわがかきもとになきつとり 人みなきゝつゆくたまもあらし(袋草紙 四)
玉子白み小児の泄瀉難産の 胞衣のをりぬに薬成けり
玉子の黄生にて数をのみぬれば 小便通ぜぬ人によきなり
玉子酒身うちあたゝむ寒き夜は 酔ざる程にねるたびにのめ(食物和歌本草 三)
打羽振ウチハブリ 鶏トリは鳴くとも かくばかり ふりにし雪に 君いまさめやも
鳴く鶏は いやしき鳴けど ふる雪の 千重チヘに積めこそ 吾れ立ちがてね
(萬葉集 十九)
夜をこめて鳥のそらねははかるとも 世にあふさかのせきはゆるさじ
たちかへり
あふさかは人こえやすき関なれば 鳥もなかねどあけてまつとか(枕草子 七)
夜もあけばきつにはめなでくだかけの まだきになきてせなをやりつる
(伊勢物語 上)
いもがてを われにまかしめ わがてをば いもにまかしめ まさきづら たたきあざ
はり しゞくしろ うまいねしとに にはつとり かけはなくなり ぬつとり きゞし
はとよむ はしけくも いまたいはずて あけにけりわぎも(日本書紀 十七継体)
庭津鳥 かけの垂り尾の 乱れ尾の 長き心も 念ほえぬかも(萬葉集 七挽歌)
[雉キジ・キギシ・サノツドリ・ノツトリ]
河きしのをとりおるべき所あらば うきにしにせぬ身はなげつべし
(拾遺和歌集 七物名 すけみ)
雪ふかきをしほの山にたつきじの ふるき跡をもけふは尋ねよ
(源氏物語 二十九行幸)
いなやきじ人にならせるかり衣 我身にふればうきかもぞつく(大和物語 下)
をとめの なすやいたどを おそぶらひ わがたゝせれば(中略)さぬつとり きゞし
はとよむ(下略)(古事記 上)
ししくしろ うまいねしとに にはつとり かけはなくなり ぬつとり きゞしはとよ
む(下略)(日本書紀 十七継体)
をちかたの あはぬのききし とよもさず われはねしかど ひとぞとよもす
(日本書紀 二十四皇極)
春ののゝしげき草ばの妻恋に とびたつ雉のほろゝとぞ鳴
(古今和歌集 十九俳諧 平貞文)
[山鶏ヤマトリ]
山鳥を久しく食ば痔を発す 人のしゝをもをとすもの也(食物和歌本草 五)
念へども 念ひもかねつ 足桧アシビキの 山鳥の尾の 永き此の夜を
(萬葉集 十一古今相聞往来歌)
やまどりの をろのはつをに かゞみかけ となふべみこそ なによそりけめ
(萬葉集 十四東歌)
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