51_1 鳥を詠める和歌
参考:吉川弘文館発行「古事類苑」
鳥は卵生にして二足を有し、羽翼ありて、
空間を飛び、觜ありて求食の用に供す。其
の生息する所に山林あり、原野あり、水沢
あり。其の食餌とする物に穀類あり、虫魚
あり、或は他禽を搏ち、小獣を捕ふること
ありて一ならず。
鳥は私共にロマンを運んで呉れます。往
古の人々は如何に鳥を詠んだのでしょうか。
SYSOP
△鳥総載/鳥類別
[水鳥ミヅトリ]
太王オホキミは 神にし座マせば 水鳥の すだくみぬまを 皇都ミヤコと成しつ
(萬葉集 十九 作者不詳)
浪高し いかに梶取り 水鳥の 浮宿ウキネやすべき 猶やこぐべき(萬葉集 七雑歌)
秋の露は 移しなりけり 水鳥の 青羽アヲバの山の 色付く見れば
(萬葉集 八秋雑歌 三原王)
水鳥を水の上とやよそにみん 我も浮たる世を過しつゝ(紫式部日記)
水鳥のしたやすからぬ思ひには あたりの水も氷らざりけり
(拾遺和歌集 四冬 よみ人しらず)
△觜クチバシ
[をし鳥]
くちばしもこほりとぢてやをし鳥の さむけき夜半におとなかるらん
(夫木和歌抄 十七水鳥 花山院御製)
△羽翼
[鴨]
前玉サキタマの 小埼ヲザキの沼イケに 鴨ぞ翼ハネぎる 己が尾に ふり置ける霜を 掃ふとに
有らし(萬葉集 九雑歌)
あし辺往く 鴨の羽音ハオトの 声オトのみに 聞きつゝもとな 恋い渡るかも
(萬葉集 十二古今相聞往来歌)
[しぎ]
春まけて物悲しきにさよふけて 羽振ハフリ鳴くしぎ誰が田にかすむ(萬葉集 十九)
[時鳥ホトトギス]
さつきまつ山時鳥うちはぶき いまもなかなんこぞのふるこゑ
(古今和歌集 三夏 よみ人しらず)
[雁]
白雲にはねうちかはしとぶ雁の かずさへみゆる秋の夜の月
(古今和歌集 四秋 読人しらず)
[ひな鳥]
雛鳥の風きりよわみとばれねば すごもりながらねをのみぞなく
(古今和歌六帖 六鳥 業平)
[闘鶏]
春雨にみのげあらしてねる鳥の ふせごをかさにきてかへる哉
(木工権頭為忠朝臣家百首 雑)
△鞦シリガヒ
[鷹]
かりくらすましろのたかのゆくかたを おぶさのすゞのをとにしる哉
(丹後守為忠朝臣家百首)
△距
[闘鶏]
おぼつかな何れの鳥かかけにけん あこえのかねとはねのからしと
(木工権頭為忠朝臣家百首 雑)
△鳴サヘヅリ(囀り)
[わし]
筑波禰ツクハネにかゝなくわしのねのみをか なきわたりなむあふとはなしに
(萬葉集 十四東歌)
[百千鳥]
もゝちどりさえづる春は物ごとに あらたまれども我ぞふりゆく
(古今和歌集 一春 よみびとしらず)
△卵
[鴬]
鴬の 生卵カヒコの中に 霍公鳥ホトトギス 独り生れて 己シが父に 似ては鳴かず 己が母
に 似ては鳴かず(下略)(萬葉集 九雑歌)
[かりのこ]
かひのうちに命こめたるかりのこは 君がやどにてかへさゞるらん
(空穂物語 藤原の君)
[たづ]
かへりてぞちよもみるべきかいのなかに こもれるたづはいくよふべきぞ
(空穂物語 蔵開上)
[鳥の子]
鳥の子をとをづゝとをはかさぬとも 思はぬ人をおもふ物かは(伊勢物語 下)
[かひ]
あしたづのかひこめくつるすごもりの つひにかへらぬ身とや成なん
鳥の子はかへりて後ぞなかれける 身のかひなきを思ひしりつゝ
(古今和歌六帖 六鳥)
[はま千鳥]
はま千鳥ふみこし浦にすもりこの かへらぬ跡はたづねざらなん
(空穂物語 藤原の君)
[きじ]
年をへてかへりかた野のすもりこの 君にしあへば飛立ぬべし(古今和歌六帖 二野)
[鳥の子]
鳥の子はまだひなゝがらたちていぬ かひのみゆるはすもりなりけり
(拾遺和歌集 七物名 よみ人しらず)
[はま千鳥]
ひとつすにかへりはゐれど浜千鳥 しばしもたえばわびしかりける(兼輔卿集)
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