学名解説(属名)[S〜T]
学名解説(属名)
参考:北隆館発行「牧野新日本植物圖鑑」
S
Sabia f.<土名 この属の一種のベンガル土名 sabja-lat に由来する。アワブキ科
Saccharum n.<g. sakcharon(砂糖)に由来する。茎中にある糖汁から砂糖を製する
ため。イネ科
Saccolabium n.<1.+g. sakkos(嚢,ラテン語)+labium(唇,ギリシャ語)。唇弁
が袋状になっているため。ラン科
Sagina f.<1. sagina(肥大)に由来する。最初ヨーロッパで今でも馬草マグサとして
栽培する Spergula に対して付けられた名の転用。ナデシコ科
Sagittaria f.<1. sagitta(矢)に由来する語で,矢形をした葉の形から来た名。オ
モダカ科
Salicornia f.<1. sal(塩)+cornu(角ツノ)。角状の枝を持った海岸性の植物であ
ることを示す。アカザ科
Salix f.<1. ラテンの古名。恐らくケルト語の sal(近い)+lis(水)から来たと
云われる。水辺に多いためである。一説にラテン語の salire(跳ぶ)から。これは生
長の速いことからと云う。また篭を編むのでギリシャ語の helix(回旋)に基づくと
も云う。ヤナギ科
Salomonia f.<人名 ユダヤ王 Salomon の名に因んで付けられた名。ヒメハギ科
Salsola f.<1. salsus(塩辛い)に由来する名。海岸近くに生えるため。アカザ科
Salvia f.<1. この属の一種 sage(セージ)のラテン古名。薬用になるものが多いの
で,salvare(治療)から来た名。シソ科
Salvinia f.<人名 イタリアの植物学者Antonio Maria Salvini(1633〜1729)に因
む。サンショウモ科
Sambucus f.<1. 多分ギリシャ語の sambuce(古代の楽器)に由来。沢山の茎を林立
した様子がこの楽器に似ているからと云う。スイカズラ科
Sanguisorba f.<1. sanguis(血)+sorbere(吸収する)からなる語。根にタンニン
多く,止血の効のある民間薬としての評判による名。バラ科
Sanicula f.<1. sanare(治療する,健康的な)の縮小形。薬用植物と見られていた
ため。セリ科
Sapindus m.<1. sapo indicus,インドの石鹸の意。果皮の石鹸性の性質による名。
インドでは古くから洗濯用に用いられていた。ムクロジ科
Sapium n.<1. ラテン古名で粘る意から来た。本属の或植物から鳥黐トリモチを採ったた
めと云われる。トウダイグサ科
Saponaria f.<1. sapo(石鹸)から来た名で,S.officinalis の粘液質の汁が水に溶
けると泡が出ることから来たもの。ナデシコ科
Sarcanthus m.<g. sarx(肉)+anthos(花)からなる語で,唇弁が肉質であるため。
ラン科
Sarcochilus m.<g. sarx(肉)+cheilos(唇)。この属の或植物は肉質の唇弁を持
つため。ラン科
Sarcodon .<g. sarx(肉)+kodon(鐘)。菌体が鐘形になり然も肉質であるため。
ハリタケ科
Sargassum n.<sp. スペイン語の海藻(sargago)に由来する。大西洋の藻の海の主体
をなす種類であるから。ヒバマタ科
Sarothra f.<g. saros(箒)。花序が箒状に分枝することによる。オトギリソウ科
Sasa f.<jap. 日本名ササ(笹)に由来する。イネ科
Sasaella f.<属名 Sasa(属名)の縮小形。イネ科
Saururus m.<g. sauros(トカゲ)+oura(尾)。トカゲの尾のような穂状の花序か
ら。ドクダミ科
Saussurea f.<人名 スイスの学者H.B.de Saussure(1779〜1896)の名に因む。キク
科
Saxifraga f.<1. saxum(石)+frangere(砕く)からなる語で,尿の結石を溶かす
作用があると思われたことによる。ユキノシタ科
Scabiosa g.<1. scabiea(疥癬)に由来する語。この属の植物に皮膚病に効くものが
あるため。マツムシソウ科
Scapania f.<g. skapeion(掘るもの)。円形に近い葉をシャベルに譬えたものか。
苔類
Sceptridium n.<g. sceptron(帝王の持つ笏シャクの一種で,長い柄がある)。葉上に
高く挺出する胞子嚢群の形をそれに見立てた。ハナワラビ科
Sceptrocnide f.<g. scepton(帝王の持つ笏)+cnide(イラクサ)。イラクサに近
いが,葉上に高く花序が抜け上がる特徴を譬えたもの。イラクサ科
Scheuchzeria f.<人名 スイスの植物学者Johann Jacob(1672〜1733)及び Johann(
1684〜1738)の Scheuchzer 兄弟に捧げられた名。ホロムイソウ科
Schistostega f.<g. schisto(裂けた)+stegio(包皮)。植物体全体を縁ヘリの切り
込んだ包葉に見立てたものか。蘚類
Schizachne n.<g. schizein(裂ける)+achne(籾殻)。イネ科
Schizandra f.<g. schizein(裂ける)+aner,andros(雄蘂)からなる。縦裂した
葯に基づく。モクレン科
Schizocodon m.<g. scizein(切れる,裂ける)+kodon(鐘)からなる語。鐘形の花
冠は縁ヘリが細かく切れ込んでいるため。イワウメ科
Schizonepeta f.<g. schizo(裂ける)+Nepeta(属名)。Nepeta に近いが,それの
葉と異なり羽状全裂をするから。シソ科
Schizopepon n.<g. schizo(切れる,裂ける)+pepon(メロン)。果実が熟すと開
裂するため。ウリ科
Schizophragma n.<g. schizo(切れる,裂ける)+phragma(隔壁,壁)。果実が熟
すと壁の肋と肋との間で割れて,裂けるため。ユキノシタ科
Schlumbergera f.<人名 園芸家Schlumberger の名に因む。サボテン科
Schoeffia f.<人名 採集者J.D.Schoeff を記念した名。ボロボロノキ科
Schoenus m.<g. schoinos(イグサ)に由来する語。全形が似ているからである。カ
ヤツリグサ科
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