学名解説(属名)[A〜B]
 
             学名解説(属名)
 
                    参考:北隆館発行「牧野新日本植物圖鑑」
 
 A
 
Abelia f.<人名 イギリスの医者で中国に来た事のある Dr.Clarke Abel(1780〜1826
  インドで没)の名に因む。スイカズラ科
Abies f.<1. モミの一種 A.alba の古いラテン名である。マツ科
Abutilon n.<ar. Avicenna の命名による名詞”aubutilum”による。a(否定)+
 bous(牡牛)+tilos(下痢)で,”家畜の下痢止めに効ある”と云う意味。アオイ科
Acacia f.<g. 本属中のエジプト種に対する古いギリシャ名。akazo(鋭い)又は
 akantha(刺)で,鋭い刺を持つものが多いためであろう。マメ科
Acalypha f.<g. 最初イラクサの古代ギリシャ名”acalephe”であったのを Linne が
 転用。トウダイグサ科
Acanthopapax m.<g. akantha(刺)+属名 Panax。Panax 属に近似で刺があるため。
 ウコギ科
Acanthopeltis f.<g. akantha(刺)+peltis(楯)の意。楯状の小枝に刺を持つか
 ら。テングサ科
Acar n.<1. カエデの一種 A.campestre のラテン名。この言葉には裂けると云う意味
 があり,切れ込んだ葉形に基づく。カエデ科
Aceranthus m.<1. a(否定)+ceros(角ツノ)+anthos(花)。イカリソウに似てい
 るが花に距がないため。メギ科
Aceriphyllum n.<g. Acer(モミジ)+phyllon(葉)。葉の形がカエデに似る。ユキ
 ノシタ科
Achillea f.<g. 古代ギリシャの医師 Achilles によりその有効成分(健胃,強壮剤
 achillein)を発見されたことによる。キク科
Achlys f.<g. 暗黒の女神名。森蔭の暗い処に生ずるからか。メギ科
Achuatherum n.<g. achna(籾モミ)+ather(芒ノギ)。長い芒があるから。イネ科
Achudemia f.<人名 Achudem を記念。イラクサ科
Achyanthes f.<g. achyron(籾殻モミガラ)+anthos(花)の意。淡緑色で硬い籾殻状
 の花の様子を譬えたもの。ヒユ科
Aconitim n.<g.&1. 語源不明のギリシャ又はラテンの古語に基づく。一説には Aco-
 ne は地名と云う。キンポウゲ科
Acorus m.<g. a(否定)+coros(装飾)。美しくない花に基づく。サトイモ科
Acrostichum n.<g. acros(頂端)+stichon(列)からなる合成語。ウラボシ科
Actaea f.<g. ニワトコの古ギリシャ名。葉形の類似からこの属に転用された。キン
 ポウゲ科
Actinidia f.<g. 柱頭が放射状に並ぶところから,aktis(放射線)に基づく語。サ
 ルナシ科
Actinodaphne f.<g. aktis(放射線)+属名 Daphne。葉形が Daphne に似て然も放
 射状に付くから。クスノキ科
Actinostemma n.<g. akti(放射線)+stamma(冠)。雌雄花共に萼ガクや花冠が深く
 裂け,細く尖った裂片が放射状に並ぶため。ウリ科
Actinotrichia n.<g. aktis(放射線)+trix(毛)。体表全体に亘って短く硬い毛
 が短い間隔をおいて放射状に輪生するから。ガラガラ科
Acystopteris f.<g. a(無)+cystis(嚢)+pteris(シダ)。近似の属に Cysto-
 pteris があり,これと比べて包嚢が不完全な点で区別された。ウラボシ科
Adenocaulon n.<g. adenos(腺)+caulos(茎)。花茎上部に粘質の腺毛を密生す
 る。キク科
Adenophora f.<g. adenos(腺)+phoreo(有する)。植物体全体に乳液を出す腺細
 胞があるため。キキョウ科
Adenostemma n.<g. adenos(腺)+stemma(冠)。腺がある果実の冠毛の基部が癒合
 して冠状に見えるから。キク科
Adiantum n.<g. a(無)+dianotos(濡れる)。即ち雨を弾いて濡れない葉を意味す
 る古い植物名。ウラボシ科
Adina f.<g. adinos(密集)の意。小球状に花の密集する様を表す。アカネ科
Adonis f.<g. ギリシャ神話に出てくる青年の名。欧州産の本属のものは赤花を着け
 るのでこれを Adonis の血に例えた。キンポウゲ科
Adoxa f.<g. ギリシャ語 adoxos から来た語で,明瞭でない,取るに足らぬの意。花
 が目立たぬため。レンプクソウ科
Aeginetia f.<人名 7世紀のギリシャの医師 P.Aegineta から。ハマウツボ科
Aeodes f.<g. 体が葉状に広がり柔らかで羊皮様であるため。ムカデノリ科
Aerides n.<g. 空気の意。気根で生活するため。ラン科
Aerobryopsis m.<属名 Aerobryum に似たもの。蘚類
Aeschynomene f.<g. aeschynomenos 恥ずかしがるものの意。葉が閉じて垂れるから。
 マメ科
Aesculus f.<1. aescare(食う)に由来する。果実が食用や家畜の飼料となるため。
 初め Quercus petraea の名,後に転用。トチノキ科
Agaricus f.<g. agarikon(mushroomの名)から。マツタケ科
Agrastache f.<g. aga(甚,強める)+stachys(穂)。太い穂状の花序を着けるか
 ら。シソ科
Agave f.<g. agaue(高貴な,貴族)から来た名。全体の姿の印象から付いた。ヒガ
 ンバナ科
Ageratum n.<g. ageratos は不老の意。キク科
Agrimonia f.<g. 花に刺の多い点で argemone に似ているため Pliny が転用したが
 その際綴りを取り間違えたもの。バラ科
Agropyron n.<g. agros(野生)+pyros(小麦)。イネ科
Agrostemma f.<g. agros(野原)+stemma(花冠)。リンネが大輪の花の冠に見立て
 た。ナデシコ科
Agrostis f.<g. agros(野原)草(恐らくギョウギシバ)の古いギリシャ名の転用。
 イネ科
Ahnfeltia f.<人名 Ahnfelt に因む。オキツノリ科
Ailanthus f.<土名 Molucca 島の方言で,天の樹を意味する植物名。ニガキ科
Ainsliaea f.<人名 イタリアの Whitelaw Ainslie に基づく。キク科
Aira f.<g. ある種のイネ科,多分ドクムギに対するギリシャの古名の転用。イネ科
Ajuga f.<g. a(無)+jugos(軛クビキ,束縛)。花冠の下唇上に軛を共にするもの(
 即ち配偶者の一方)が見えないためと云う。一説に,abiga の同義語で畸形(奇形)
 を作り出すものの意とも云う。シソ科
Ajugoides f.<属名 Ajuga に似たもの。シソ科
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