23 竹箆圏チクヒケンの人々と竹〈竹の諺コトワザ〉
竹箆圏チクヒケンの人々と竹〈竹の諺コトワザ〉
竹箆圏チクヒケンとは,出産時に竹箆タケベラ(
アオヒエ)を用いて,臍帯セイタイを切るとこ
ろの竹文化の地域のことです。この地域の人
々は先天的に竹工が精巧であるといわれてお
ります。竹箆圏は主として東南アジア地方で
すが,古来,わが国もこの文化圏に含まれる
とされています。
本稿は,農業図書株式会社発行の「竹類語
彙」を参考にさせていただきました。SYSOP
〈竹の諺コトワザ〉
あ行
青竹を割ったような:さっぱりとして曲がったことの嫌いな性質をいいます。
青竹の手摺テスリ:江戸の三祭(山王,神田明神,深川八幡のお祭)の折,御神酒どこ
ろが方々の町々にあり,そこでお輿が留まって神酒を飲みました。その処は青竹の
手摺をつけていました。
この青竹は生ナマで摺れていましたので,生意気で人を喰ったもののことをいいま
す。
青竹は毒気を消す:古くから清めるところに青竹が用いられました。地鎮祭のときの
竹,人に魚を贈るときの篭は青竹で作るか,青竹の葉が添えてあります。青竹を用
いるのは見た目の美しさだけではなく,古来の「毒気を消す」という諺からきてい
ます。また,カッポ酒は青竹に限られます。
家の中にネブチ(地下茎)が入ると病人ができる:薮の隣接地の地下茎が床下に入っ
て筍を出し,風通しが悪くなって多湿になるので,病人ができるということです。
家の回りに竹植えよ:地震どきの退避場所にもなりますので,農家の屋敷周囲によく
マダケを植えます。
石原筍:筍はまず地下茎が地中に伸びた後に出ますので,石の多い河原などでは地下
茎が伸びませんので,筍は絶対に出ません。酒席などの戯言として,可能性が全く
ないときに使う言葉です。
うき川竹の流れ:「うき川竹の流れの身」,「うき川竹の浮き沈み」などともいいま
す。川竹のように水の流れに浮いたり沈んだり,身をまかせる辛い境遇という意で,
遊女の世界をいいます。また「川竹の・・・・」は流れるにかかる枕言でもあります。
雨後の筍:筍の生長は湿度に左右されますので,雨後は盛んに伸長します。モウソウ
チクやマダケは1日に1.2m前後伸長し,日中によく伸びます。
梅とマダケの筍が市場に出回る頃,水天宮下にサヨリが群れて来る:福岡県久留米市
筑後川沿岸の言い慣わしで,この頃,サヨリ(カマス)が群がって集まるので採り
時です。
縁の下の筍:縁の下の力持ちと同じ意で,世に出ることが滅多にないということです。
親の五十年忌と竹のまわり切りには会われぬ:竹を廻し切りにしますとまっすぐには
切れませんので,どちらも稀有のことをいいます。
か行
買いの上場,売りの下場:竹の売買は,竹山と店先とでは寸法の基準が違います。竹
山では,例えば4寸竹は3寸5分から4寸4分です。このときの4寸4分を上場(
部),3寸5分から4寸までを下場といいます。店売りでは3寸1分から4寸まで
を4寸竹とします。買うときは4寸より太いものを上場といって買い得です。
また「買いの藤原,売りの鎌倉」ともいいます。
買いの藤原,売りの鎌倉:「買いの上場,売りの下場」参照
篭や笊をかぶるとジャボ(痘痕)になる:秋田でいわれています。
篭や笊をかぶると出世しない:全国的にいいます。
篭や笊をかぶると背が伸びない:全国的にいいますが,食物などを入れるのを被るの
は衛生的ではありませんので戒めの諺です。
飢饉の年には,弘法大師のお恵みで笹に実がなる:新潟県における伝説です。
狐が笹小屋の屋根を上がるようになったら里におりよ:山形県月山九合目救助小屋で
の諺です。登山者が来なくなる頃は(救助)小屋の守も必要なくなりますので,そ
の頃になったら下山せよの意です。
木元モト竹梢ウラ:木は元の方から,竹は先端の方から割るとよく割れるということです。
木六竹八,アヤメは五月:福岡県における諺で,木は旧暦6月,竹は同8月,アヤメ
は同5月が最良とのことです。この時期,竹は虫害が少なく,また竹材の端境期で
すので経済的に有利です。
木六竹八,堀十郎:木は旧6月に,竹は同8月に伐るのがよく,堀は百姓の暇な10月
に修理するとよいということです。
「竹八月に木六月」参照
旧正月十五日に果樹を竹でなぐると,その年はよく実がなる:幹を殴ると,篩管が切
れてC/N率が上がってよくなりだすといいますが,竹に限ったことではありません。
鍬の頭で土打つな(花傭月令):竹を植える際に鍬の頭で土を打つと筍の生えが遅く
なります。つまり移植期が出筍前ですと,鍬で筍が折れるということです。
荒神コウジンのフロ(古い森)の藤の花盛りがヘイトコ(ネマガリダケの筍)の出盛り
:岡山県真庭郡中和村下鍛冶屋付近の諺です。ヘイトコはスズノコともいいます。
五月の節句に筍食べないと筍虫になる:長崎県壱岐島などで竹の栽培奨励のために言
い出したものでしょう。
御器ゴキもたぬ乞食:御器とはゴキタケ(笹の一種)の略です。百姓などが野良で働
くときに畦アゼに普通の竹を手折って箸にするということで,箸さえ持っていない
最低の乞食をいいます。
今年竹がよく伸びると台風がある:化学的な根拠がないとされています。「筍の親ま
さり」参照
子供の息災に青竹:愛知県岡崎地方では,初成りの柿を青竹で造った小さい篭に入れ
て,2〜3才の子供に背負わせると息災に育つという俗信があります。
[次へ進んで下さい]