23a 竹箆圏チクヒケンの人々と竹〈竹の諺コトワザ〉
 
さ行
 
 竿竹で星を打つ:竹竿で星を払い落とすという,すなわち不能なことをする愚をいい
  ます。
 竿でせせるよう:思うところへ行かないので,もどかしいという喩です。
 竿の先の鈴:「竹の先に鈴をつけたよう」参照
 棹サオは三年櫓は三月:櫓を漕ぐのは簡単ですが,棹は難しいという喩です。
 先折れ竹は母竹にせよ:稈の先端の折れた竹はうまく割れませんので,移植時の母竹
  にせよの意です。
 笹魚,水中に入りて岩魚イワナに化す:渓谷のシナノザサ(チシマザサ)の笹魚(寄生
  虫による異状発育のもの)は五月雨の頃,水中に落ちて岩魚になると伝えられてい
  ます(飛州誌)。「鰻が谷川をのぼってヤマノイモになる」の類です。
 笹・スギとナンテンを束にして玄関に吊るすと悪病を妨げる:秋田では笹とスギは寒
  気でも色を変えませんし,ナンテンは古くから魔除けになるといわれていて正月に
  玄関に飾ります。また「サァサ(笹),スギタリ,スギタリ(過ぎ去る),わが家
  はナンテンもない(何のことがない)」の語呂合わせからとも伝えられています。
 笹の霧に酔う:少量の酒にも酔うことをいいます。
 笹の葉に鈴:「竹の先に鈴をつけたよう」参照
 笹の葉につけて振るほど:他人に酒食を供するときに,主人の量が少ないということ
  を謙遜して使う関西などでの挨拶です。また,「笹っ葉につけて振りまわす程です
  が」などともいいます。
 笹の実を食べると冷える。だから冷え症の人はいけない。鶏に笹の実を食べさせると
  卵を産まなくなる:笹の実はデンプン粒が大きいので,したがって消化も悪くまず
  いので言ったものと思われます。また冷えるという伝承は,笹の実=冷害という連
  想も成り立ちます。
 笹葉に火のついたよう:「竹の先に鈴をつけたよう」参照
 笹葉は病魔を除ける:笹葉の茶,笹葉の包みもの,蒸しものなどに利用しますと,種
 々の病気にかかりません。笹葉に殺菌効果のある物質が含まれているためです。
 笹山から来たよう:身に不相応の立派なものを着けて得意気に歩くさまを冷やかす言
  葉です。
 笹を刈る家の馬は肥える:笹葉を家畜に多く食わせると血液がアルカリ性化し,病気
  にかからず,よく肥えるという意です。
 猿が筍を折ったよう:自分の行ったことが以外に大きく,驚く様子をいいます。
 笊ザルで水をくむ:益のない愚なことです。
 笊なめた犬が科トガかぶる:大元の悪人は逃げて,末端のものがやられることです。
 産の苦は青竹をも挫クジく:最高の苦しみの表現に用います。
 三をおき四を残すことなかれ:次項参照
 三を留め,四を伐り,七を残すなかれ:佐藤信淵の竹林経営秘訣で一〜三年生の若い
  竹を伐ってはいけません。四年生のもののみ伐ります。7年生のものを残しますと
  薮が次第に細少となり,テングス病などに冒され薮が駄目になるとの意です。
 四十二歳の厄年には筍と槍を家に入れない:四十歳台は体や精神の転換期ですので,
  青森県では筍のような酸性食品を摂ったり争いごとはやめた方がよいといわれてい
  ます。
 ジネンゴが実をつけるとガシン(餓死人)が来る:岐阜県では笹に実がなると飢饉が
  くるとの意です。
 篠笹が枯れると鹿が町近くに出てくる:和歌山県南牟婁郡木本町などの諺で,ネザサ
  類が冬の寒さで枯れ始めるとシカが食べ物を求めて山から出てくるとの意です。
 十二月に竹(師走竹)を伐ると不幸がある:新潟県では,竹は暇なときに1本ずつ選
  定して伐りなさい,多忙なときに皆伐しますと,薮は駄目になってしまいます。
 湘簾ショウレンを透して内を窺う:タケスダレを通して内部を探ります。
 寸落される竹つらい,油断も隙もならぬ商人:竹の束は寸(長さの単位)ごとに束ね
  ます。1尺のものは1本を1束,9寸のものは2本を1束といいます。これを甚だ
  しい場合は七捨八入とし,9寸7分のもの2本を1束とします。
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