10 木炭の用途
 
          木炭の用途       資料:エコノミーと林業・木材産業
 
 木炭からは木酢液,木タール,木灰などの副産物が得られることは知られていますが,
最近は新たな用途が次々にでてきています。
 
 
1 土壌改良資材
 
  水田,畑作への利用のほか,ゴルフ場へも利用されてきています。
  ゴルフ場で使用する農薬が下流の飲み水に混入するおそれがあることから,厚生省
 は農薬に関する水質目標を定めていますが,木炭は農薬・肥料を吸着・保持する能力
 をもっており,有害物質の流出を防止することができます。
  また,木酢液は防虫,殺菌面の効果のほか,芝の育成促進にも好影響をもたらしま
 す。
  無公害ゴルフ場をつくるには,木炭の利用が欠かせなくなってきています。
 
2 木質浄化材
 
  木炭は多孔質でアルカリ性の物質ですのでバクテリアが棲みやすく,汚水や生活雑
 排水の浄化に最適と言えます。
  さらに,東京都八王子市などでは河川浄化の利用を試みています。
 
3 融雪用資材
 
  木炭は黒く,太陽熱を吸収しやすい性質をもっていますので,木炭粉を地表に散布
 すると表面温度が平均7.4〜7.6度上昇します。木炭を融雪用資材として寒冷地の農地
 に利用すれば,収量増加が期待できます。
 
4 家屋調湿用資材
 
  木炭を床下調湿用剤として使用すると,湿度の上昇をおさえるほか,カビや微生物
 の発生を調整することができます。押入れ調湿剤が販売されています。
 
5 青果物鮮度保持用資材
 
  植物は体内からエチレンガスを発生し,これが老化熟成を促進しますが,このエチ
 レンガス吸着機能をもつ鮮度保持用木炭シートを小野田セメントが開発しています。
 木炭と紙を組み合わせた画期的な多機能紙として注目されています。
 
6 畜産業への利用
 
  木炭を加えた混合飼料が鶏や牛の飼育で好結果をもたらしています。
  また,畜舎の消臭剤として,木酢液と木炭を併用すると効果が高いことも分かって
 います。
 
7 水産業への利用
 
  木炭の水質浄化機能により藻が発生しやすくなり,多くの魚が寄ってくるようにな
 ります。
  ウナギ養殖場などでは,水面下に木炭粉を入れて,沈澱した餌の腐敗防止と水質浄
 化に利用しています。
  また,魚介類の養殖飼料として木炭粉と木酢液を配合したものが広く実用化されて
 います。
 
※ その他の効用
 
  木炭は優れた低エントロピー
 
  一橋大の室田教授は,長期的にみると現在のような石油万能の時代は徐々に終わり
 に近づき,今後は薪,石炭,石油などをそれぞれの用途に応じて利用する共存関係を
 考えるべきだと主張しており,種々の燃料のなかで木炭を高く評価されています。
  「例えば,燃料として何が一番優れているかというと,エントロピー理論的にみる
 と,木炭が一番優れています。以下,石油,石炭で,石炭が一番汚いことになります。
 今後,エントロピーの低い資源として,木炭は無視できないというように,用途を生
 かさなくてはなりません。」
 
 
◎エントロピーとは
 
 エントロピーとは,熱や物質の拡散の程度を示す物質量ですが,平衡状態に達してい
ない閉鎖系のもとでは,熱や物質の拡散の程度は増大する一方である。すなわちエント
ロピーは増大する一方であるとされています。
 定常的な流れの循環がないと,高エントロピーの発熱や廃棄物を系外に捨てることが
できず,生命系を含む系の維持と再生産が困難となり,死に至る病になる,とエントロ
ピー論は警告している。
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