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樹木精油成分の利用
参考 「木材ノート1994.6.3 NO.127」林産行政研究会
〈樹木精油流通の現状〉
植物の花,葉,材などから得られる液状の香り物質が精油であり,香料の原料として
よく知られています。わが国の1989年における輸入香料の合計は44,150t,約393億円で
す。このうち天然香料は13,250t,128億円です。また植物精油の輸入量は12,500t,118
億円で,これは天然香料輸入量の94.3%,輸入額の92.2%に当たり,すなわち輸入され
る天然香料のほとんどが植物精油ということです。
世界市場に出回っている精油の植物原料は約250種,そのうち約20種が樹木の葉を原
料とし,約15種が材,根,樹皮を原料としています。これら樹木関係の精油の生産量は
世界全体で約1万tです。その主なものは次のとおりです。
世界の樹木精油生産量(1990年)
精油名 部位 主成分 主産地 生産量
ユーカリオイル 葉 1,8-シネオール 中国,南アフリカ,イン 1,850t
(シオネール型) ド他
セダーウッドオイル
(テキサスタイプ) 葉 セドレン,ツヨプセン USA 1,400
(バージニアタイプ) セドロール USA 240
(ヒマヤラタイプ) インド 100
クローブリーフオイル 葉 オイノゲール,カリオフィレン インドネシア,タンザニア 1,055
サッサフラスオイル 材 サフロール ブラジル 450
中国,ベトナム 100
カンファーオイル 全体 カンファー 中国,台湾 500
ユーカリオイル
(シトロネラールタイプ) 葉 シトロネラール ブラジル,中国、インド 400
肉桂油 葉 シンナムアルデヒト 中国 160
シナモンリーフオイル 葉 オイゲノール スリランカ,インド 100
白檀油 材 α-サンタロール,β-サンタロール インド,インドネシア 100
パインニードルオイル 葉 α-ピネン,β-ピネン CIS 80
ユーカリオイル 葉 シトラール,ゲラニルアセテート ブラジル 70
(シトラールタイプ)
セダーリーフオイル 葉 ツヨン,フェンコン カナダ,USA 55
パイン油 葉 α-ピネン,β-ピネン オーストリア,ユーゴスラ 53
ビア,ブルガリア,アルバ
ニア
芳樟葉油 葉 l-リナロール 台湾,中国,日本 25
シプレス油 葉 α-ピネン,δ-3-カレン ブラジル,ユーゴスラビア 20
ユーカリオイル,セダーウッドオイル,クローブリーオイルの三種で全体の生産量の
50%近くを占めています。わが国では輸入される植物精油12,500tのうち約350tが樹木
精油です。なかでもセダーウッドオイル,クローブリーフオイルの輸入量が目立ちます。
主な樹木精油の輸入量及び輸入額
精油名 1986 1987 1988 1989
桂皮油 26,287 29,522 36,186 25,333㎏
206,124 180,790 176,615 120,124千円
セダーウッドオイル 84,173 66,870 166,565 158,711
84,456 74,673 148,251 145,655
クローブリーフオイル 311,755 167,671 157,669 102,001
201,856 95,359 67,763 51,631
ユーカリオイル 43,426 60,223 不明 不明
50,327 62,748 〃 〃
白檀油 5,224 3,767 4,076 3,790
136,973 90,820 87,219 85,274
芳樟葉油 4,140 5,930 6,480 2,880
5,648 11,417 11,856 5,585
これに比べ国内の植物精油生産量は,年間たかだか40~50tであり,樹木精油に限る
とさらに少なくなります。以前は精力的に行われていましたクスノキ,ハッカからの精
油採取も今では影をひそめ,現在,国内で生産される植物精油の代表的なものといえば
青森ヒバ,ヒノキ,スギ,芳樟,シソなどです。
樹木精油の採取は原料の収集,搬出等の理由により原料産出場所に近いところで行わ
れているのが普通で,そのために地域産業としての特色があり,青森のヒバ,木曽のヒ
ノキ,三重,静岡のスギ,鹿児島のヤクスギのように地域林業と密接に関係を持ってい
ます。青森ヒバは抗菌性成分ヒノキチオールを採取する目的で戦後鋸屑から材油採取が
続けられてきましたが,5年前に林野庁補助事業である樹木抽出成分利用技術研究組合
が組織されて以来,その生産量は増大傾向にあり,林地残材や工場廃材を利用して新た
に精油採取が始められたヒノキ,スギとともに主な国産樹木精油となっています。青森
ヒバが年間約20t,ヒノキが10t,スギが5t前後を生産しています。
このほかにもクロモジ,サワラ,ネズコ,コウヤマキなどの精油採取が地域的に行わ
れていますが,ごく少量です。これらの国産樹木精油の価格は1~3万円/㎏で,輸入
価格(多くは1万円/㎏以下)に比べますと高価です。国産にあっては原料収集や精油
採取の効率化による低価格化や,国産精油独自の生物活性等の機能を見出して利用技術
の開発を図ることが必要でしょう。
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