17a 海外の大規模木造事例(欧州)
 
〈欧州の大規模木造事例(そのU 平成5年1月)〉
                                       
○所在地:ドイツ フランクフルト
 施設名:レープシュトックパルク屋内プール
 このプール(建物面積 2,600u)は市の主催するコンペで選ばれたもので,周囲の美
しい公園の自然に溶けこませるため,高さ7〜18mのゆるやかな曲面(HP)屋根とし
ている。屋根を支える木造(集成材)トラスは,2本の上弦材と1本の下弦材で構成さ
れ,28mの格子間に配置されたRC造の支柱に架け渡されている。なお,トラスの全体
の形は舟状で,そのせいは中央部で大きくなっている。
                                       
○所在地:ドイツ マンハイム
 施設名:マンハイムの多目的ホール
 奈良のシルクロード博のメーンホールと同種の建物で,5×5cmの製材品を50cmの格
子間に配置し,その交点をボルト1本で止めたものを2層に組んでいる。屋根構面は,
補剛を図るため,ブレースが張られ,格子間には塩ビ(PVC)の膜がカッター釘で止
められている。多目的ホールとレストランとが連結しており,ホールの面積は7,400u
(高さ20m,スパン最大60m)である。
                                       
○所在地:ドイツダルムシュタット
 施設名:ソフトウェア社の木造事務所
 想像力を啓発するには六角形が良いという社長の考えから,建物のプランが六角形を
基本としているばかりでなく,机の配置も六角形になるように工夫されている。材料も
自然のものが良いという考えから,上部は木造2階建(一部小屋裏利用)である。地下
2階にはRC造で,機械室と従業員の駐車場(480台)にあてられている。建物の外観
として重要な面には集成材の枠がとりつけられている。
                                       
○所在地:ドイツ ボン
 施設名:ケルン - ボン空港の航空機格納庫
 この建物は間口が100m,奥行き44m,梁下の有効高さが15mで,6機の飛行機が格納で
き,作業場にもなっている。間口に架けられたトラス(集成材)は中央に設けられたR
C造の柱に支えられ,このトラスに直行して梁(断面20×65〜204cm)が6.25m間隔に配
されている。主架構はドイツ工業規格の60分耐火,他の部材は30分耐火試験に合格して
いる。
                                       
○所在地:ドイツ ドルトムント
 施設名:ドルトムントの野外ステージ
 1969年のドルトムント・ガーデン・ショーのためのパビリオンで,対角線が約61m,
最高高さが16.8mの菱形の平面形をしたサスペンション・シェルである。頂部と側梁の
間に20×24cmの懸垂状に曲げられたリブが1.5m間隔にかけられ,その上に3層の板が45
度ずつに張られて凸面状に張られ,釘止めされている。頂部は十字型柱(集成材)とテ
ンショウ・ケーブルで支えられている。
                                       
○所在地:ドイツ エッセン
 施設名:エッセンのレクリエーションセンター
 (u)
 高層ビル(市役所の一部,貸事務所)に付属した建物で,集成材を用いたスポーツホ
ールや水泳プールなどがある。スポーツホールには,長さ18m,せいが80cm,幅が13cmの
2材合わせの大梁が架けられている。水泳プール(6,500u)には,樹木をかたちどっ
た木の架構があり,方形のトップライトを支持している。プールに木材が使われている
理由の一つは,水中の塩素により金属類が錆び易いからである。
                                       
○所在地:ドイツ ドルマーゲン
 施設名:ヨゼフ教会
 建物は,三角屋根の十字形をしており,架構は,柱(断面16×24cm,7枚合わせ),
はさみ梁(断面8×24cm)で構成され,いずれも集成材である。柱脚には,ベースプレ
ートを使用しているが,アンカーボルトは隠されている。屋根は,鉛板張りで,50cm間
隔に架けたたるき(断面6×14cm)に野値板が張られている。
                                       
○所在地:オランダ アムステルダム
 施設名: 地下鉄ビエルマー駅のプラットホーム
 アムステルダム駅からでているハイン(Geim)行きの地下鉄ビエルマー(Bijlmer)駅の
上屋には,通直集成材の梁(断面11×65cm)が用いられ,鉄骨柱で支持されている。集
成材は白ペンキ仕上げで,シンプルな造形美が出ている。
                                       
○所在地:スイス ローザンヌ
 施設名:ローザンヌ工科大学の多目的ホール
 このドームは,半径27.5mの球の一部を切りとった屋根面をもち,高さが6.8m,一辺
が25mの正方形で,隅の4点で支持されている。屋根構面を構成する部材は,標準断面
が2.7×12cmで,フィンガージョイントにより長尺物に調整され,3〜4枚重ねて格子
状に組まれ,部材同士がスクリュー釘で止められている。その上に野地板が斜め張りさ
れている。
                                       
○所在地:スイス モージュ
 施設名:モージュのミネラル地下水スケート場
 建設地にミネラル水が湧いており,冬にスケートができたことから,この施設はミネ
ラル地下水スケート場といわれている。スケート場の長手方向に78mのスパンの大梁(
集成材のせいが180cm,幅24cmの2枚材合わせ)が,船のキールのように架け渡され,
両端は反力を受けるRC造の構造体に支持されている。この大梁に直交して,小梁(集
成材のせいが150cm,幅が20cm)が架けられている。
                                       
○所在地:スイス ベルン
 施設名:ペルンのアイスアリーナ
 このアリーナの木造部分の面積は8,500u(高さ40m)で,アーチは集成材を用いた箱
形断面(せい120cm,幅48cm)である。そのスパンは75―85mで,桁行方向に設けられた
RC造(7.2〜8.5m間隔)の柱に架けられている。アーチの端部に鋼製のTie-Barが張ら
れている。長手方向のつなぎ梁は合板を用いた箱型梁ある。また,母屋は1m間隔に配
され,要所に水平トラスを組み,積雪によるズレに対処している。
[次へ進んで下さい]