17 海外の大規模木造事例(欧州)
 
            海外の大規模木造事例(欧州)
 
                  参考:財団法人 日本木材総合情報センター
                                       
 次の記事は,構造用大断面集成材等を利用した大型木造建築物建設の先進地である欧
米諸国における優良事例です。
 わが国の建築実施主体や一般の方々にご覧をいただきまして,国産材を使用したこれ
らの木造建築の建設の推進に役立てようとしてご紹介するものです。
 また,外遊されました折りには是非ウォッチングしてみて下さい。         SYSOP
 
〈欧州の大規模木造事例(そのT 平成4年10月)〉
 
○所在地:フランス ポワチエ1985
 施設名:ペピニエール複合体育施設
 本館は最大2,500人を収容する観覧席,バー,更衣室等施設,大小ホール,レストラ
ン,会議室,体育館等よりなっている。本館部分の床面積は11,000uで,鉄筋コンクリ
ート造と集成材構造を併用した二階建てである。この建物の特徴の一つは,運動場に面
した大観覧席を有することで,観覧席の上屋は,鉛直方向に対して30度傾いたスパン
126m,せい約2mの集成材の大アーチにより支えられている。アーチは4部材を現場で
接合して施工したもので,アーチ脚部は鉄筋コンクリート造の柱に支えられている。
 
○所在地:フランス1991−1993
 施設名:リハビリ・センター「ル・クロ・サン・ビクトール」
 1950年代の建物を3期にわたって増改築したものである。第1期の2階部分の20×20
mの平面の中央には,4本の柱が集成材の梁により緊結されている。第2期では治療棟
の上部に集成材の柱・梁構造による3階建ての建物とした。第3期ではバルコニーなど
に木材とアルミニウムの複合構造のファサードを取り付けている。
 
○所在地:フランス シャロン・ジュール・マルヌ1990
 施設名:シャロン・ジュール・マルヌ農務庁舎
 建物は床面積が4,150uの木造二階建軸組構法で,3.45m及び6.9m間隔に配置された梁
材とパネルにより床が構成されている。床梁には木製のボックスビームを使用し,6p
厚のコンクリート板を敷いている。ファサードには,シルベスター松の丸太柱を用い,
外壁にはから松,造作材にはシルベスター松を用いている。
 
○所在地:フランス1973
 施設名:青少年の家「ル・フール」
 35haの敷地にはカシ,クリ,カバ,トネリコ,マツなどが生育している。建築にあた
っては,経済性や自然の保護保存の立場から,木質材料や集積パネルによるプレハブ化
されたエレメントを多く使用したり,寝室は森側に向かい,また既存の花崗岩はそのま
ま残されている。
 
○所在地:フランス リモージュ1977
 施設名:リモージュの体育館
 この体育館は,50×30mのバスケットコート,2,000席の可動座席を含む4,000席の階
段状の観客席等の施設である。建物の特徴は,建物全体が鞍型をして観客席が競技場を
取りまく楕円形の階段座席となっていることで,このことにより観客の視線が競技に集
中され,観客が競技者と一体となることにより競技場の雰囲気が高められるよう工夫さ
れている。
 
○所在地:フランス リヨン1987
 施設名:リヨンの建築学校
 この建物は,通路を挟んで1階を並列して構成する講義室,図書室と2階部分を構成
するアトリエ,そして建物の全長にわたって吹抜けの空間となっている。上層のアトリ
エを覆うスーパーストラクチャーは中央の通路を越える一続きの覆いを構成している。
集成材の部分が互いに特殊な金物で緊結されたトラスを構成し,下層の室の上部に設け
られた支点に緊結されている。スパン14mのユニット化されたこの架構は,柱,小屋組
を構成し,テンション構造により応力を低減し,アトリエの中二階の部材を支えている。
 
○所在地:フランス グランシェール1993
 施設名:グランシェール市の多目的ホール(LVLの活用)
 この建物は,地域の様々な要望に対応できるように,単純に設計されている。床面積
250uのホール部分は,滑り戸の原理により前庭を取り込んで400u以上に広げることが
できる。このほか食堂を舞台とし,建物の内外併せて500名を収容できる。このため屋
根構造はLVLを用いた一体構造の架構である。
 
○所在地:ドイツ ヴィントベルグ1991
 施設名:ヴィントベルク青少年研修センター宿泊棟
 建物は,周囲の環境に調和できるよう細長い平面をもつ古典的なものといえる。長い
廊下によって,南面は長い軒をもち,外部の風景と太陽光線を満喫できる寝室群と,北
側は断熱材と木材のよる14p厚の外壁を用いている,化粧室,物置,玄関などに分かれ
ている。
 
○所在地:ドイツ ロスバッハ1985
 施設名:ロスバッハのジーンズ産業センター
 建築家と建築主とは周囲の風景の中に溶け込んでいるような建築物を造るという点で
意見が一致し,効果的で技術的に可能な箇所にはすべて木材を使用した。事務所棟は採
光や将来の拡張に備えての雁行形式で,内壁システムを採用している。すべての構造部
材は集成材,樹種はカラマツである。
 
○所在地:ドイツ フランクフルト1988
 施設名:フランクフルトの西北ショッピングセンター(歩道などの屋根)
 屋根面積10,000uを支える構造は,既存のコンクリートの支柱の上に,じょうご状に
配列された鋼管を鋳物の結合物を介在してジョイントし,その上端に波形に構成された
集成材の桁(22/70p)が乗り,この桁を母屋桁(22/24p)が通って屋根の形をつく
り,これに保全ガラスを張っている。
 
○所在地:ドイツ ニュールンベルグ1973
 施設名:ニュールンベルグの警察体育館
 屋内体操場は(30×46m)が一つの平屋根で覆われ,屋根構造はトラスの桁格子であ
る。更衣室も桁格子を採用している。入り口ホールは,支持間隔が小さいので支柱以外
はすべての建築部分に角材を使用している。
 
○所在地:スイス ブィミス1989
 施設名:ブィミスの橋梁
 高さ25m,全長108m(27+54+27mの3スパン),内部幅員3.6mの自転車道と歩道用の
橋である。梁の支持はコンクリート支柱で支えたトラスの連続桁とし,木材の側面を鉄
製金具で繋いでいる。弦は集成材200×700o,横桁は160×367oの集成材の二重断面,
母屋桁は140×260oの角材を使用している。屋根や側板などで雨水による木材防腐に優
れている。
 
○所在地:スイス ヴァートラント1989
 施設名:カントン・ヴァートラントの橋梁
 自然の地形と谷側の橋台を利用して,林道とハイキング歩行者のために国道の上の架
けられている。幅2.5m,高さ4.8m,歩道橋のスパンは24mで,横桁は傾斜鋼索に懸けら
れている。傾斜をもった侵入路は35mで,5mごとに支柱で支えられている。すべての構
造材は丸太ないし丸太モデルである。歩道には厚さ6p,幅10pのカラマツを使用し,
保護柵は上下を横木で押さえたカラマツの格子垣とし,これに丸太の手すりがついてい
る。
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