09a 森林火災とその防止
 
W 森林火災の防止技術
                                       
1 予防対策
                                       
 わが国の森林火災の出火原因は,前述のとおり人為的なものが大部分であることから,
出火防止対策を講ずるにあたっては,その出火原因を排除する予防対策が重要である。
具体的には広報宣伝活動,巡視・監視活動の強化などがある。
                                       
(1)広報宣伝活動
   テレビやラジオ,新聞等のマスコミを利用した不特定多数のものに対する広域的
  な広報が効果的であり,最近はバス,電車等の吊りポスター広告方法も多く用いら
  れている。また,地域的には森林地帯の住民やハイカー,ドライバーを対象とした
  チラシの手渡しや広報車による宣伝活動も重要である。
(2)巡視・監視活動
   巡視・監視活動は,森林火災の多発期,多発時間帯,火災警報発令時に重点的に
  行うのが効果的であり,とくに行楽地では日曜日や祭日にも巡視活動等を広報と併
  せて行う必要がある。火災警報が発令されているときには,火の使用に関しての注
  意の喚起が重要であり,その際には行楽地に限定せず,森林内又は森林付近で作業
  を行うものにも配慮することが大切である。
                                       
2 森林の整備
                                       
(1)火災に強い森林の造成
   一般に広葉樹は針葉樹に比べ火に強く燃えにくいことが,経験的にも実験的にも
  実証されている。したがって森林の造成にあたっては,尾根筋や岩石地,林道周辺,
  渓流沿い等に積極的に防火性の高い広葉樹の導入を図る必要がある。
(2)森林の手入れ
   森林火災の最も危険な場所は新植地,幼齢造林地,林道周辺であるといわれてい
  る。これは着火しやすいシダ類等の下草が繁茂していたり,枯れ草,落葉等の可燃
  物が多く,燃焼しやすい状態にあるからである。したがって,入山者の多い危険地
  帯ではできるだけ下草等の可燃物を取り除くことが,火災予防上大切である。
(3)防火線の整備
   防火線とは林内又は森林の外周に設けた空間地帯で,これによって森林火災の延
  焼を防止し,火勢を鎮圧するほか消火作業の拠点ともなる重要な施設である。とく
  に地表火の風上,風横の消火には非常に有効である。防火線には,火災の危険性の
  高い地区に,平素から森林火災の消火拠点となるようあらかじめ作っておく固定防
  火線と,火災出火時に火災の規模・動態にともない防御上緊急に作設される臨時防
  火線とがある。固定防火線の位置は現地の地況,林況,気象条件を考慮して決定さ
  れる。多くは森林の外周(林周防火線),又は林内の境界線(林内防火線),林道,
  尾根などが利用されている。とくに林野火災を拡大する危険風向は,それぞれの場
  所でほぼ決まっているので,これに斜行するような峰筋の風裏側がよい。幅員は樹
  冠火を防ぐためには相当の間隔を必要とするが,地表火の場合では樹高の2倍,草
  丈の10倍以上といわれており,概ね10mは必要である。臨時防火線は火災の延焼速度
  と防火線の構築作業能力を考慮し,林道,河川,稜線等の地形,地物を利用して,
  最小の労力で最大の効果がある場所を選定し設定する。稜線に臨時防火線を作る場
  合,稜線の背面に設けると,傾斜に沿って上昇してきた延焼火流又は火災を稜線で
  上昇させて接災を防ぎ,消火隊員の待避及び飛火の消火が容易になる。また稜線の
  前面に設ける場合は幅員を大きくしなければならず,隊員の待避についても考慮す
  る必要があるが,飛火を幾分少なくするという利点がある。臨時防火線の幅員は固
  定防火線に準ずるが,消火隊員数,延焼状況,現場の状況にあわせて決定する。固
  定防火線はもちろん,火災時に消火活動の拠点となる路線などは,火災危険期に先
  立ち雑草,潅木などを刈払い除去し,防火線上と付近の手入れをよくしておく必要
  がある。管理の悪い防火線はその効果を発揮しないばかりでなく,導火線ともなり
  危険を倍加することもある。とくに火災期を前にした手入れ,不良個所の修理は重
  要である。また付近の可燃物を除去し,できれば1m以上の掘り起こしを線内にして
  おくとよい。

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