07 夜明島の渓谷林
 
                         参考:鹿角市発行「鹿角市史」
 
 米代川の支流夜明島川は八幡平山系の三ツ又森や、三方高サンボウコウなど1000m以上の高
山から源を発して流れる渓流地帯で、その奥地上流地帯は、人を寄せ付けなぬような断
崖と急流や多くの滝が見られる。この渓谷に沿って、両岸には原生林が続いており、そ
の自然の景観が優れているところから、昭和27年5月秋田魁新報社の秋田県観光三十景
に選定された。
 
 渓流沿いの道路は、両側ともしばらく見事なスギ林が続くが、やがてスギ林も尽きて、
山地らしい落葉広葉樹の自然林に変わる。そして谷が深くなるにつれて、サワグルミや
トチノキ、カツラなどの巨樹が密林をなして奥地まで続く。林内にはヒメアオキ・ケナシ
ヤブデマリ・ムラサキヤシオなどの低木や、林床には多くのシダ類やヤグルマソウなどの
群落が見られる。また土砂の崩壊の激しい処では、ヒメヤシャブシやタニウツギなども
見られる。
 以上のように、夜明島は典型的な渓谷自然林の見られる処として、現在でも真に貴重
な自然と云える。
 
 夜明島渓谷林に見られる植物
○高木類
 ミズキ・トチノキ・サワグルミ・エゾイタヤ・ブナ・ホオノキ・ナナカマド・カツラ・ハウチ
 ワカエデ・クロベ・キタゴヨウ
○低木類
 ケナシヤブデマリ・コミネカエデ・ウゴツクバネウツギ・エゾノシロバナシモツケ・エゾ
 ユズリハ・ヒメアオキ・タニウツギ・ムラサキヤシオ・ヤマツツジ・ヒメヤシャブシ・マル
 バマンサク・ヤナギ類・チシマザサ
○蔓性植物
 ヤマブドウ・フジ・ゴトウヅル
○林床林縁
 クサソテツ・イヌガンソク・リョウメンシダ・オシダなどのシダ類、ヤグルマソウ・ノビ
 ネチドリ・オオバキスミレ・ラショウモンカズラ・サワハコベ・オニシモツケ・オオバノヨ
 ツバムグラ・ズダヤクシュ・アキタフキ・オクトリカブト・ノウゴウイチゴ・オニアザミ・
 オオハナウド・ミヤマカラマツ
○岩上
 クロクモソウ・ダイモンジソウ・ミヤマトウキ
 
 特に渓谷沿い林道終点の泊滝トマリダキ入り口付近の陽地に見られるオオハナウドの群落
は見事である。また途中の林縁に生育するオニアザミは珍しい。オニアザミはアザミの
中でも大型で、茎頂の花が頷ウナズくような形で垂れて咲くのが特徴で、普通は1000m以上
の山地に生える裏日本要素のもので、十和田八幡平における指定植物とされ、特に保護
を要する植物である。
 
[関連リンク(04夜明島渓谷「天狗に憧れた武芸者」「天狗の飛び去った夜明島」
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