05 湯瀬地方の植物
 
                         参考:鹿角市発行「鹿角市史」
 
 米代川の上流、岩手県境に近い湯瀬地方は、平坦地が少なく両側には著しい急傾斜の
山腹が迫セマり、その中を美しい渓流が続いている渓谷地帯であるが、植物の種類数も多
く、分布上注目すべきものが多い地域である。
 1977年発表の「湯瀬地方のフロラ(植物相)」に中から、湯瀬地方の植物を紹介する。
 
 湯瀬渓谷の南側山腹は樹木に覆われているが、北側には多くの草地が見られる。その
草地の大部分がススキ草地で、中に岩角地が転々とあり、アカマツが疎らに生育してい
る。そのアカマツは、渓谷近くの岩壁地にも多くあって、全て天然性のものである。ま
たその中に、コバノトネリコやエゾイタヤ、シナノキなどの小高木が残存しており、そ
の下層の植生から推して、これが草地化してからの年月はそれ程古くないものと考えら
れる。最近この草地へスギの植林が進行しているが、それでもまだ低地ではクズ・アキカ
ラマツ・エゾヤマハギ・オトコヨモギ・ノコンギク・オミナエシ・オトコエシ・クサボタン・ノ
アザミ・オオアブラススキ・ヒキオコシ・ヤマハッカ・ヒメヒゴタイなどの丈の高い草本や、
チャシバスゲ・ヒカゲスゲなどが満遍なく分布していて、草地植生の姿をよく保ってい
る。
 
 またこの草地の中で特に注目すべき場所として、非瀬沢ヒセザワの一ケ所に、小面積の崩
壊地性岩角地に一種の風穴を想わせる草地があり、其処には他に比べて明らかに丈の低
い草地植生が見られる。これはアイズシモツケ・イワデンダ・キバナノカワラマツバ・イチ
ゴツナギ・ナガハグサ・シオガマギク・タチコゴメグサ・ヤマノコギリソウ・ミツバベンケイ
ソウなどの植物によって特徴付けられる。
 
 次に特徴的な植生としては、小豆沢から湯瀬へ抜ける渓谷沿いの旧道に見られる岩壁
地植生である。大地平オオヂタイのグランドを過ぎた旧道後半の地帯では、上下に険しい断
崖が迫り、大きな岩の上にアカマツが連なる、典型的な植物群落が見られる。こうした
場所の中から、石通イシドオシ付近の二、三カ所について植物相調査を行った結果、アイズ
シモツケ・クモノスシダ・コモチレンゲ・ミヤマハタザオ・イワキンバイなどの注目すべき
種類が見付けられた。
 次にまた、この地域が岩手県境付近に位置することから、同県の奥羽山脈地帯でやや
普通に産しながら、秋田県で生育の知られていないものは30種に上るが、その中、ナン
ブサナギイチゴ・オオバショウマ・バイカウツギ・オオトボシガラの4種がこの地方で発見
された。これによって、湯瀬地方の植物相はに、岩手県奥羽山脈地帯と共通する要素の
生育が確認されたことになろう。
 
 この調査で、湯瀬地方の標高200〜400mの低地帯に、シダ以上の高等植物640種、17変
種の目録を発表しているが、この小地域にこれだけ多くの種類が生育していることは、
男鹿半島・太平山・協和町・八幡平に次ぐ種類数であり、中にはオオトボシガラなどの10種
は、秋田県内では湯瀬以外では発見されていないと云う。調査した高田順氏は、分布上
留意すべきものとして特に次のような種類を挙げている。
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