1999年5月下旬の日記

感情の起伏が激しい日々でした。よく泣きました。サイト名を改めて内容を手直ししようという気持ちはこの頃に固まりました。(1999年9月1日記)

5月21日(金) 朝まで長*さんと一緒のよくある1日。
[日記]今日の出講校舎は銀河の自宅から(電車にすぐに乗れれば)ドア・トゥー・ドアで10分。だから油断して家でグズグズしているうちに危うく遅刻しそうになった。仕事は午前中で終わり。同僚の女性と「つばめグリル」(都内に支店がいくつもあるレストラン。そう言えば錦糸町にもあったなあ)でお昼をいただく。ここのハンブルグ・ステーキが好きなんです。
自宅に戻ってホームページの更新なんかをしてから、7時過ぎに例によって「嵯峨野」で長*さん(銀河の彼氏)と落ち合う。長*さんが明日土曜日から一泊の予定で長野のお友だちのところへ遊びに行くと言うので、今日は2人で朝までゆっくり過ごすことにする。「嵯峨野」を出て、区役所通りのはずれにある長*さんが昔よく通っていたスナック(普通のスナックね)に連れていってもらう。なんと「メモリー」(有名なニューハーフのお店。銀河も以前何回か南麻衣子さんに連れていってもらったことがある)のちょうど真向かい。沖縄出身のママさんとタレントをやってる娘さん(銀河も名前はどこかで聞いたことがある)の2人で切り盛りしているアットホームなお店だ。長*さんも久しぶりにあった常連客の人たちと楽しそうにお話ししている。銀河はカラオケを2曲ほど歌う。お店ではずっと長*さんの彼女ということで通用してたけど、実際のところどう見られていたんだろう。ちゃんとパス
用語についてを参照)してたのかなあ。だったらうれしいんだけど。
11時までそこにいて、お茶を飲んでからホテルへ。今日はたっぷり時間があるけど、こういう時ってたいてい2人ともグウグウ寝込んでしまうんだよね。やるこたぁやったけど。で、朝の8時にチェックアウト。
新宿西口のバスターミナルで10時半のバスのチケットを買って、長*さんの事務所で一泊用の荷物を整えてから、朝食とお茶。長*さんがバスに乗り込むのを見送ったあと、ヨドバシカメラのパソコン売場を探検し、12時過ぎに帰宅する。
[回想記]スナックの名前は「てまり」。タレントをやっている娘さんはアイリちゃんといって、現時点ではプロミスのテレビCMに出ています。(1999年9月1日記)

5月22日(土) 長*さんは長野へ。
[日記]長野に行く長*さんを見送ってから帰宅する。長*さんがいないのなら夜遊びをする理由もない。今日は一日中、家でたまっている仕事をこなしたり、明日の会議(予備校のテキスト作成関連)の準備をしたり、掃除・洗濯の類を片付けたりすることにした。夕方になって長野に着いた長*さんから電話。今回は長*さんの高校時代のお友だち(ブラスバンド部の仲間)を訪ねての一泊旅行なのだが、そのお友だちの息子さんが7、8年前浪人生時代に横浜の校舎で銀河の授業を受けていたらしいと言うのだ。年間1000人とか2000人の生徒を相手に授業をしていて、しかもキャリアが15年にもなれば、そういうことがあっても不思議ではないのだが、ちょっとビックリする。
夜になって、亀戸で二次会中の香澄に電話を入れる。今日は「玉三郎になる」という企画物(年に1回
「エリザベス」亀戸店では、テレビ局から借りてきた衣装で歌舞伎の女形風の白塗りを楽しむという企画物を行っている。銀河も過去2回やってみた)に挑戦し、結構楽しめたようだった。「女装じゃなくって仮装だから気が楽だった」という香澄の気持ちはよくわかる。とにもかくにも元気そうでよかった。
[回想記]実はこの「玉三郎になる」という企画、銀河も予約を入れていたのですが、絶縁宣言をしてしまったためキャンセル。スタッフの方々にはご迷惑をおかけしました。申し訳ありませんでした。(1999年9月1日記)

5月23日(日) 「嵯峨野」で教え子に遭遇。
[日記]今日は朝から会議。2学期の私大系長文読解のテキスト作成の話し合いと作業で、夕方まで会議室に缶詰。疲れてしまった。うちの予備校のテキストや模擬試験は、ひとりのまとめ役の講師のもと、数人の講師からなるグループで作成するのが原則。で、私大系の長文読解のテキスト(成績上位者用と中位者用との2種類を作る)は銀河がまとめ役(というか雑用係)。生徒が使うテキスト本体と、講師用のマニュアル(解答や訳文やポイントが載っている教え方の手引き書)の両方を作らなければならない。講師同士の意見が食い違ったりするので、きびしい議論の連続で大変です。生徒に評判のよい授業ができること(プレゼンテーション能力が必要)と、よい教材・模試が作れること(英語の実力と地道な入試問題研究が必要)の両方が揃ってこそ一流の予備校講師(片方だけの講師が多いんだけどね。よくあるのは生徒受けのよい超人気講師なんだけど英語が全然できない人)。そういうわけで、ちょっとがんばりました。
会議が終わった後いったん自宅に戻り、少し休息してから、7時半に長野から帰ってきた長*さんの待つ「嵯峨野」へ。気が向いたので久々にミニのノースリーブのワンピ(最近はほとんどパンツルックかロングスカートだった)。アップルパイのお土産をもらい(家に帰ってから食べたらとてもおいしかった)、同席してた(長野の人とはまた別の)長*さんの高校時代のお友だちとも談笑。長*さんの彼女扱いだったけど、本当のところどう思われてたんだろう。最近、長*さんは誰に対しても(仕事の関係の人とか昔からのお友だちとか)銀河のことをパートナーとして紹介してくれるけど、(すごくうれしいけど)長*さんに迷惑かけてないか心配だ。そうこうしてると、だいぶん離れた席にいる若い男の子たち7、8人のグループがしきりにこちらを気にしている。「なんだろうなぁ、オカマだとか言われてるんだったらヤだなぁ」と思っていると、少し大きな話し声が耳に飛び込んできた。「あれ、***の##先生だよね。俺、お世話になってたんだよ」(***には銀河の勤務先の学校名、##には銀河の本名が入る)。げっ、教え子だ。こっちから愛想を振りまきに行くには遠すぎるので放っておいたけど、こっちまで来て挨拶してくれればいいのに。街でよく教え子に出会う話は面白いネタが多いので(
「エリザベス」亀戸店の二次会帰りにみんなで一緒にいる時にいきなり本名で呼びかけられたことも2回ある)、そのうちまとめて書こうっと。そう言えば、エリザベスの若手有望メイクアップ・アーティスト(ジェットプールのメンバーでもある)茂木さんも、銀河の教えてる学校の出身者なんだよね(直接教えたことはないようだけど)。茂木さん、銀河は今年度から毎週水曜日に、茂木さんが通ってた校舎に出講してます(個人的連絡でした)。
「嵯峨野」を出た後はヴェローチェでお茶を飲んだ後、11時頃、久々に日曜の「嬢」(女装スナック)へ。当分は女装遊びのお店には行かないという方針に反するが、たまたま明日月曜日が休みになったので(年間授業回数をどの曜日も同じにする必要があるため、時々平日でも休みになることがある)、この機会を逃せば当分日曜日の「嬢」には行けないと考え、例外的措置をとることにした(ってほど大げさなもんでもないが)。日曜の「嬢」は粧子ママのおいしい手料理が食べ放題で2000円。というわけで新宿界隈で遊んでる子たちが続々とご飯を食べに来る。日曜の「嬢」の常連の都美也子ちゃんとかNOVAさんがやって来たので、いろいろと話し込んだ。
2時半過ぎに「嬢」を出て、長*さんといつものレンタルルームへ。結構ぐっすり眠れたなあ。10時にレンタルルームを出て、ルノアールのモーニングセット。紀伊国屋で本を見たりしてたらお昼になったので、一緒に
カレーを食べてから長*さんと別れる。自宅に戻ったのは1時だった。
[回想記]昔の教え子に町でばったり会うというケースは、本当によくあります。一度新宿でお母さまと一緒に買い物中の教え子に声をかけられたときは、お母さまがものすごく困惑した顔をなさっていたのが印象的でした。そういえば新宿2丁目をぶらぶらしていたときに声をかけてきた教え子はゲイの子で、「先生、ここらへんの店でアルバイトしたいんですけど、行きつけのいい店教えてください」って言われましたっけ(ちなみにゲイのお店は新宿2丁目に密集していますが、女装スナックの方は2丁目、3丁目、歌舞伎町、ゴールデン街に分散しています)。(1999年9月1日記)

5月24日(月) 尾崎翠のホームページを見つけた。
[日記]長*さんは今日の夜は早い時間から「ジェネ」に行くと言う。女装遊びの店には行きたくないし、そもそも「たかみ」に行かないのに「ジュネ」に行くのでは、お世話になった村田高美さんに申し訳ない。そんなわけで長*さんには悪いけど、今晩はずっと自宅で仕事をしたり本を読んだりすることに決めた。その代わり明日(火曜日)の朝早く(5時頃)新宿に出て、昼過ぎまで長*さんと一緒に過ごすことにする。
今日いちばんうれしかったのは、YAHOOで検索してるうちに
「尾崎翠」のホームページを見つけたこと。尾崎翠って言ってもほとんどの人は知らないと思うけど、昔の(もう死んでしまった)小説家の中では中島敦と並んで大好きな人(今の作家なら酒見賢一と小野不由美)。「第七官界彷徨」や「こおろぎ嬢」という作品が多少有名で、筑摩書房から出ている文庫本サイズの日本文学全集の尾崎翠の巻に収められている。最近では、群ようこさんが文春新書から『尾崎翠』というタイトルの評伝を出している。尾崎翠の作品を読んでいると透き通ったみずみずしさとでもいうべきものを感じ、少女の感性というものがあるとしたらこういうものを言うのだろうかなどと考えたりする。尾崎翠が好きでホームページを作っている人がいるなんてビックリした。あまりビックリしたので、ゲストブックに書き込みまでした。もしもヒマだったら銀河の書き込み、覗きに行ってみてくださいね。
[回想記]尾崎翠は超おすすめです。若くして才能を発揮しはじめたのですが、東京で精神を病み、郷里(鳥取)に強制的に連れ戻されて、後半生を文壇とは無縁の場所で神経障害に悩まされながらひっそりと送りました。亡くなるときに「このまま死ぬのならむごいことだねえ」と言ってぽろぽろと涙を流したというエピソードが残っています。筑摩書房の文庫本サイズの日本文学全集は、作家の選び方も収録作品もちょっとユニークです。(1999年8月24日記)

5月25日(火) SRSを受けたYちゃんと話し込む。
[日記]少しゆっくり眠り、朝7時過ぎに新宿に出て「シエン」で長*さんと合流。すぐに長*さんの事務所に移動してビジネスの話を少しする。9時過ぎにルノアールでモーニング。10時になり、いったん別行動をとることにする。銀河は都内某所にホルモンを打ちに行く。
で、ホルモンを打ちに行った先の産婦人科医院で、久しぶりにお友だちのYちゃん(事情が事情なんで匿名)にばったり出会う。Yちゃんはニューハーフ系の雑誌のグラビアを何回も飾ったことのある(その世界では)有名な子で、2年程前(銀河がホルモンを打ち始めて3か月目くらいの時期)にこの医院の待合室で知り合って以来のお友だち。まあ、お友だちと言っても、2、3か月に1回待合室で一緒になって、時間があればご飯を食べに行く程度なんだけどね。前回は3月に会ったんだけど、今年の1月に日本国内の某所でSRS
用語についてを参照)を受けて、その後体の調子がよくないと言ってたんで、心配していたところだった。3月よりはだいぶんいいけど、疲れやすくて大変だと言う。それよりも何よりも、お金がなくってきついらしい。Yちゃんは今ではニューハーフ業界をやめ、東京からそう遠くない温泉町で女性として働いているのだ。体が女になったことですごく楽な気持ちになれたけど、今後の生活のことを考えると、どうすればよいかわからなくなって気が滅入るんだと言っていた。今日もこれから手術のアフターケアのため、あと4つ病院をまわるのだそうだ。外が暑いので待合室の中でしばらく話し込んだ。何を言えばよいのか見当もつかない。Yちゃんに一方的にしゃべらせてあげて、銀河は聞き役に徹するだけだ。だけど、かったるそうにしゃべっていたYちゃんが最後には以前によくやっていたように軽口をたたき始めたので、少々安心する。「あなたも1年前にはおかま丸出しだったのに、お化粧もナチュラルになって、それなら完全にパスしてるわよ」って言ってもらえる。ナチュラルもなにも、今日はパウダリーファンデとリップだけの5分間化粧だ。Yちゃんと別れて新宿に向かう電車の中で、今後の自分のこと、今後のルルのこと、今後の香澄のことを考えていたらボロボロ涙が出てきた。「明るく楽しく」なんてムリだよ、石川さん(TVNEWS in Kansai 5月20日号参照)。
1時に長*さんと再び合流。新宿西口の
「三国一」(東口に本店がある銀河愛用の手打ちうどんの店。サラダうどんが美味)で昼食。その後高層ビルの1階にある広場で一緒にソフトクリームを食べて、2時過ぎに別れる。銀河は南口の紀伊国屋で大量に本を買い込んで(重いから次回からは紀伊国屋のサイトからオンラインで注文しようっと)、5時過ぎに帰宅。仮眠をとってから、明日の授業準備に入った。
[回想記]SRSを済ませた知り合いの話で共通しているのは、体調がすぐれないということと、今後の生計が不安だということ。SRSを望んでいる方はそこのところをよく考えておいてください(自分にも言い聞かせています)。文中でアマチュア女装者を対象に石川さん(アマチュア女装交際誌『くいーん』編集長)が発言された「明るく楽しく」という言葉にケチをつけたのは、明らかに銀河の八つ当たりでした。不適切なことを申し上げたこと、お詫びいたします。(1999年9月1日記)

5月26日(水) うちの近所に新しい書店が開店。
[日記]夜の授業が終わって都内に戻り、最寄りのJRの駅から最短距離ではないルートを選んで自宅へ帰る途中、新しい大型書店がオープンしているのに気づいた。本屋が大好きなもんで(本屋とCD屋があればあとは何にもいらないかもしれない)、店内をチェックしてまわって2時間近くも遊んでしまった。品揃えはまあまあなんだけど、他の店では見かけない本も置いてあったので、結構使えるかもしれない。それになんと言っても、夜11時まで開いているのが(夜型の銀河としては)最高。家の近所での楽しみがひとつ増えた。開店祝いに、最近文庫本化されたばかりの小野不由美『東京異聞』(新潮文庫)と、『こころの科学セレクション アイデンティティ』(日本評論社)とかいう本を買った。小野不由美さんのは単行本でも持ってるけど、文庫本には解説とかもついてるからね。ところで『東京異聞』の「京」っていう字は本当は「京」じゃあなくって、「京」の「口」の部分が「日」になっているんだよね。諸橋徹次の『大漢和』にも載っている漢字で、「きょう」ではなくて「けい」って読む。ワープロだのパソコンだのってこういう特殊な字がないのが不便だ。よく言われることだけど、「とうしょうへい」のような出現頻度の高い人名ですら、「とう」の字が登録されていないから漢字表記できない(ということはテレサ・テンを漢字表記することもできない)。欧米では著作権の切れた過去の文学作品が次々とWeb上で公開されており、研究者たちがその恩恵を受けているが(特に有名なのがグーテンベルク・プロジェクト)、日本で同様の試みが進展していないのは旧漢字が表記できないというのが最大の理由だそうだ。京都大学の人文科学研究所でパソコン上での自由な漢字表記のためのプロジェクトがスタートしてるって話を耳にはさんだことがあるけど、早くなんとかならないものかなあ。実はもうなんとかなっていて銀河が知らないだけなのかもしれないけど。知ってる人がいたら、ぜひ教えてくださいね。
[回想記]本文中のグーテンベルク・プロジェクトは、「プロジェクト・グーテンベルク」の間違いです。日本での同様の試みは青空文庫でなされています。日本語の場合、旧漢字だけでなく縦書きの問題もネックになっているようですね。小野不由美さんはジュニア小説出身。スケールの大きなストーリーテラーです。去年ヒットした『屍鬼』も素晴らしい作品ですが、銀河のようにホラーが苦手な方には講談社X文庫ホワイトハートから出ている『十二国記』シリーズがお勧めです。中国を思わせる架空の世界を舞台に繰り広げられる壮大なスケールの連作小説で、RPGの好きな人だったらきっと夢中になれると思います。(1999年9月1日記)

5月27日(木) プリンターを買った。料金払い忘れで電話が使えない。
[日記]午前中で仕事は終わり。速攻で新宿に戻り、ヴェローチェで待っていてくれた長*さんと一緒にお昼をいただく。今日は中華料理。お店の女の子(中国人)に「お姉さん、きれいね」と言われる。「きれい」って言われるのはたいてい「この人は本当は男だ」と読まれている時だから、内心(かなり)ガッカリする。
その後、T-ZONEでプリンターを買う。先日なにかの折りにりのが勧めてくれたエプソンのPM-770Cにする。iMacとオソロのスペシャルカラー・ヴァージョン(発売されたばかり)だ。他のメーカーからもiMacカラーのプリンターが発売されているけど、エプソンのやつはプリンターカバーがストロベリー(うちの場合ね)のiMacカラーになっているだけでなくて、本体もスケルトンのアイスホワイトなのね。店頭には展示されていなかったので、うちに帰って箱を開けてみて初めて気がついた。うれしくって思わずニタニタニタニタ(グレート・ニタって、違うか)してしまった。りのの言うとおりにしてよかったっと。ちなみにスキャナーもりのに言われるままに買ったエプソンのGT-7000Uを使っている。あとはデジカメを買えばとりあえずはOKなのかな。よくわからないからまた、りのに教えてもらおう。
で、プリンターでひと通り遊んだ後で、大変なことに気がついた。期日までに電話料金を払うのを忘れちゃっていたみたいで、自宅の電話が止められている。というわけで、明日(金曜日)の午後に電話局に払い込みに行くまでは電話が使えない(携帯は使えるけど)。メールの返信だとか、掲示板へのレスだとか、ホームページの更新だとか、少し遅れてしまったのはそういうわけなの。ごめんね。仕方ないから今夜はインターネットはお休みで、まだ使いこなせていないソフトをあれこれ試してみることにする。
夜になってルルと久しぶりに電話で話をする。このことについては、明日(金曜日)の日記で......
[回想記]今日の時点でデジカメはまだ買っていません。コダックのiMacカラーのやつを買うかもしれません。ところで銀河は金銭面のマネージメントがまるっきりダメで、料金払い忘れのたぐいのミスが日常茶飯です。その話題はまたいずれ。(1999年9月1日記)

5月28日(金) ルルの決断。香澄のこと。そして......
[日記]木曜の夜、久しぶりにルルと電話で話をする。ルルも次号限りで『くいーん』(アマチュア女装交際誌)から離れ(フォトコンにもエントリーしなかった)、「エリザベス」にも今後いっさい行かない決断をしたことを確認する。これから何をやろうとしているのか、いろいろと話してくれた。ルルは言葉数の少ない子だけど、その少ない言葉からルルの強い意志を感じとることができた。ルルはたぶん誰の助けも借りずに、たった1人で強く生きていこうとしている。単なる感傷に過ぎないんだろうけど、あっちにぶつかりこっちでつまずきあれこれ思い悩んでいる銀河がぽつんと置き去りにされたような気がして、少し寂しい気持ちになった。6月に入ったら会う約束をして、電話を切った。
その後、香澄に電話した。ルルとの電話の後いろいろ考えたことを引きずっていたせいで、香澄に対して少し突き放したものの言い方をしてしまった。自分の性別違和(用語についてを参照)に正直に生きていきたいんだったら、1人で生きていく力と覚悟が必要だ。力も覚悟も持てないんだったら、たとえどんなに性別違和感が強かったとしても、「趣味の女装」でお茶を濁していた方が絶対に幸せだ。香澄にはもっと強くなってほしいんだ。
りのの声が聞きたくなって、りのにも電話した。ここのところずいぶん遠い人になってしまったように感じていたが、銀河と似たところのたくさんある子(寂しがり屋で人間が甘くて、でもって、性善説を信じて生きている)だから、声を聞いているうちに安心してしまって、グズグズと勝手なことをひとりでしゃべりまくってしまった。ごめん。
朝まで一睡もせずに考え込んだ。夜が明ける頃、答えが出たような気がした。誰にも頼らないし、寄りかからない。ただ単に1人でここにいるだけだ。1人で流れていくだけだ。凍てついた冥(くら)い旅。緩慢な自殺。どうせ破滅にしか向かわないのだったら、ふらふらぐらぐらする自分をそのまま受け入れることにしよう。
[回想記]ルルと銀河の関係って、信頼しあえる仲間であるのと同時に、トランス(用語についてを参照)のライバルだったような気がします。アマチュア女装者の遊び場である「エリザベス」では異端のホルモン・ユーザーだった銀河のことを、ルルは仲よくなる前からかなり意識していたそうですし、銀河が『くいーん』や「エリザベス」と絶縁していなければ、ルルもまだしばらくはアマチュア女装界のなかで過ごしていたことでしょう。そしていま、ルルが自分の道を歩き始めたことに、今度は銀河が影響を受けているようです。(1999年9月1日記)

5月29日(土) ワープロ専用機からiMacへ。
[日記]朝8時に新宿に出て長*さんと朝食。その後、長*さんの事務所でコーヒーを飲みながらまったり過ごす(2人して眠ってたんだけど)。新宿に出てきているはずのりのと会いたかったんだけど、携帯は留守電になったまま。おおかた菜摘ちゃんとどっかでラブラブなんだろう(後で確かめたらやっぱりそうだった)。12時半に「三国一」(手打ちうどんのおいしい店)でお昼をいただく。本屋で「日経ネットナビ」の最新号その他を買って、3時頃までヴェローチェでお茶を飲み、長*さんといろいろ話し込む。
自宅に戻り家事を片付け、授業準備と仕事関係の原稿書き。その後iMacとたわむれる。
iMacを買ってインターネットに接続してから、仕事関係の原稿のうちプリントアウトの必要がないものは、Simple Text(マック付属のエディター)を使って書き、Eメールで関係部署の担当者に送信するというスタイルにすぐに切り替えることができた。今回プリンターを買ったので、仕事関連の作業をワープロ専用機(キャノワード)からiMacへと本格的に移行させることにした。必要な辞書のCD-ROMもかなり買い込んだし、インターネットで英文コーパス(巨大な例文集みたいなもの。電脳派英語教師の必需品)にアクセスする方法もわかったからね。銀河の書き仕事は大きく分けて2種類。授業中に生徒に配布する補助プリントの作成と、テキストや模試の作成(出版社から依頼されたまま放ってある参考書の執筆もこっちに入ることになる)。後者は(たぶん)すぐにでもすべてiMacでできちゃうけれど、授業用のプリントの方は、必要なデータをワープロ専用機用にフォーマットされたフロッピーに蓄積してあるし、なによりもワープロソフトの使い方がまだよくわかっていない(とりあえずマックに最初からバンドルされているクラリスワークスのワープロを使ってみようと思うけど、やっぱりWORDかなんかを買った方がいいのかなあ)。しばらくはiMacとワープロ専用機を併用していかなければならないだろう。
そうそう、長*さんの会社の製品のリーフレットを(綺麗な色刷りで)作ってあげる約束もしたんだっけ。
夕方、香澄に連絡を入れようとしたら、香澄の携帯が通じなくなっていた。ビックリしてりのに電話してみる。まだ「エリザベス」亀戸店には現れていないみたい。なにか起こったんじゃないかと心配で仕事が手につかない。どうしよう。夜になってもう1度りのに電話すると、香澄は元気で遊んでいるとのこと。安心する。10時過ぎに二次会中のりのに電話し、香澄に代わってもらう。携帯の調子が悪いので買い換えのため、今の携帯の解約をしたらしい。元気そうな香澄の声を聞いて、涙が止まらなくなった。
[回想記]現時点でほぼすべての作業が、ワープロ専用機からiMacへ移動しました。ワープロソフトは使わず、Jedit(エディター)を使っています。香澄は我が子みたいなものだから。(1999年9月1日記)

5月30日(日) ゆうりんに会う。
[日記]自宅でゆっくりと休養をとって、夕方から新宿へ。昔の教え子で今は友だち付き合いをしている女性(プロの歌手。この子についてはいずれこの日記でも書くことになると思う)が相談ごとがあると言うので、1時間ほど一緒にお茶を飲む。
5時過ぎに「CDサークルChange」に到着。建物の入り口で偶然、雑誌『ひまわり』編集長のキャンディーさん(テレビにも出ているあの有名なキャンディーさんね)と一緒になる。しばらくして大阪から仕事で出てきたゆうりん(鳥原優子さん)も登場。場所がわからなくなったゆうりんを近くの公園まで迎えに行く。今日「Change」に来た第一の目的は、ゆうりんに会うことなのだ。
今日の「Change」はD-ROOMというイベントだか集会だかの日で、10人以上ものお客さん(というよりも美也子ちゃんのお友だち)が集まっていた。D-ROOMっていうのには銀河は初参加だったのでよくシステムがわかっていないのだが、ふだんは無料の会員も1000円支払ったので、たぶん「エリザベス」で毎月やっている持ち込みパーティーみたいなもんだと思う(見当はずれだったら、ごめん)。正確なところは「Change」のホームページに問い合わせてください。
美也子ちゃんとは2人で美也子ちゃんの私用部屋の奥にこもり、ここのところのさまざまなことについてじっくり話をした(2時間近く)。その後でゆうりんともいろいろ話をすることができた。その詳細をここに書くことはできないが、美也子ちゃんの気持ち、ゆうりんの気持ちがうれしかったし、文字通り「有り難い」ことだと思った。1人で生きていく覚悟はできている。だけど、1人じゃないんだなと痛感した。
10時過ぎに場所を「嬢」(女装スナック)に移す。ここで長*さんとも合流。ゆうりんに長*さんを紹介する。大阪ノリのゆうりんのことを、長*さんはプロの子だと思ったみたい。明日は朝から仕事なので、12時前には帰宅の途につく。
今日は久しぶりに心の底から楽しかった。今日お会いしたみなさん、どうもありがとうございました。また遊んでくださいね。
[回想記]この日、美也子ちゃんとゆうりんが示してくれたお気持ちは、一生忘れません。以前よりも距離が遠くなるとしても、銀河のおふたりに対する気持ちは変わりませんから。(1999年9月1日記)

5月31日(月) プロジェクト・グーテンベルク。
[日記]午前中の授業が終わった後の空き時間に、ちょっとした用があって都美也子ちゃん、長*さんとそれぞれ別々に会う。いったん自宅に戻って少しだけ休憩し、夜の授業へ。教室の空調が効きすぎていて鼻がグスグスし始めてしまった。授業終了後、新宿に出て「嵯峨野」で長*さんと夕食をとる。その後ヴェローチェでお茶を飲むといういつものコースで、今日は早めに帰宅。
5月26日付の日記で「グーテンベルク・プロジェクト」と書いたのは、「プロジェクト・グーテンベルク」の間違いだったことに気づいた。これは著作権が切れた文学作品をすべて電子データ化してインターネット上で公開し、自由に検索できるようにしようという壮大な試みで、サイト名はルネッサンスの三大発明のひとつである活版印刷術を発明したグーテンベルクにちなんで名づけられている。活版印刷術が書物というメディアを生み出し、書き言葉による表現の大衆化を呼び起こしたように、電子メディアが情報の新たなる地平を創出しつつあるのだ。とにかく一度アクセスしてみることを勧める。文学研究者でなくても、無料で(しかも自宅にいながらにして)過去の文学作品が楽しめるというのは魅力だ。英語教師をなりわいとしている者としてひとこと付け加えさせていただくと、サキ(Saki)やオー・ヘンリー(O Henry)あたりの短編小説が英語力のブラッシュアップには最適なんじゃないかな。オー・ヘンリーはOではなく頭文字Hのところを見るようにね。
[回想記]若い頃はどうしても重厚な文学作品(ロシア文学とかね)に惹かれがちで、アメリカ文学、特にサキやオー・ヘンリーなんてところはバカにしてたのですが、年をとってくると(さらに多少英語ができるようになってくると)このような軽くてそれでいて深い味わいのある短編小説もいいなあと思うようになりました。(1999年9月1日記)


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