プレパラートの作製
(封入剤等の情報)
Last update: 99/05/07
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目次
- A)カバーグラスのシール
- ワセリン、パラフィン、ワラップ、マニキュア、エポキシ系糊/塗料、バルサム、パラフィンバルサム
- B)水溶性の封入剤
- グリセリン系 グリセリン、フォルマリン+グリセリン+アルコール
- クロラール系 ガムクロラール、ホイヤー氏液 (Hoyer's Medium)、蘚苔類用の液、ハインツ液
- 最近のもの Aquatex(メルク社)
- 水飴系 水飴、レブロース・シロップ levulose syrup、アパチー APATHY のゴムシロップ
- ゼラチン系 グリセリン・ゼラチン、グリクロジェル glychrogel
- 特殊封入剤 キーファー氏液 (Keifer's media)
- C)樹脂による封入
- カナダバルサム、エンテラン(Entellan New:メルク社)、EUKITT、ソフトマウント(Softmount:和光)、プルーラックス Pleurax
- D)その他Tips
- E)情報源
A)カバーグラスのシール
カバーグラスの周囲を何らかの材料でふさぎ、封入に使った液の蒸発を防ぐ方法。水溶性の封入剤を使用する際も、多くの場合はシールをした方が長く保存できる。単なる水で封入した場合は、シールしても長期保存は困難。
- ワセリン
スパーテル(金属の薄いへら)を加熱してワセリンのかたまりに触れると、ワセリンが溶け、スパーテルに付く。固まる前にカバーグラスの周りをぐるりとなぞってシールする。押しつぶし法による植物の染色体標本を作った時、とりあえずこの処理をして乾燥を防ぐ(後日カバーを外し、永久プレパラートにする)。
- パラフィン
前項に同じだが、経験なし。ワセリンは固まっても柔らかいが、パラフィンは固いのではがれ易いかもしれない。
- 包埋に使ったパラフィン屑をスパーテルにのせて焔で温め、まず覆ガラスの四隅に滴らして動かぬようにしてから、残りの縁にも同じように隙き間なく塗り付けるのである。[10]
- ワラップ
- ワセリン、ラノリン、パラフィンを2:2:1の割合にまぜ、蒸発皿などでとろ火でゆっくり煮る。[34]
- マニキュア
化粧品のマニキュア。1回塗っただけでは不十分で、失敗した事が多い。
- 菌類の研究者の間で、固まらない封入剤で封入したプレパラートを扱いやすくする方法として、マニキュアで周囲を固めるという方法が使われています。方法は簡単。まず、プレパラートを作ります。学芸員1号さんの方法でいけば、水飴が固まるまで放置しておくとよいでしょう。十分固まってから(その間埃がかぶらないように!)、はみ出した水飴を濡らしたティッシュペーパーやペーパータオルで丁寧に拭います。それから、透明にマニキュアでカバーガラスの周囲とスライドグラスの間を塗り固めてやるのです。何度か透明マニキュアを塗り重ねたら、赤いマニキュアを塗り重ねて、さらに木工用ボンドのような酢酸ビニル系エマルジョン接着剤をマニキュアの表面に塗り、もろいマニキュア皮膜を保護して出来上がりです。[22]
- エポキシ系糊/塗料
- マニキュアはお手軽気軽ですが,被膜が弱すぎる嫌いがあります。エポキシ系の糊(あるいはエポキシ系の塗料:船底塗料など)なら安心です。ただし,それにしても,糊を付ける面のガラスが清浄であることが絶対条件です。これはマニキュアでも同じです。[21]
- バルサム
- キシロールで軟化させたカナダバルサムをカバーグラスの周辺にぬり乾固させる[1]
- このほか、カバーグラスの上にキシロールで軟化したカナダバルサムを落し、さらに大型のカバーグラスをかける方法もある(この場合、下のカバーグラスは18x18mm、上のカバーグラスは22x22mmぐらいのを用いるとよい)。[1]
- パラフィンバルサム
- パラフィンとカナダバルサムを等量とり、蒸発皿の中でとろ火で鉛色になるまで煮る:牧野佐二郎による[1]
B)水溶性の封入剤
昆虫、菌類などの分野では古くからよく使われているらしい。後述の樹脂による封入に比べ手軽に処理できる。また、一部の色素は、アルコール・キシロール等による脱水を行うと退色してしまうため、樹脂による封入ができない場合がある。
- この方法は、液状のまま(グリセリンの様に)の物質を使うか後に固化(グリセリン・ゼラチンの様に)する物質を使うかで違いがあります。グリセリンは、いつでも簡単に載せればOKですが、カバーにゴミなどが付いたりすると、これを拭いたりすることが困難です。ゼラチンを含むものは、使用前に加温して、それが固化する前に適用するという煩雑さがあります。[6]
- グリセリン
- 薬局方のものでよい。最も簡便であるが、標本の寿命は短い。覆ガラスの周辺をパラフィンで封ずると、よほど長保ちするようになる[10]
- 純グリセリンは海産クマムシの永久標本封入剤としてはかなり一般的[26]
- グリセリンに封入する方法が書いてある本をようやく発見しました。書名は「The biology of free-living nematodes」で,著者はW.L. Nicholas。初版本(1975)です。第2版ではこの記事は削除されています。原典はSeinhorst (1959)という論文らしいのですが,その論文が掲載されている学術誌などについては分かりませんでした。 ちなみに,クマムシ研究者の中では米国のC. Beasley氏がこの方法でクマムシをグリセリンに封入しています。
・遅い方法
固定した虫を,時計皿に入れたグリセリン5%水溶液に浸け,デシケータ中で約1月間水分を蒸発させる。
・早い方法
固定した虫を,時計皿に入れたA溶液(96%エタノール:グリセリン:水=20:1:79)に浸け,さらにこれを96%エタノールを入れた密封容器の中に置いて,35〜40度
で12時間保温する。
次に,時計皿にB溶液(96%エタノール:グリセリン=95:5)を注ぎ,これをシャーレに入れて,シャーレの蓋を少しずらしておき,40度で少なくとも3時間放置。
[26]
- フォルマリン+グリセリン+アルコール
プランクトンなど、一時プレパラートを作って見ていたものをそのまま固定し、「永久」保存したい場合に使われるようである。材料がスライドグラスにある程度固着していないと、水溶性の封入剤などを滴下しても材料が液の端に逃げてしまい、うまく封じることができない(プランクトンが水の中を漂っているような場合)。液が固化しないので頼りないのは仕方ない所か。
- 固定液として、フォルマリン、グリセリン、アルコールを等量ずつ混合した液をカバーグラスのふちから1滴入れ、適度に乾燥するのを待ってカバーグラスの周囲を密封する。[1]
- ガムクロラール
- ガムクロラール液の作り方:アラビアゴム粉末8g、抱水クロラール30g、水10ccを乳鉢に入れ、乳棒を用いてよく砕いて溶かす。これに氷酢酸1cc、グリセリン2ccを加えて再びよく攪拌して溶かす。これを数日間静置して沈殿部分を除いて使用する。急ぐときは吸引濾過または遠心沈殿してごみを除く。[15]
- ダニの封入に、ガムクロラール液を使っていました。
柔らかいダニ、中気門・前気門・無気門あたりは、封入直後、下からマッチであぶり、体液を沸騰させて、手足を伸ばし、透明な標本にしていました。乱暴ですが、これがなかなか綺麗な標本になります。[2]
- 僕は、ウミグモ等の標本作りにも使っています。[2]
- ダニの封入にはガムクロラール液(志賀昆虫普及社のネオシガラール)を使っています。が、年数が経てば乾いてしまいますから「永久」標本にはなりません。[5]
- しっかり固化するまでは、水平にして置いた方が良いですね。ただ、しっかり乾けば、立てても大丈夫です。[2]
- ガムクロラールは、かなり広範なものに使える便利な封入液だと思います。封入に失敗した場合は、お湯につけてやれば、すぐにはずれて、封入し直せます。そのまま、3〜5年は、持ちますし、その後、また、お湯ではずして、封入し直すこともできます。[2]
- ただ、標本の色は残りません。この点は、残念です。[2]
- ホイヤー氏液 (Hoyer's Medium)
ガムクロラールと同系統のもので、資料[30]によれば、別名ベルレーゼ液ともいう。各種の変法があるらしい(Higgins, Faure, etc.)。
なお、この資料には小さなムシを扱う際に有用な情報が多く掲載されていて、大変参考になる。
資料[31]に紹介されていた文献。
- Humason, Gretchen L. 1967.
- Animal Tissue Techniques. 2nd Ed. San Francisco: W. H. Freeman. pages 131-132.
- Beek, R. M. 1951.
- Improvements in the squash technic for plant chromosomes. El Aliso. 3: 131-133.
- Anderson, L. E. 1954.
- Hoyer's solution as a rapid permanent mounting
medium for bryophytes. Bryologist 57: 242-244.
- ホイヤー氏液の作り方は,蒸留水50ml,抱水クロラール200g,グリセリン20g, アラビアゴム30gをビーカーに入れて加熱して溶かしたのちに,グラスウールなどで吸引濾過する,です。[4]
- 1)良質のアラビアゴム末に蒸留水を加えた後30分ほど室温に放置して,アラビアゴム末を十分に膨潤させる,2)沸騰しないように気をつけながら加熱・撹拌してアラビアゴムを完全に溶解させる,3)グリセリンを加えてよく混ぜる,4)抱水クロラールを加えて溶解させる。完全に溶解・混合したら加熱をやめる,5)混合液が熱いうちに吸引濾過。[26]
- Hoyer's Medium
gum arabic 30.0 g
glycerol 16.0 ml
chloral hydrate 200.0 g
distilled water 50.0 ml
Dissolve gum in water, a little heat helps; add chloral hydrate, then glycerol.[31]
- Hoyer's solution consists of 50 ml distilled H2O, 30 g gum arabic, 200 g chloral hydrate, and 20 g glycerin. The gum arabic should be the crystalline form since the powdered form is difficult to wet. Ingredients are mixed in the given sequence, taking care that one ingredient is completely dissolved before adding the next. This medium is also called Berlese's fluid; there are numerous modifications such as de Faure's (using 50 g chloral hydrate). NOTE: Care must be taken with chloral hydrate compounds; breathing the fumes and exposure to the chemical are dangerous. The final product is filtered through bolting cloth or glass wool.[30]
- 溶けなかったのは加熱されなかったから,ゴミが多かったのは吸引濾過されなかったためではないでしょうか。吸引濾過の装置が利用できない場合は,1週間ほど放置して(乾きますからフタがいります)上澄みを使うのでもいいそうです(これは私はやったことありませんが)。[4]
- ガーゼを使って濾過したのですが、なかなかゴミがとれないので、ろ紙を使ってみたところ、何日おいてもさっぱり下の落ちてこず、ついに根負けしてしました。[9]
- 数日間放置して濾過しようとすると,ほぼ間違いなく「いつまで待っても落ちずに根負け」します。これは,濾紙の下側にしみだした液が真っ先に乾いて被膜を作ってしまうからで,10年待っても落ちません。吸引濾過装置がない場合は「蒸し器」が応用できるかもしれません。混合液は冷えると粘性が増し,また,乾燥すると濾紙が目詰まりしますから,高温多湿の蒸し器の中で濾過すれば落
ちると思います(試したことはありません)。[26]
- 通常処方のホイヤー液ではクマムシやキノリンカ(動吻動物)などクチクラが薄い動物はほどなく透明化してしまう。これを避けるためのHigginsの変法が考案されている。原典は,
- Higgins, R.P. 1983.
- The Atlantic Barrier Reef Ecosystem at Carrie Bow Cay, Belize, II: Kironrhyncha. Smithsonian Contributions to the Marine Sciences, No. 18: 1-131.
です。原典は125gに減量する処方しかふれていませんが,おそらくHiggins本人の口から直接聞いたであろう人が書いた本の中には「125gまたは100gにまで減量」と書かれているので,100gでも良さそうです。[26]
- 市販品にはもちろん気になるようなゴミはありません(長期間置いたものでは底に微粒子状の沈殿物がたまるようですが)私が今使っているのは,(線虫)ホイヤー氏液 富士平工業株式会社(東京都文京区本郷6-11-6)です。25-30ml入りくらいの小瓶に入っています。前任者がだいぶ以前に多めに買いだめてあったものを使っており,自分ではまだ注文したことがないので,値段は不明です。ラベルには線虫用と謳ってあり,以前に上記の組成で自分で作ったものよりやや粘度が低い気がしますが(気のせいかもしれません),ダニや昆虫のパーツの封入にも問題ありません。[4]
- 畜産関係の専門会社ですね。まさか、こんなところで出しているとは思いませんでした。こんど必要になったら注文することにします。[9]
- 私はガムクロラール液を使ったことがありませんが,これと並んで(あるいはもっと一般的に)ホイヤー氏液というのがよく使われます。[3]
- 特殊な液が必要なもの以外はたいていの節足動物やクマムシなどはホイヤー氏液で十分です。ホイヤー氏液も注意点は塩野さんが書かれたとおりです。[3]
- 透明になるから,いいんですよ。透けないと,顕鏡できませんから。[3]
- Hoyer's solution is a mounting medium that has been used by entomologists for decades and is now gaining popularity in some areas of food analysis. This medium is used primarily for mites and small insects because, in addition to its excellent optical properties, it has the effect of rendering muscular and visceral tissues transparent, allowing the analyst to observe cuticular structures on the intact specimen without interference. Hoyer's solution can also be used for insect fragments, but not for hairs, as it is inadvisable to boil this medium because it contains chloral hydrate. Hoyer's solution will also destroy a hair's internal structure.[30]
- 封入直後は水平にしておきます。できれば,保温器の中,バラフィン伸展器の台の上(あるいは写真の現像液の温熱プレートの上)などに置いて,40℃-50℃くらい(もっと熱くてもいいと思われる)に温めながら乾かすと固まるのが速いです。この間に,もしカバーグラスのへりから気泡が入りかけていたら(2日に一度くらいチェックします)その部分に少量のホイヤー氏液(あるいはガムクロラール)を追加して気泡を埋めます。1週間くらい置いて,十分に固まったら,カバーグラスのへりをさらにマニキュアで封じておいてほうが無難です。[3]
- Specimens may be mounted in Hoyer's solution directly from aqueous solutions, or live specimens may be mounted directly. This medium has good optical properties for phase-contrast microscopy. To obtain a longer-lasting slide, the slide mount is cured for 48 hours to one week at 45oC and then held at room temperature for one week before sealing. (Slides left undisturbed at relatively uniform room temperature will cure naturally in about three to four weeks.) Temperatures above 45oC will harm the medium. Whenever using this medium, care must be taken to properly vent fumes.[30]
- 蘚苔類用の液
上のホイヤー氏液と抱水クロラールの量だけ1桁違うが、変法のひとつのようである。
- 大切な標本や、せっかくつくった葉の切片などを長く保存したいときは、次の液を使うのがもっとも簡便でよい。これは従来から昆虫学者や菌類学者に使われていたものである。液のつくりかたは(1)蒸留水50cc、(2)アラビアゴム30グラム、(3)抱水クロラール20グラム、(4)グリセリン20cc、をこの順序で室温で溶解する。[16]
- スライドガラスの上に葉の横断切片や葉などの材料を置き、この液を1-2滴落し、カバーグラスでおおい、固化するまで水平に保つ。コケの名まえなど必要事項を書いたラベルをつけるのはもちろんである。この液を小びんに入れ、ガラス棒のついた栓をしておき、必要に応じてガラス棒から1滴ずつスライドグラスに落すと便利である。あまり大きな材料を封入するとカバーグラスの隙き間から液が蒸発してよくない。[16]
- この液で封入すると細胞が透明になるので朔歯(引用注)や乳頭の多い葉細胞はたいへん見やすくなる。ただタチゴケやチョウチンゴケなどの葉では多少縮むことがある。[16]
- この処方で私は35年くらい使っています.このような封入剤は日本よりもアメリカの蘚苔類学者が多く使っているようです.蘚苔類は組織が柔らかいので、昆虫用の処方とは少し違うようです.[32]
引用注:原文の「朔」には草かんむりあり(コードにないため代用)。
- ハインツ液
ポリビニール・ラクトフェノール液。カマアシムシなどで使用する場合があるが、あまり一般的ではないらしい。カマアシムシについては中村修美氏の土姫虫のひとりごとを参照して下さい。以下は同サイトのページ、封入液と標本の作り方より転載。
- Aquatex(メルク社)
水溶性の封入剤の上を更に樹脂で固める方法が紹介されている。大変興味深い。
- 私の仕事では、組織や細胞を、蛍光抗体法あるいは酵素抗体法その他で染色した場合でも発色剤・染色剤によっては、水溶性の封入剤を用いる必要があります。私は、かつては、グリセロールを用いた封入剤を自分で調整していましたが、たしかに頼りなく、検鏡の際に困ることも多かったですね。周りをマニキュアで封じても、拭いたりすると壊れやすいですから。最近では、市販のもので、水溶性でも使い勝手のいい封入剤がありますので、それを使っています。[7]
- 私が使用した中で、今までで一番良かった(基準は価格と使い勝手)のは、メルク社のAquatex(アクアテックス)です。業者に聞いたところでは、今は50mlで2500円だとのことです。成分はよくわからないのですが、水、エタノール、メタノール等に溶け(グリセロールとも任意の割合で混ざる)、一方、キシレンには溶けないという特徴があります。pHはほぼ7です。[7]
- この封入剤のメリットは、すぐ使えること、加熱したりしなくてもいいということです。[7]
- 同じ様に使い勝手のいい水溶性の調整済み封入剤は、他にも市販のものが出ていますが、値段が高いようです。[7]
- 使用法は、試料を少量のこの封入剤でカバーガラス無しで試料に薄く塗布する感じで封入させた後、バルサムなどキシレンが溶剤の封入剤でカバーガラスを掛けて後封入します。もちろん、最初からこの封入剤だけでもカバーを掛けて、永久標本が作れますが、乾燥にやや時間がかかります(カバーガラスの大きさによりますが、数時間から1日)。乾かしている間は、立てかけたりせず、水平を保ちます。[7]
- 上手く後封入までできれば、標本の保存性は非常に良くなります。かちっと、固まってくれるので、安心感がありますし。[8]
- 私は、残念ながら、虫には適用したことはありません。ホールスライドなど用いるといいかも知れませんが。ただ、AQUATEXは、周りにひびが入ることが稀にありました。大きい試料だとひびが入りやすいかもしれません。こつは、AQUATEXの使用量を出来るだけ少なくすることです。極少量のグリセロールを混ぜるとひびが入らない、という意見を聞いたこともありますが、私はやったことがありません。余裕がある方は試してみて下さい。[8]
- 水飴
一部では昔から使われているらしいが、学芸員1号氏によってniftyserve fmizube#3で紹介された。
誰でもどこでも気軽にプレパラート作成ができるように、というコンセプトがすばらしい。
- 永久プレパラートの作り方は,市販の本にいろいろと紹介されていますが,どれもこれも,変な化学薬品を使うものばかりで,なかなかやってみようと言う気になりません。ちょこっとやってみたいだけなのに,準備しなければならない薬品が何種類もあり,買い集めようと言う気もおきません。「いや,それでも私は購入したのである」という気概のある人は良いのですが,やはり多くの人は「化学薬品」がネックになっているのではないでしょうか。
そこで学芸員1号は考えました。「スーパーで売っているもので永久プレパラートを作る方法」です。[18]
- 1.試料を酢に一晩浸けて,固定する。
2.水飴で封入する。
以上です。実に簡単。実際にやってみたら,なかなかの出来具合です。でも,ちょっとしたコツがあります。買ってきたままの水飴は固すぎるので,水飴の1割ほどの量の水を加えてよく混ぜて,すこし「ゆるく」しておくことです。また,水飴の水分が蒸発するまでプレパラートは水平に置いておかねばなりません。十分に乾燥すれば水飴は固まるので,そうしたプレパラートを立てても大丈夫のようです。
早い話,酢漬けにして身をしまらせてから,砂糖漬けで保存というわけです。水飴は今の時期は常温で固まっていますが,夏の高温期には溶け出しますから,夏はプレパラートを冷蔵庫に入れて置いた方がよいでしょう。[18]
- 村山さんが補足してくれたように,カバーガラスの回りをシールすれば,夏になって融けても大丈夫なので,その方法をお試し下さい。[21]
- 水飴で封入するやり方というのは、実はプロの研究者の間でも使われている方法でして、主に海草の研究者が海草の切片を封入するのに使われている方法なんです。また、珪藻や渦鞭毛藻類以外の植物プランクトンの封入に使われることもあるようです。[19]
- ちなみに、海草の研究者はよく、水飴を水でゆるめてそこにホルマリンも加え、ホルマリン固定が同時にできるようにしたものを封入剤として使っています。[19]
- また,村山さんが書いているように,水飴にホルマリンを混入するとカビの発生が防止できるようです。ホルマリンは非常に安いですが,これだけの為に劇薬ホルマリンを500ccも入手するのに抵抗がある人は,水飴をゆるくするために水ではなく,「うがい薬」を入れればよいと思います。うがい薬特有の風味(?)はチモールという毒薬の匂いです。水飴封入剤にチモールが入っていれば,腐敗したりカビが生えたりするのを防ぐことができるのではないかと思います。[20]
- 専門家も苦労するクマムシのプレパラートを水飴で試してみました。非常に良好です。ただし,私はうがい薬などを使わなかったので,ひょっとすると今後カビが生えたりするかもしれません。今回水飴で封入したクマムシは,海産のParastygarctus higginsi というめちゃくちゃ珍しい種なので,カビが生えたら悲しいなぁ。[20]
- 酢>水飴 ではクマムシは悲惨な形状に潰れてしまいます。酢>非常に薄い水飴(数日かけて固まらない程度まで自然乾燥)>水飴でないとうまく行きません。[23]
- ミジンコは甲殻類ですが殻が柔らかいので,いきなり粘性の高い水飴に突っ込むと,ぐにゃぐにゃに潰れてしまうかも知れません。その時は,
1.水飴を10〜30倍量くらいの水で薄めたものをおちょこのような小さな容器
に入れ,
2.その中に酢漬けミジンコを入れて,
3.風通しの良い場所に置いて水分を蒸発させます。
4.徐々に水飴の濃度が高くなり,最後には固まってしまいますが,ここで
は,固まる前のどろーっとした状態の時に
5.ミジンコを取り出してスライドガラスに水飴で封入して下さい。
上のように薄い水飴がどろーっとなるまで,1昼夜以上かかると思います。[24]
- しかし,それにしても水飴の屈折率は封入剤としては絶好です。実測した訳ではありませんが,屈折率1.5近くあるのではないでしょうか。私が常用している無水グリセリンよりも顕微鏡の光学系には適しています。[20]
- レブロース・シロップ levulose syrup
- 果糖30gを蒸留水20ccと混ぜ、37度Cの恒温器中に24時間おく。時々かき混ぜる。濃い水飴状になったものを用いる。カーミンやアニリン染料の保存はよいが、ヘマトキシリンの退色が早い。[10]
- アパチー APATHY のゴムシロップ
- アラビアゴム50g、蔗糖(局方の精製白糖がよい)50g、蒸留水500ccを混ぜ、水浴上で温めて完全に溶かす。溶けたら濾紙で濾す。うまく濾過できないようなら水をもっと加えてもよい。濾液を再び水浴にのせて温め、水分を蒸発させる。濃い飴の程度まで煮つまったら、防腐剤としてチモールの小塊を入れ栓をして貯えれば長く使える。
チモールは白血球にフェノールの顆粒を生じさせるから、血液の研究には注意を要する。重しをのせて余分の封入剤を押し出してやる。かたまるまでに10日以上もかかる。すっかり固まったら、水で湿したガーゼで周囲に付着したシロップを拭きとる。軟く気長にやる。ただし覆ガラスの周囲2-3mmを残しておく。[10]
- グリセリン・ゼラチン
- ゼラチン7gに蒸留水42ccを加えて2時間放置。ゼラチンが膨潤する。これにグリセリン50ccと石炭酸(温めて融かしたもの)1ccを加え、焦げ付かないように温めてゼラチンを溶かす。濾過して室温で貯える。固まっているから、使用時にはその小塊を覆ガラスにのせ焔で遠くから温めてワセリン程度に軟くし、すぐ封入する。封入後、重しをのせて余分の封入剤を押し出し、周辺をパラフィンで封ずる。
この液は明礬ヘマトキシリン等の色を早く褪めさせる。石炭酸を加えなければ色の保ちは良いが、腐敗を防ぐため氷室に貯える必要がある。[10]
- Kaiser による方法
粉状のゼラチン7gを42mlの蒸留水に入れ、室温で2時間膨化、グリセリン50gと結晶状石炭酸 0.5g を加え、湯煎で10〜15分加温しつつ、撹拌混合。58度のパラフィン溶融器内で、脱脂綿を通して濾過。使用前にその小塊を取り、温め溶解して用いる。[6]
- The most commonly used medium for mounting hairs and insect fragments is glycerin jelly. The formulation is 10 g gelatin, 70 ml glycerin, 60 ml H2O and 1 g phenol. The gelatin is poured on cold water to soak, then heated over a water bath to completely dissolve the gelatin. The glycerin and phenol are mixed while hot. When cooled, the mixture has the consistency of jelly.[30]
- To mount a specimen, a small piece of glycerin jelly is placed on a slide and warmed to the point where it becomes fluid. The specimen is placed in the middle of the liquid medium and covered with a coverslip. Warming the slide again is sometimes necessary for the jelly to engulf the specimen and fill the space under the coverslip.[30]
- Many analysts make a slide by piling the specimen and coverslip on top of an unwarmed piece of glycerin jelly and then warming the slide so that the glycerin jelly engulfs the specimen. Occasionally with this method, air bubbles may be trapped under the coverslip. These bubbles can be boiled off with a little more heat; however, migration of the specimen to the edge of the coverslip may occur. It is important for the analyst to practice mounting specimens in order to get a "feel" for the peculiarities of glycerin jelly.[30]
- When mounting hairs in glycerin jelly, the analyst must use a little extra heat in order to drive out the air in the center (medullary) portion of the hair. The characteristics of the hair cannot be observed until the air inside the hair has been replaced with glycerin jelly.One common method of removing air is to heat the mounted specimen carefully until the glycerin jelly under the coverslip boils, then cool and observe the specimen at high magnification to see if the air is gone. Continue heating and observing until all the air is gone. Again, practice is necessary, as too much heat may distort the hair or warp the coverslip. [30]
- 私は、ガラスシャーレに裏向きにして、ゴミが付かない様保存しています。場所をとりますが。[6]
- グリクロジェル glychrogel
- クロム明礬0.2gを蒸留水30ccに加温溶解。別に粒状ゼラチン3gに蒸留水50ccを加えて水浴(重湯煎)上で温めつつ溶かす。これ等両液を混ぜ、グリセリン20ccをも加えて、かき混ぜつつ水浴で温める。よく混ざったら防腐のため樟脳の小片を入れ室温で保存する。封入の仕方や封入後の処理はグリセリン・ゼラチンと同様でよい。[10]
- キーファー氏液 (Keifer's media)
フシダニ用の封入剤。フシダニとは植物寄生性の微小なダニで、足が4本。一見ダニとは思えないこんなやつです。
- フシダニのプレパラート標本作成には専用の封入液であるキーファー氏液(Keifer's media)を使う。ハダニ類で使用されるホイヤー氏液は用いない。
ホールスライドにキーファー氏液(後述)のA液を入れ、この中に葉上のダニまたは液浸標本を入れて体が透明になるまで加熱する。(中略)
次に、別のホールスライドにB液を入れ、A液で透明にしたダニをすばやく移す。B液に移されたダニは体がふくれてくる。スライドガラスにC液を一滴たらし、この中でB液で処理したダニを移してカバーガラスをかぶせる。(後略)[17]
- キーファー氏液の処方と作り方は次のようである。
A液:
1.アラビアゴム粉末1.0g, 2.レゾルシン3.0g 3.ヨウ化カリウム0.2g 4.ヨウ素0.35g 5.乳酸10.0ml 6.塩酸8滴
1〜4を乳鉢に入れて粉砕し、200mlのびんに移してから5〜6を入れる。蓋を閉めてから45度Cのオーブンに4〜5時間以上入れるとできあがる
B液:
1.ショ糖0.5g 2.グリセリン0.5ml 3.抱水クロラール8.0g 4.ヨウ化カリウム0.2g 5.ヨウ素0.35g 6.ホルマリン30滴>
1〜5を乳鉢に入れて粉砕し、200mlのびんに移してから6を入れる。蓋を閉めてから45度Cのオーブンに数時間以上入れるとできあがる
C液:
1.アラビアゴム0.5g 2.ショ糖0.5g 3.抱水クロラール7.0g 4.ヨウ化カリウム0.2g 5.ヨウ素0.2g 6.ホルマリン18滴
1〜5を乳鉢に入れて粉砕し、200mlのびんに移してから6を入れる。蓋を閉めてから45度Cのオーブンに数時間以上入れるとできあがる[17]
C)樹脂による封入
材料中の水分をアルコール、キシロールなどを使い脱水した後、樹脂で封入します。パラフィン切片を封入するのにごく一般的に行われますが、何段階もの作業が必要で、めんどうです。
- 封入剤はいろいろ市販されていますから、凝る人はそれこそいろいろ試して使い勝手の良いものを使っているということでしょう。ボクは英国製のある封入剤がとても気に入っているのですが、未だ入手できないでいます。今はバルサム、エンテラン、オイキットなどが棚にありますが、特にどれが良いとかいうことはほとんど考えていません。[5]
- カナダバルサム
最も一般的(だった?)封入剤。キシロールで適当に柔らかくして使う。
- ゾウリムシの封入になぜエンテランが最良なのかは知りません。カナダバルサムで封入して特に問題を感じたことはありません。[5]
- バルサムも、キシレンに溶解する限り、引火性と言えなくもないのですが、現在我々の研究室では、日常不断に用いています。時にヘマトキシリンの色が褪せる事がありますが、原因はバルサムによるのか否か、何時もこうなるわけではないので、不明です。[6]
- エンテラン(Entellan New:メルク社)
- Entellan New は、多分人工の樹脂であると思います。このような樹脂は、pHが中性付近のため標本の色を褪せさせない、樹脂自身が安定など、利点があるものの、カタログでは危険物(引火性ということ)として分類される他、推測では有害な物質を含む可能性もありますが、微量に用いるのであれば利点の方が多いかも知れません。[6]
- なお、エンテランは、以下の会社から入手できます。
和光 501-05301 (Merck社製) Entellan New 100ml (定価は為替変動の関係か、書いていませんがそれ程高くはないと思います。[6]
- 地学の微化石の封入材として使われています。理科器具屋に頼むとすぐ手に入ります。ただし、高いし有毒なので小瓶で注文すると良いでしょう。バルサム風で、スライドガラスに滴下し、ホットプレートで溶かしてからカバーガラスをかけます。詳しくは地学の先生に。[11]
- 方法はノミ(乾燥標本、またはアルコ-ル漬け標本)を2-エトキシエタノ-ルに10分ほど浸し、できるだけ気泡を抜いてからエンテラン(メルク社)で封入します。[13]
- 本当に永久標本にするには、以前たしかノミについて書いたことがありますが、虫をエタノールにしばらく入れ、次に2−エトキシエタノールに10分くらい入れたあと、エンテランで封入します。[5]
- 70%エタノ-ルから直接エトキシエタノ-ルに移して良いかというと、ダニやケンミジンコについては問題ありません。ただし、これは扱う標本の頑丈さにもよると思いますので、それぞれの材料で試してみてください。[12]
- EUKITT
- 私は、バルサムは、今はほとんど使っていません。バルサムに代えて使っている封入剤はEUKITT(商品名)です。ドイツのO.Kindler社のもので、発売元は高橋技研ガラス株式会社で、メルク社のEntellan Newとほぼ同じ様なものと認識しています。これもキシレンが溶剤として使われています。値段は、と業者の方に確認しようとしたら、Entellan New(こちらは100ml で2700円だそうです)と同じぐらいとのことでした。[7]
- ソフトマウント(Softmount:和光)
八洲薬品のページに新製品として掲載(97年4月2日)。粘度:約750cps(25℃)、屈折率:約1.50(20℃)、和光のコード199-11311、希望納入価格250mlで7000円とのこと。詳細は不明だが、キシレンフリーの封入剤が求められている時代なのは確かなようだ。
- ユーカリ、松の木より抽出した天然のピネン系溶剤(レモゾールエース)にポリスチレン樹脂を溶解しています。[27]
- 中間剤・透徹剤にレモゾールエース以外のキシレンやレモゾールをご使用の方も同様にご利用出来ます。[27]
- Q:水溶性封入剤として使用可能ですか?
A:困難です。水溶性封入剤アパチ封入剤をご便用下さい。[27]
なお、アパチ封入剤(100mlで4500円)とアパチーのゴムシロップの関係は不明。
- プルーラックス Pleurax
珪藻の殻を封入する際に使われる。屈折率が高いのが特徴。なお、資料[28](東京学芸大学生物学研究室・真山研究室「珪藻の世界」)には珪藻細胞から有機物を取り除く「クリーニング」ほか、珪藻の観察法がわかりやすく解説されており必見。
- 材料は石炭酸と硫黄です。この2つの薬品を沸石とともに丸底フラスコに入れ,ドラフト内で長時間加熱してできあがる黄色みを帯びた粘性の高い樹脂です。このままでは使いにくいのでエチルアルコールを加え粘性を緩めて使用します。「マウントメディア」の名称で市販されているものには,すでにある程度のエチルアルコールが含まれています。[29]
- 直接水とは混ざりません。感じとしてはカナダバルサムに近いもので,やはり樹脂の項に分類されます。ただ,カナダバルサムと異なり,加熱により簡単にアルコールを飛ばして固化させることができますので,扱いはより簡単です。[29]
- まずクリーニングした珪藻試料の懸濁液をカバーガラスに滴下します(スライドガラスではないことに注意)。この時,一滴アルコールを加えると試料が均等に広がります。[28]
- このカバーガラスを石綿金網に載せアルコールランプにより加熱乾燥します。もちろん電熱器やホットプレートでも構いません。私はセランというセラミックスの板をガスコンロの上に直において使っていますが,平面性も良いし,火を消すと直ぐに冷めるので,これが結構使いやすい。値段もホットプレートの数分の一です。水が完全に消えた後も1分ほど加熱を続けると多孔質の殻から完全に水分が無くなり殻が白く見えるようになります。[28]
- 次に珪藻の載っている面をスライドガラス側に向け高屈折率の封入剤で封入します。水やカナダバルサムを使ってはいけません。珪藻殻は,いわばガラスみたいなものです。ガラスでできた「スライドガラス」と「カバーガラス」の間にガラスのような「珪藻殻」をサンドイッチにして低屈折率のもので封入したのでは,ほとんど殻の模様は見えてこないのです。今まで,通常のプランクトン観察の方法で珪藻殻がよく見えなかった方!原因はここにあったのです! [28]
- 最も手に入りやすい封入剤はプルーラックスでしょう。和光純薬(株)からは「マウントメディア」の商品名で販売しています。 [28]
- スライドガラスに少量のプルーラックスを塗り,乾燥した珪藻殻が張り付いているカバーガラスを上から載せます(もちろん,珪藻の載っている側をプルーラックスに向けてください)。プルーラックスはエチルアルコールに溶かされているので、その後スライドガラスを軽く暖め、アルコールを飛ばします。最初のうちは,泡がブクブクとたちますが,しばらくすると泡の出方が悪くなります。この状態でアルコールが完全に蒸発しています。それ以上熱していると,今度はプルーラックス自身が沸騰してしまいます。そうなると,完成時に,やけに茶色のプレパラートができてしまいますし,屈折率も悪くなります。[28]
- スライドガラスを火から(ホットプレートから)下ろし,ピンセットでカバーガラスの配置を整え,軽く押しつけます。この時,素早くやらないと,固まってしまいますので注意が必要です。その後,ものの数分待つだけで珪藻殻の永久プレパラートができあがります。 [28]
D)その他Tips
- 「やせ」は,おおむねどの封入剤にもあります。たとえば,カナダバルサム(松ヤニ)はキシレンでゆるめて使いますが,乾燥するとキシレンが飛ぶので飛んだキシレンの分だけやせます。組織切片標本のように,試料の厚さが5ミクロンなどという場合は「やせ」は問題になりませんが,試料の厚さが50ミクロン(0.05ミリ)なら「やせ」は大問題です。やせやすい封入剤で標本を作ると乾燥するにつれて標本が泡だらけになってしまいます。[20]
- なお原生動物は多くの場合、永久標本にすると、ほとんど核しか見えません。酢酸メチルグリーンで簡易染色して、液が乾かないうちにカラー撮影したほうが余程おもしろい絵になります。[5]
- 昔,一時クマムシのプレパラートを作っていたころは,生きたクマムシを少量の水ごと時計皿に拾い,そこへ,熱した70%エタノールをピペットでどばっと流し込み,熱殺しておりました。こうすると,伸びた状態で死ぬので,それを70%エタノールで固定してからホイヤー氏液(ガムクロラールでもほとんど同じと思います)に封じると,体のよく伸びたプレパラートができます。生きてるのを何もしないでいきなり70%アルコールにつけると収縮してしまいます。ワムシはやったことがないのですが,同じやり方で伸びた状態のプレパラートができるのではないかと想像します。[14]
- 体が透明になるのは仕方ないのですが(透けないと黒いシルエットしか見えませんから),位相差顕微鏡や,かなり高価ですが(といっても共焦点レーザー顕微鏡などとは比べものになりませんが)ノマルスキー微分干渉顕微鏡を使えば,体の内部の構造が結構観察できます。[14]
- 説明不十分で失礼しました。ホルマリンは,「酢漬け」の代わりにミジンコを「ホルマリン漬け」するときに使います。濃度はホルマリン原液の10倍〜20倍(10〜5%ホルマリン)で,ミジンコを浸けておく時間は1晩〜数日です。室温で大丈夫です。以前に村山さんとのやり取りにもありましたが,ホルマリンは酸化してギ酸になるので,それを中和するため,ホルマリン原液のビンに大理石のかけらなどを入れておくことを薦めます。また,ホルマリンの酸化は紫外線によって進むそうなので,ホルマリンは原液でも希釈液でも,日光が当たらない所に置くか,褐色ビンに貯えるか,はたまたビン全体をアルミホイルで包んでおくのが良いです。希釈濃度はおおざっぱでかまいません。私もいつも「目分量」です。[25]
E)情報源
(順不同、敬称略)
[1] 日本淡水藻図鑑(廣瀬弘幸、山岸高旺編集、内田老鶴圃新社1977)p.840
[2] 塩野拡久[jissen02117]
[3],[4],[14] 鶴崎展巨[jissen02118],[jissen02134],[jissen02136]
[5],[12],[13] 熊沢秀雄[jissen02121],[jissen02132],[jissen01590]
[6] 渡辺勇一[jissen02119]
[7],[8] 浅賀宏昭[jissen02126],[jissen02133]
[9] 布山喜章 [jissen02135]
[10] 顕微鏡標本の作り方(田中克己、裳華房1954)pp.235-236
[11] 八木和主男[jissen02116]
[15] 土壌動物学(青木淳一、北隆館1973)p.632
[16] 原色日本蘚苔類図鑑(岩月善之助・水谷正美、保育社1972)p.380
[17] フシダニ科の概説と検索 上遠野富士夫(日本原色植物ダニ図鑑、江原編、全国農村教育協会1993)pp.219-220
[18],[20],[21],[23],[24],[25],[26] 学芸員1号(野田泰一)[nif01500],[nif01531],[nif01513],[nif01569],[nif01631],[nif01633],私信
[19],[22] 村山茂樹[nif01507],[nif01508]
[27] 八洲薬品 webpage http://web.infoweb.ne.jp/scol/files/wako/soft.html
[28] 簡単にできる珪藻殻の観察方法 http://www.u-gakugei.ac.jp/~mayama/diatoms/collection%20and%20cleaning.htm(東京学芸大学・真山研究室 website)
[29] 真山茂樹 私信
[30] Laboratory Procedure Manual (U.S. Food and Drug Administration, Office of Regulatory Affairs, 1997) Chapter 18; ENTOMOLOGIST TRAINING http://www.fda.gov/ora/science_ref/lpm/lpchtr18.html (FDA website in the public dmain)
[31] David W. Kramer http://www.bio.net//hypermail/PLANT-EDUCATION/9512/0050.html
[32] 岩月善之助 私信
[33] 封入液と標本の作り方 http://www.ksky.ne.jp/~nakamura/other/heinz.htm(中村修美 website 土姫虫のひとりごと )
[34] スイバ(性染色体) 藤島弘純(生物観察実験ハンドブック 今掘・山極・山田編 朝倉書店1985)p.123
注1:[jissen?????]とあるのはjissen-MLへの投稿(主に98/12/09-98/12/16)です。
注2:[nif?????]とあるのはniftyserve fmizube#3への投稿(98/03/15-98/04/22)です。
98/12/20 初版(非公開)、99/01/27 第2版(公開)
99/03/22 ワラップ、ハインツ液
99/05/07 中村氏アドレス変更