智の神イムリエスのこと  

智の神イムリエスのこと



 イムリエスは叡智をつかさどる神である。
 天より十一の神とともに降りて、いにしえの神話に語られる八邪神を成敗し、バレエスに平安と幸福をもたらした大いなる神である。
 イムリエスはおのれ自身の運命を除く、世界のあらゆる智とできごとを熟知しており、それゆえにひろき目をもつ者とも呼ばれる。
 またイムリエスはふるき邪神どもにしいたげられていた人間たちに叡智の吐息をかけ、無知なる牢獄から救いだしたもうた御神であり、いまのひとびとが冬になっても飢えず凍えず、あたたかな灯火のもとで語らい書を読みふけることができるのもすべてイムリエスの御技あってのことにほかならない。
 その肉体はまばゆき光輝におしつつまれ、徳なき者が目のあたりにすればたちどころにその視界をうばわれる。それゆえ智の神の神官たちは鼻までおおう黒いずきんをすっぽりとかぶり、神殿内では決してその目でものを見ることはない。
 大いなる智の神の光臨は万古の代より数えるほどしかなかったというが、その出現の際にはつねに馬車の上にある。馬車の名はワジャリヤという。まばゆき光輝をきらきらしく放つ壮麗なワジャリヤは、アジャイアとアジャイルスというふたりの御者にひかれて天降る。アジャイアとアジャイルスはときに万里をかけめぐり、バレエスのあらゆる場所をティグル・ファンドラのひとめぐりにもみたぬまに走りつくすという。







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