第一部 過年度卒業生編


 第一章 志望校選択
  第一節 応募資格
  第二節 志望校選択の基準
 第二章 具体的行動
  第一節 学習
  第二節 いつ親に話すか
  第三節 現在籍校
  第四節 志望校決定・入試への準備
  第五節 願書記入・提出
  第六節 試験当日
  第七節 合格発表−入学手続き
  第八節 入学手続き後
(「資料I 過年度卒業生可否一覧」は内容更新が面倒なので省略しました)



第一章 志望校選択


第一節 応募資格

 学校側が応募資格を定めている場合もある
ので、志望校選択に当たっては全ての学校を
自由に選べる訳ではありません。
 応募資格を大きく分けると

(1)学歴・年齢等
(2)性別
(3)親との同居、居住地域(通学にかかる
   時間)、入寮など

以下、各項目について説明します。なお、こ
ういった条件は年度によって変わる可能性が
あります。最終的にはその年度の募集要項を
学校から入手して確認してください。出版社
発行の学校案内や受験雑誌には、このような
条件を記載してない場合が少なくありません。

(1)学歴・年齢等
 一般的に「小学校卒業または3月に卒業見
込み」が必要です。さらに次のような条件が
付く場合があります。

・3月卒業見込みの者に限る
 過年度卒業生ならば、このような学校は志
望校から外さざるをえません。
 もちろん条件次第では例外的に入学を認め
てもらえる場合もあるでしょうが、そのため
には個別相談会などで事前に学校側と相談し
た上で、多くの教員の合意を得なければなり
ません。もちろん、わざわざ入試要項で断っ
ているのですから、認めてもらえる可能性は
ほとんどありません。「むげに断られても仕
方ない」というつもりで相談に行きましょう。

・生年月日の範囲等を指定
 平成9年度入試で例えて言いますと、「昭
和59年4月2日から昭和60年4月1日」
の場合は「卒業見込み」より厳しいものです
が、「昭和58年4月2日から昭和60年4
月1日」(青山学院中等部・成蹊中学校など)
の場合は明記してある分だけ安心感がありま
す。他に、「卒業見込みまたは中学1年在学」
(土佐塾中学校)、「卒業見込みまたは中学
校在学」(土佐中学校)などもあります。
・小学校を卒業または卒業見込みの者
 単に大学あたりの受験資格を引き写しにし
たんではないか、という疑念もありますが、
わざわざ書いているんだから、過年度卒業者
の入学は認めているんでしょう、きっと。あ
るいは帰国子女のために設定した条件ではな
いか、という気もしますが、特に断っていな
い以上国内の小学校卒でも大丈夫だと思いま
す。
 とは言え、「卒業見込みの者が望ましい」
(桜蔭中学校)、「卒業者は出願前に相談が
必要」(高槻中学校)というただし書きをし
ている中学もあります。逆に「過年度卒業者
も可」(賢明女子学院中学校)という所もあ
ります。そういった事にふれてない学校の場
合は、試験・面接結果を見ながらケースバイ
ケースでやるのでしょう。

・何も書いてない場合
 要項にこの手の条件が何も書いてない場合
も結構あります。何も考えてないのか、ケー
スバイケースでやろうというつもりでしょう。
 全く記述がなければ、だれでも受験可能と
考えるのが当然ですが、無条件不合格にされ
たら意味がないので、念のため願書や案内を
すみずみまで見ましょう。
 願書類の出身校記入欄が「卒業/卒業見込
み」と選択式になっていれば大丈夫。「平成
9年  小学校卒業見込み」となっている場
合はあきらめましょう。「平成 年  小学
校卒業見込み」と年の欄が空欄になっている
場合は「見込み」を線で消すと解釈すべきで
す。年の欄がない、あるいは「卒業見込み」
という言葉もなく単に学校名を記入する欄が
あるだけ、という場合は学校側は多分何も考
えてないんでしょうから、質問ついでに説得
しましょう。

・帰国子女の場合
 外国の学校に在籍した場合、学制が違う上、
10月から年度が始まることが多いので、日
本での条件がそのまま当てはめられないこと
が多くなります。そのために基準が緩くなっ
ている場合もありますが、「事前に相談する
こと」となっている中学もあります。このケ
ースはあまりに特殊ですし、帰国子女向け進
学案内が既に多数発行されているので、以下
省略します。

(2)性別
 ……この項目は読み飛ばして頂いても結構
です(笑)男子中・女子中関係者は是非読み
飛ばしてください(大笑)

 男子中・女子中の募集要項での性別指定の
方法としては次の場合があります。

(a)出願資格に「男子」「女子」
   と書いてある
医学的性か法的性か社会的性か精神的性か、
などというつまらない突っ込み以外思いつか
ない(苦笑)

(b)募集人員に「男子百二十名」
  「女子約八十人」などと書いてある
募集人員を大きく上回る合格者を出している
んだから、一人くらい女子(男子)がいたっ
て……というくらいか(笑)

(c)願書や健康診断書用紙に性別
  欄があり、そこに「男」「女」
  の一方だけ、または「男女」の
  片方に丸が印刷してある
反対の性の人が出せば、自動的に虚偽申告に
なるわけね(笑)

(d)要項・願書類に何も書いてない
 男子中・女子中(のように見える)にもか
かわらず、性別を制限するような文言がない
場合が意外とあります。
 著者が確認した限りでは、この手の学校は
すべて学校名に「女子」の言葉が入り、学校
案内には女子に見える生徒だけが載り、「女
子教育」という言葉も見受けられます。だか
ら一見女子だけの募集のように見えるが、具
体的に制限する文言は何もないのです。
 さらに一部の中学では、願書に性別欄がな
く、他に性別を示すような書類の提出も求め
ていない。だから男子が正当な願書提出をし
て、面接で小学6年生の女の子らしい受け答
えをすれば十分合格できることになります。
つまりなんの落ち度も無く入学資格を手に入
れることが出来るのです。ここまで来たら、
どういう根拠で入学を拒否出来るのか?
 でもここまでやって入学出来たとしても、
女子と同じ制服を着られなかったら意味ない
な(苦笑)。「学校案内に示してある女子教
育を受けられないのは詐欺だ」とか言えるの
かな?
(高校のケースだが、共学の普通科であるに
も関わらず女子しか入学しない学校がある。
昔は男子を入れようと躍起だったようで、ち
ゃんと男子制服もある。だが今はもうあきら
めたらしい。一人二人入学させてもややこし
いだけなので、今受験しても入学できない。
高校だから当然内申書は必要。)

(3)親との同居、居住地域(通学
   にかかる時間)、入寮など
 これは小学6年生でも考慮しないといけな
い項目です。
 まず親との同居・自宅からの通学は、女子
中を中心に多くの中学が求めています。さら
に通学時間の上限を定めている所もあります。
願書に具体的な通学コースの記入を求める所
さえあります(京都女子中など)。仮に時間
制限がなくても、親との同居ということにな
るとあまり遠くの学校は通学が困難になりま
す(もちろん引っ越せば別)。
 逆に、地方にある中学を中心に、寮を設け
て積極的に全国から生徒を募集する所も少な
くありません。ラ・サールや高知にある私立
中学などがそうです。寮を持つのは主に男子
中、共学でも男子寮だけという所が多いので
すが、女子中でも寮を持つ所があります。
 制限はないけど寮も持たない中学の場合は、
積極的に下宿を斡旋する所もあれば、下宿に
はあまりいい顔をしない所もあります。この
辺は学校の方針の問題。入学案内を読んだり
学校に質問をしたりしましょう。

第二節 志望校選択の基準

 もっとも重要なのは「校風」「カリキュラ
ム」「授業の内容・進度・レベル」「授業以
外の行事」「卒業後の進学実績」など、学校
それ自体が自分に合うかどうかですが、基本
的には小学6年生が学校を選ぶのとなんら違
いはありません。入学案内や出版社が発行し
ている学校案内、塾が作成した資料を参考に
しましょう。ある程度絞りこんだら、学校説
明会や体験入学、文化祭などの行事に参加し
て、自分の目で確かめると良いでしょう。
 以下、過年度卒業生が注意すべき点をいく
つか挙げておきます。

(1)調査書他、出願に必要な書類
 中学受験が高校受験と違う点は、調査書類
が全くいらない中学、小学6年(まれに5年)
の通知表のコピーを添付すればよい中学がか
なりあることです。さらに保護者面接がない
中学であれば

・保護者印
・受験料など費用(1校あたり、東京で2万
 円程度、他で1万5千円程度、学校によっ
 てはさらに切手代千円程度)
・試験日が平日の場合はどうやって今在籍し
 てる学校を休むか
・出願日・合格発表日が平日昼間に窓口まで
 出向かなければならない場合はどうするか
・書類が郵送される場合どうするのか
・受験料が銀行振込の場合いつ振り込むのか

これらをどうにかすれば親にさえ知られるこ
となく受験することができます。
 もちろん入学するためには学費のみならず
親に頼らないといけないので「××中学に合
格したので1年から入り直したい」と説明し
ないといけません(しかも合格発表から入学
手続きまでの時間が少ないことも多いので、
合格確認後すぐ)。既に合格しているので、
学年が下がることを差し引いても努力の跡が
見られるような合格校ならば、親の説得もし
やすいでしょう。こっそりやったのであれば
なおさらです。しかし時間がない場合は、親
が感情的になるとすぐに時間切れになってし
まいます。
 親には隠さないにしても、特別な書類を小
学校などに作成してもらう必要がないので、
他の人達に知られる心配はありません(試験
で隣の席が同級生の妹だった、なんてのはあ
るかもしれないが)。もちろん合格すれば在
籍している中学や高校を辞めたり転校扱いに
したりする必要があるので、少なくとも校長
と学年主任と担任には知られることになりま
す。小学校の卒業証明等が必要になれば出身
小学校の関係職員にも知られます。でも入学
を決めたのであれば、恥ずかしくてもきちん
と説明しましょう。

 一方で、調査書を願書と一緒に提出する必
要がある学校も少なくありません。あるいは
出身小学校の校長印を願書に押してもらう必
要がある学校もあります。東京では特に有名
中で必要な場合が多いようです。関西では地
域的に必要な所と必要でない所が偏っていま
す。
 調査書が必要な場合、小学校に出向き「私
立中学に1年生から入り直すため受験をする」
ことを説明した上で作成を依頼することにな
ります。出身小学校の教職員に知れ渡る事に
なりますが、ぜひ入りたい志望校ならその程
度の恥は忍びましょう。教職員には守秘義務
があります。他の人にはしゃべりません。

 必要な書類としては、他に健康診断書の提
出を求める学校もあります。もっともこれは
医療機関で作成してもらってもいい場合が多
いようです(もちろん保険はきかないので結
構高いのだが)。

(2)面接の有無
 過年度卒業生を受け入れている中学とはい
え、合否の基準は小学6年生に比べるときつ
くなるでしょう。特に面接等が重視されるで
しょう。面接がない中学でも個人的に呼び出
される可能性があります。面接があれば他の
受験者とは違う質問を受けることになるでし
ょう。
 いずれにしても面接が必ずある、くらいに
考えておきましょう。むしろ、事前相談会が
あれば積極的に行っておいた方がもしれませ
ん。入学することになればその先生のお世話
になるのですから。

 さらに、保護者面接がある中学もあります。
これはもうどうしようもありません。親に来
てもらうのみです。

(3)入学試験の難易度
 基本的には小学6年生と同じなのですが、
過年度卒業生ということでハンデが付く可能
性があります。とはいえ、あまり安全性を狙
い過ぎると、他の合格者に比べ飛び抜けた点
数になってしまいます。これが小学6年生の
取った点なら「多分他の学校に行っちゃうだ
ろうけど、出来れば来てくれないかなぁ」と
思うでしょうが、過年度卒業生だと「こんな
子がクラスに溶け込めるだろうか」と心配し
てしまうでしょう(実際は成績よりも性格の
問題なんだから、面接で判断すべき事なのだ
が)。仮に将来その子が東大にでも合格して
も他の子みたいに大々的に宣伝するのは気が
引けるでしょう。「そのまま今の中学で頑張
って、いい高校に入りなさい」などと説教さ
れる可能性もあります。
 ですから、という訳でもないですが、自分
の力に見合った学校を選びましょう。中学受
験では2〜3回は受験機会があるので、小学
6年生と同様に挑戦校・安全校・確実校と割
り振りましょう。小学6年生でも同じことで
すが、クラスで中位かやや上位程度にいるの
が、自分の成績を伸ばす上でも、クラスに溶
け込む上でもプラスになります。同級生より
年上だと知られた場合には特にそうです。

 もちろん、成績が低過ぎて落ちた、なんて
ことにはならないように。


第二章 具体的行動


 以下では1年間後の入学を目指すという場
合を中心に、やるべきことを書いていきます
が、「小学5年以下の勉強からやり直して2
年後以降の入学を目指す」というも基本的に
は同じです。

第一節 学習

 志望校に合格するためには、当然ながら勉
強する必要があります。学年が下がっても実
質的な学力はアップさせるつもりなのですか
ら、しっかりと勉強しないといけません。

 平日の昼間は在籍している中学なり高校な
りの授業を受けなければならないでしょうが、
小学6年生の受験生の方はつまらない授業を
受けなければならないので、どっちもどっち
です。

 放課後や休日に、小学6年生は塾に通って
受験勉強をしています。過年度卒業生もでき
れば中学受験のための塾に入った方が良いで
しょう。もちろん勉強のため、受験に関する
情報を知るため、ライバルを知り切磋琢磨す
るため、なども大事な理由です。
 しかし過年度卒業生の場合には他の理由も
あります。塾にいる小学6年生は、みんな年
下で今のところろ下級生ですが、入試の時は
同じ受験生であり、合格して入学すれば同級
生になるかもしれない人達です。入試当日や
入学後、余計な緊張や羞恥心や疎外感を持な
たいようにするために、早いうちから塾のク
ラスメートとして放課後の短時間だけでも一
緒に勉強し、勉強以外の話題も共有し、みん
なに溶け込んで同級生意識を作った方が良い
でしょう。同じ中学を受験する友達が出来れ
ば勉強の励みにもなりますし、入試当日も緊
張せずにすみます。入学後も12才の同級生
と同じペースで学校生活を始めることができ
ます。中学の塾が併設してある所ならば、新
たな上級生・下級生関係を前もって体験でき
ます。塾通いは学年を下げるための移行期間
だと思えばよいでしょう。

 しかし、近所の塾に入ると現在の同級生の
弟・妹とクラスメートになってしまい、私立
中学受験がばれてしまう可能性もあります。
それで自分を追い込むという手もありますが、
あまり追い込んでもいいことはありません。
少し離れた、代わりにレベルの高い塾を選び
ましょう。

 塾に通うためにはそれなりの費用が必要で
す。親に隠れて受験準備をする場合は、現在
の学年のための塾に通うと親をだまして中学
受験の塾に入るという手もありますが、やは
り難しいでしょう。そういう場合は模試を有
効に活用しましょう。さすがに模試で友達を
作るのは難しいですが、来春同級生になる小
学6年生に混じって模試を受けることで気持
ちを慣らすことが出来ます。

第二節 いつ親に話すか

 あまりに成績が悪い人が「塾で下の学年の
クラスに入って勉強をやり直す」と言えばそ
のやる気に親も喜ぶでしょうし、それで中学
受験が可能な成績になればなおさら喜ぶでし
ょう。このまま底辺高に進んでいれば大学は
おろかきちんと就職することさえ怪しかった
のが、数年浪人したのと同じ程度で大学が目
指せるし、私立中学に入学したという達成感
と充実した中学生活で、これからの人生を自
信を持って生きることができるだろう、と。

 でもそこまで成績がひどくない人の場合は、
ちょっと言い出しにくいでしょう。「今から
中学生・高校生として頑張れば、そこそこい
けるんじゃないの?」年齢が上になればなる
ほど入学できる可能性が低くもなりそうです
から、なおさらそう言われるでしょう。
 親を説得することは避けては通れませんし、
過年度卒業生の受入れを渋る中学側を説得す
ることにもつながるので是非がんばらなけれ
ばならないのですが、説得するための材料も
時には必要でしょう。
 「今までの自分の成績からすれば、小学6
年向けの模試とはいえ随分アップした」と試
験結果を示し、「せっかく小学6年の勉強を
ここまで理解出来るようになったのだから、
今の学年の授業を理解できないまま受け続け
るより、私立中学のレベルの高い授業を中学
1年から受けた方がいい」と思ってもらえる
ようにする。
 あるいは、同じ志望校を目指す小学6年生
を連れてきて、勉強だけでなく他の面でも自
分と同レベルかむしろ大人びててることを感
じとらせ、「こんな同級生がいてくれるんな
ら」という気持ちにさせる。または志望校の
在校生を連れてきて、同じ年や年下にも関わ
らずずっと大人びていることを示し、「何年
かすればうちの子もこんな風に成長できるの
ね」という気持ちにさせる。そして小学6年
生と仲良く遊んでる姿や、年下の在校生を先
輩として敬っている健気な姿を見せ、「学年
を下げてでも私立中に入れた方がこの子のた
めになる」と思わせる。
 いっそ、こっそり出願・受験した後、合格
した後に話を持ち出す。この場合ならば「も
し受験に失敗したら、少しくらい成績が上が
っても無駄が多過ぎる」などという心配をさ
せることがありません。しかし説得するため
の時間があまりに短過ぎて、説得出来なかっ
たり、よく納得しないまま入学手続きをさせ
てしまうことになりかねません。

 もちろんこれだけの説得材料を揃えるため
には、こっそり模試を受けたり塾に通ったり
出願したりしないといけません。親にばれな
いように気を使う、無断欠席でいざこざが起
きる、あるいは入塾や出願がうまく出来ない
など、いらぬことで神経をすり減らしてしま
うかもしれません。親に承知していればすべ
てスムーズにいく事ばかりなのですが。

 当然のことですが、途中で親にばれてしま
えば、ただちに説得にかからなければなりま
せん。

第三節 現在籍校

 現在中学・高校に在籍している人は、当然
その学校に毎日通わないといけません。分か
らない授業を聞きにいくなんて時間の無駄の
ように思えますが、先も述べたように、小学
6年生の受験生もつまらない授業を受けなけ
ればならないので、どっちもどっちです。そ
れに、受験のための勉強だけやって学校には
行かなかった、なんて事が志望校に知れると
不利です。
 「真面目に学校に出席し、真面目に授業を
受けたけど、理解出来ない。塾で小学6年の
内容をようやく終えて、その範囲であればい
い点が取れる」、だからこそ、今から私立中
学に入ろうというのです。

 しかし中学受験レベルの勉強が出来るよう
になると、たとえ中学の授業の内容をそんな
に理解してなくても、公立中でならばそこそ
こいい点が取れてしまいます。これは本当の
小学6年生が中学生に混じって試験を受けて
も同じです。一説によると「難関中合格レベ
ルの小学6年生ならば、国語の読解力は中学
3年5段階評定で4」だそうです。数学での
推論力もそんなもんでしょう。読解力や推論
力だけで点数は取れませんが、以前授業で習
ったうろ覚えの漢字や公式を使えばそこそこ
の点数は取れてしまいます。とはいえ、中学
以降の内容がうろ覚えなのでそこそこ止まり
てすが。

 当然、受験のことは学校の同級生には秘密
にするでしょう。単に恥ずかしいだけではな
く、受験に失敗する可能性もありますから。
 それでも塾に通っている場合、クラブ活動
も友達付き合いもする時間がないし、交友関
係も塾の小学6年生の方が強くなって、学校
では浮いた存在になるかもしれません。もっ
とも塾の方が楽しいのならそれで構わないし、
仮に受験に失敗しても塾の方で中学1年に進
めば交友関係は維持できます。中学生であれ
ば。高校受験で浪人したり高校で留年したり
して塾の学年と一致するようになれば、成績
の面でも友達の面でもうまく行くことになり
ます。

 もしばれてしまった場合、完全に浮いてし
まう事になりますが、その時は素直に「お客
さん」になりましょう。「小学生が間違って
中学校に通うことになってしまった」ように
振る舞いましょう。意地悪な同級生が「やい
、そこの小学生」とか言うかもしれませんが
、本当に小学生なんだから素直に「はいっ」
と答えましょう。もし意地悪な奴が自分より
成績が悪ければ「僕より頭のいい小学生なん
てたくさんいるのに」とでも言いましょう。
意地悪でない人達には、年上に対する時のよ
うにちょっぴり遠慮がちに接しましょう。優
しい人達は後輩のように接してくれるでしょ
う。
 担任の先生は怒るかもしれません「そんな
に成績が悪いわけでもないのに」。その時は
親を説得する時のように説得しましょう。あ
るいは「あまりにクラスで浮いてしまってか
わいそうだ」と思って仲良しのいる小学校へ
の編入を画策してくれるかもしれません(う
まく行くかどうかはわからないが)。もし編
入できるようなら、好意に甘えて編入させて
もらいましょう。この場合は志望校にきちん
と事情を説明すれば理解してもらえるはずで
す。ただ受験に失敗した場合は下手すると元
の中学校に再び入学することになるかもしれ
ませんが、この場合は「受験に失敗した小学
6年生」と全く同じです。

第四節 志望校決定・入試への準備

 志望校選択の基準は第一章で述べましたが、
ここでは志望校選択のための手段について述
べます。

 まずは出版社発行の学校案内などで大体の
校風や進学実績・難易度などを知り、志望校
を絞り込みます。塾に通っていれば、入学し
た先輩たちから聞いた情報なども見聞きする
ことが出来るでしょう。

 春先や秋には運動会や文化祭などの行事が
あります。非公開の学校も多いのですが、受
験希望者については見学できる場合が多いよ
うです(父兄同伴でないといけない学校もあ
るが)。出来るだけ見に行くようにしましょ
う。先輩たちを見ることで校風を知ることが
できますし、一年生を見て「来年はこの人達
の後輩になるんだ」という自覚と決意を強め
ることができます。

 小学校の時の同級生や下級生に志望校に進
学した人がいれば、その人達から話を聞くこ
ともできます。元下級生に来年受験すること
を打ち明け、色々聞いたり相談をもちかける
のは恥ずかしいかもしれませんが、今は下の
学年とはいえ他校の人ですし、来年はその人
の後輩になりたいと思っているのですから、
今のうちから先輩として付き合い、力になっ
てもらった方がよいでしょう。

 二学期以降になると、学校説明会などが開
かれます。たいていは土曜の午後や日曜日に
開かれますが、中には保護者向けと限定して
平日に行う学校もあります。
 体験入学会を開く学校があれば是非参加し
ましょう。来春からの新中一生活をちょっと
でも味わうことが出来るし、志望校の校舎で
先生達に小学6年生と同じに扱われることで
「小学6年生のみんなと同級生になるんだ」
ということを強く実感できます。
 このような受験生が参加できる行事に積極
的に参加していれば、志望校の先生への顔売
りにもなり、後で過年度卒業生だと分かって
も親近感を持ってくれて、合否への影響が減
ります。

 このような説明会・体験入学会をひんぱん
に行う学校も多いのですが、有名校の中には
1回しか行わない学校もあります。受験雑誌
や新聞などで情報を集め、行きそびれないよ
うにしましょう。
 また保護者対象で平日だけに開催する学校
もあり、こういう学校では先生との接触の機
会が少なくなりますが、こういう学校は保護
者重視の学校だったり、試験・面接の結果だ
けで公平に判定しようとする学校だったりし
ます。そんな学校の方針を理解した上で志望
するのであれば、親に理解してもらい説明会
に行ってもらったり、面接で過年度卒業生の
ハンデを乗り越えられるようにしましょう。

 学校を見学するなどして志望校としての興
味が強くなったら、個別に相談をもちかけ、
過年度卒業生だけど入学したいことをアピー
ルしておきましょう。最近は試験から合格発
表までの間が少ない所が増えており(即日発
表の所さえある)、そんな学校ではちょっと
でも躊躇されたら終わりです。事前にアピー
ルしておけば、試験日までに合否判定の要所
をまとめておいてもらえますし、どうしても
受け入れられないという事が早い時期に分か
ればより合格可能性が高い学校に志望を変更
することもできます。事前面接のつもりでい
どみましょう(5節参照のこと)。
 なお、質問は個別に行うべきで、質疑応答
の場面でおおっぴらにするべきではありませ
ん。過年度卒業生に偏見を持つ保護者や受験
生が現れると、入学出来る所にも入学出来な
くなります。

 入試要項・入学願書類はたいてい無料です
が、数百円から千円で販売している学校もあ
ります。説明会などに行けば入手できますが、
どうしても行けない場合は別の日にもらいに
行くしかありません。主に事務室窓口などで
配布していますが、窓口が閉まった後でも守
衛室などで配布していることが多いようです。
ただしキリスト教系の学校を中心に、日曜日
は完全にお休みで誰もいない、という事もあ
るので注意が必要。

第五節 願書記入・提出

 調査書を作成してもらう場合は、自分で行
ってもいいけれど、普通は親が小学校に出向
くのが普通でしょう(小学6年の場合は担任
に頼むのだから自分で教室で担任に頼めばい
いのだけれど)。
 健康診断書がある場合、小学6年生であれ
ば学校での健康診断の記録を利用して学校で
作成してもらえるのですが、過年度卒業生は
そういうわけにもいかないので、医療機関で
作成してもらうことになります。

 願書記入はありのまま書いて、親に提出し
てもらえば終わりです。
 が、親に隠れて願書を出す場合、印鑑が問
題になるかもしれませんし、受験料の銀行振
込も時間的に難しいでしょう。さらに提出は、
窓口提出ならいつ行くのか、郵送だったら受
験票が送られてくるのをどうやって隠すか、
という難しい問題が待ちうけています。

第六節 試験当日

 親に話して、あるいはズル休みして、とも
かく試験会場に行きましょう。服装は受験雑
誌などにも載ってますが、小学6年生と同じ
なんだという自覚のもとに選びましょう。あ
とは忘れ物がないか確認しましょう。

 筆記試験最中も、試験監督官が見ています。
これも面接の一部だと思った方がよいでしょ
うが、よほどガサツな振る舞いをしなければ
問題ありません。
 面接は、学校側が生年月日を見落として
(あるいは気にせずに)過年度卒業生と気付
かない場合もありえます。その場合は受験雑
誌などに載っているような一般的に質問が出
ます。過年度卒業生と分かっている場合でも
一通り聞かれるかもしれませんから、確認し
ておきましょう。
 過年度卒業生だと分かっている場合は、さ
らに

(1)なぜ学年を下げてまで我が校に入りた
   いのか
(2)小学6年生の時はどこか受験したのか
(3)現在在籍している中学・高校での出席
   状況、生活態度、成績など
(4)年下の子が同級生になるし、先輩も同
   じ年か年下だけど、いいのか

などの質問が予想されます。
 面接の際はすでに試験の点数が出ているこ
とが場合が多いので、小学6年当時や受験を
思い立つ前までの成績がどの程度だったのか
を説明すれば、(1)(2)の説明になりま
す。
 (3)は、小学校の範囲ながら基礎と高い
レベルの応用が身についたために、中学・高
校での成績もそこそこ上がっているはずです。
ここで「じゃあ今の中学や高校で頑張ればい
いじゃないの」などと思われてはいけません。
「小学校の勉強からやり直してなんとか今の
成績になりました。4月からは中学1年の勉
強をやらないといけないのですが、今までの
ように上の学年に通いながら塾や独学で中学
1年の勉強を続けるのはとても大変です。と
ても今の学年の勉強に追いつけそうにありま
せん。今のまま進級していったら、途中で卒
業してしまうことになります」と、中学1年
として入学した方がいいと主張しましょう。
 (4)は、塾などに通っていれば実感を込
めて話すことができるでしょう。「塾で小学
6年生のみんなと一緒に勉強し始めた時は恥
ずかしくみじめに思えたけど、自分より成績
がいい人がたくさんいるし、話してみるとみ
んなとてもしっかりしていて、自分の方がず
っと子供っぽくて恥ずかしくなりました。み
んなと一緒に中学校生活を送って、自分もあ
んな風になりたいと思います」とでも言えば
よいでしょう。塾に行かなかった場合はそう
いう実感はないでしょうが、「ある機会にこ
の学校の人とお会いしたのですが、とてもし
っかりしていて、自分がとても幼く思えまし
た」くらいでしょうか。とにかく他の人と同
様に来春中学1年としてクラスに溶け込めて、
先輩との関係もうまくいきそうだ、と思って
もらえるようにしましょう。

 面接といえば、大人でもいるんですが、相
手の質問をきちんと聞かない人がいます。単
なるどもりならまだしも、台詞を丸暗記して
きて読み上げるようにしゃべり続ける人がい
ます。まあ中学受験する人にそんな人はいな
いとは思いますが。

第七節 合格発表−入学手続き

 合格した場合、親も承知している場合は学
校の指示通りに手続きをすればよいのですが、
承知してない場合は急いで説得する必要があ
ります。試験当日の夕方発表して翌日の夕方
までに手続き締切、あるいは試験翌日の朝発
表で夕方締切、などという学校も多くありま
す。時間には余裕があっても手続きが複雑な
場合もあります。

 不合格だった場合は、別の学校や2回目試
験の準備に取りかかってください。

第八節 入学手続き後

 現在の在学校の退学・転校等の手続きを行
う必要があります。中学の場合は義務教育で
すから、市町村教育委員会に在籍校を知らせ
る必要があります。当然今の学校の担任や学
年主任、校長などに知られることになります
が、4月になったら出ていく学校ですから、
結局無駄になった中学生活でお世話になった
ことのお礼とお別れの挨拶をするのだと思っ
て手続きをしましょう。もちろん3月で中学
・高校を卒業する人には関係ありません。
 ここまでくれば、後はスケジュール通りに
手続きをし、入学説明会などに出席し、入学
式を待てばいいのです。

 私立中学への入学を決め、3月で今の中学
・高校を辞めることになりました。3月31
日までは、中学入学を控えた小学6年生と同
じ立場なのですが、籍は中学・高校にありま
す。
 つまり、あと1ヵ月ちょっとの間は、上級
生と同じクラスで勉強するという貴重な体験
が出来るのです。もし高校で生徒募集をする
中学に進むのであれば、もしかしたら成績上
位のあの人が入学してきて、同じ学校の先輩
になるかもしれない、そんな人達とあと1ヵ
月間は同級生として同じ教室で一緒に過ごせ
るのです。小学6年と同じ身分の自分を今ま
で同級生として扱ってくれた上級生のみなさ
んに心の中で感謝しつつ、残り1ヵ月間上級
生との生活を楽しみましょう。

 4月になったら憧れの中学の1年生です。
名実ともに中学1年なのです。生まれた年が
周りより少し早いことを除いて、学力を始め
全てが同級生と同じです。今までは違う学年
だったけど、4月からは同じ学年になるので
す。
 小学校の時に下級生だった人が同級生にい
るかもしれませんが、きちんと事情を説明し、
小学校の時に上級生として振る舞っていた事
を謝り、小学校の時から同級生だったように
付き合ってくれるようにお願いしましょう。
 上級生の中にも小学校の時に同級生や下級
生だった人がいるかもしれませんが、こちら
にもきちんと説明して、小学生の時から下級
生だったように可愛がってくれるようにお願
いしましょう。
 そして、せっかく学年を下げてまで私立中
学の新1年になったんですから、これからも
真面目に勉強しましょう。

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