「誘拐」11i1/千葉県八千代市内のある駅前

「おはよう、今朝のテレビ見た?」
「見たよー、沢田先生が出てたねー」
「なんだったっけ?うちの小学校に誘拐犯が来て、 沢田先生が誘拐された女の子を助け出したんだったっけ?」
「ちょっと違うような気もするけど、そんなところ」
「沢田先生すごーい。誘拐されたのってうちの小学校の子なの?」
「それは違う、だって今小学校には誰も行ってないもん、夏休みだから」
「そうか」
「横浜で誘拐された、24歳の男子大学生なんだって」
「へー。沢田先生って23歳だったよね?」
「そうなの?じゃあ年上の男の人を救出したんだ。すごーい」
「すごーい。で横浜で誘拐されて、こんな所まで連れてこられたの?横浜って遠いんでしょ?」
「うーん、でも電車で2時間くらいかなー」
「そういえば絵美ちゃんって時々一人で横浜まで行くって言ってたね。近いのかな?」
「そんな遠くないよ」
「私、千葉くらいしか一人で行ったことないから。すごーい」
「そうかなー」
「絵美ちゃんが一人で行けるところなんだー。誘拐された女の子ってパトカーで帰ってたよね。 きっと小さくて迷子になったんだね」
「そうかも。でもあの女の子、24歳の男子大学生だったような」
「でもうちの従兄、24歳だけど警察官だよ。 女の子じゃないよ。テレビで見たのって、私達くらいの女の子だったよね」
「うん、でもあれは恐い誘拐犯に無理やり服を着せられたって言ってたから」
「恐い誘拐犯に裸にされて、男の子なのにあんな服を無理やり着せられたの?こわーい」
「こわーい」
「でもうちの従兄にあんな服着せても、女の子にならないと思うけど」
「うーん、じゃあきっと、24歳の男子大学生の女子小学生なんだ」
「大学生で小学生ってよくわかんないけど、きっとそうだね」
「大学生なのに小学校通ってるのかな」
「小学生なのに大学通ってるのかも。すごーい」
「大学通ってても誘拐されて迷子になっちゃうんだ。やっぱり小学生なんだね」
「じゃあ迷子にならずに横浜に行ける絵美ちゃんてすごいんだ。」
「そんな事ないよー」
「絵美ちゃんも大学行けるねー。絵美ちゃん、大学生の小学生だー。 誘拐されて迷子になっちゃった子は、普通の小学生になっちゃうのかな?」
「どうかな?」
「絵美ちゃん、また横浜行くんでしょ?」
「うん」
「会えるかもね」
「かも」
「もしかしたら、普通の小学生になったら、うちの小学校に来るかも。」
「うーん、横浜から毎日通うのはきついかも…」


[11i2へ]
[11目次に戻る]